22 / 40
勇者
しおりを挟む四人は一階層の敵には苦戦も見せずに勝利した。
最初の兎は工藤伸の剣術でいとも簡単に倒された。雅花蓮の魔法も威力は申し分なく一階層の相手ならば一撃で燃やし尽くしてしまう。
神道翔と水島姫乃の力は分からないが、一階層では工藤伸と雅花蓮の独力で倒してしまうので必要ないだろう。
「さて、これで君たちにもステータスが見えるようになったはずだ」
「これがステータス……」
四人とも目の前に現れた情報を戸惑いながら見ていた。
「説明するね。レベルはモンスターを倒す事で上昇し、数字が大きくなればなるほど身体能力を向上させる。スキルは君たちが現在使用できる特殊能力だとでも思ってくれればいい。横に書かれた数字は熟練度、そのスキルのレベルといったところだね。そのステータスについてはまだまだ謎が多いからこれ以上の情報は自分で確かめてみるのが一番確信を持てると思う」
さて、次の得物は流石にきついかもしれないな。
ダンジョンにはユニークモンスターと呼ばれる個体が存在する。
その階層に出現するモンスターの強化種でスピードパワー共に格段に上がっている個体。大きさも1.5倍くらいある。
もはや兎ってか狼みたいな大きさだ。ちなみに『あいつ』はそれも含めて瞬殺してしまうので違いに気が付かなかったとか言ってた。
「これは、何かヤバいのが来る……」
最も早くその脅威に気が付いたのは意外な事に神道翔だった。これが直感の能力なのだろうか。
魔力感知を持っている雅の感知領域よりも神道翔の直感の感知領域の方が大きいのは確かだな。
目の前に今までの兎とは比べ物にならないサイズの兎が現れた。圧力も段違いだ。これで気が付かなかったとかやっぱあいつアホだ。
「これは流石に君たちには手に余るだろう。僕が相手をするよ」
「いえ、俺にやらせて下さい」
そう言って神道翔は僕の前に出る。まあいいか、ユニークと言っても一階層モンスターじゃ即死は殆どありえない、即死さえしなければハイヒールで回復できる。
「分かった。けど危険になったらすぐに手を出すから」
「はい。ありがとうございます」
彼は抜剣する。しかし他の三人は静観していた。
「君たちは彼に加勢しなくていいのかい?」
「はい。翔君は負けませんから」
強いという意味ならば、身体能力や戦闘技術的に見ても工藤伸の圧勝だろう。雅花蓮と違い神道翔には魔法の才能もない。
ならば何故三人とも勝利を確信した目をしているのか。
「二人も同じ意見かい?」
「俺はあいつが負けるとこを見た事がない」
「そうね、私もあいつが負けるとこはなんでか想像できないわ。私の魔法だってギャグパートしか当たんないんだから」
「ギャグパート?」
「気にしないで、ただあいつが勝つのは絶対なのよ。それはどんな因果も関与しないあいつだけで完結した勝利。どんな怪物でもどんな魔法でもあいつから勝利をもぎ取る事ができない。何故ならあいつを相手にした瞬間にそいつは勝利という選択肢を失うから」
彼らの言っている事は正直意味が分からない。
ただ、巨大兎が神道翔の間合いに入った瞬間魔力感知が在り得ない程の魔力を感知した。
それは神道翔が抜き放った剣に収束していく。高いレベルの魔力感知があって初めて分かる。これは魔力で構成されてはいるが普通の魔力ではない。
魔法とは魔力に属性を持たせる事で物理的干渉力を与え、実際の現象とし出現させる技術である。
しかし、彼の魔力にはどの属性も当てはまらない。属性魔法とは何かが違う。名づけるなら黄金に輝く魔力。
それが剣を纏い刀身が黄金に光り輝く。流れる様に彼はその剣を上段から振るう。生命感知と魔力感知を全力で発動し一挙手一投足を解析する。
刀身が兎に触れた瞬間、兎は光の粒子へ変わっていった。切り裂いたわけではない、ただ触れただけ。兎は存在を否定されたかのように消え去った。
「ダンジョンに潜っていればこの力が何なのかも解る時が来るでしょうか?」
剣を鞘に仕舞いながら神道翔は僕に問いかける。ただ、僕に恐怖はない。恐怖とは未知から来る。つまり彼の能力を既に一度見ている僕からすれば恐れる要素ではない。
魔力で構成された生物を強制的に魔素へと分解する能力。それは寧さんの理を読み解く魔法と同じ力だ。
つまり彼の能力は魔法であり、寧さんと同じ属性を持った一撃という事だ。
「ああ、きっとその能力についてももっと解ると思う」
「そうですか。皆、僕と一緒に冒険してくれないか?」
神道翔は他の三人に頭を下げた。僕には何をしているのか分からないが、彼らには彼らの事情があるのだろう。
「あたりまえじゃねえか」
「私は最初からそのつもりですよ!」
「どうしてもって言うなら手伝ってあげるわ」
彼らのダンジョン攻略はめちゃくちゃいい感じに終わった。
ダンジョンから出ると四人にお礼を言われた。悪い気はしなかったが同い年に言われるのは何かこそばゆかった。
結局その日は彼ら以外が来る事はなく終了した。
一日平均6.7人が僕のところへやってくる。その殆どがユニークスキル保持者だ。
僕の方もルーチン化してきたので、作業のようにダンジョンについての情報を説明していく。
最初の神道翔ほど派手な能力はなかったが、どれも強力な能力ばかりだった。
二週間がたった頃、なんと神道翔率いるチームが9階層を攻略したという情報が入ってきた。
まあ、寧さんと同じ力だ。酒吞童子クラスならば一撃で消滅させられるだろう。驚く程の事じゃない。
変化があったとすれば『あいつ』の方だ。
うかうかしてられないか?
フン、俺たちはアメリカでダンジョン攻略するから勝負はできねえがコロセウムは20階層だろうが30階層だろうが俺が攻略してやるよ!
0
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!!
2巻2月9日電子版解禁です!!
紙は9日に配送開始、12日発売!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる