僕と彼女のレンタル家族

suzudeer

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第20話 「はじまり 4」

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「わかったよ! そんなにお望みなら、全部消せばいいんだろ? 」

 冷静な判断ができず、在過とうかは携帯を持って神鳴の隣に移動する。泣いている神鳴かんなに携帯画面を見えるように共有し、通話アプリを起動して友達一覧を表示させる。

「今の職場の人と、同人活動しているノウたりん。妹のアカウントは消せない。それが納得できるなら、望み通り全部消してあげる。あと、消してあげるんだから、僕の望みも聞いてくれるよね?」

「わかった……消してほしい」

 在過は少し期待していた。強気に、アカウントを消してやると言えば、そこまでしなくてもいい。そう言ってくれるのではないかと。

「……そう」

 心臓の痛みを感じながらも、神鳴の為だと言い聞かせ、友達一覧から一人ずつ削除していく。お世話になった人や、学友たちの履歴が消えていく。在過は、自分で消しているとはいえ悲しいわけじゃない。

 しかし、神鳴と家族になりたい。たったそれだけの気持ちが、在過の背中を押す。

「はい。これで満足?」

「えへへ。うん! 在君ありがとう。神鳴ね、在君すき!」
「うん。そしたら、今度は神鳴も消してくれるよね?」

「え?」
「神鳴の望み通り、交友関係のアカウントを消した。なら、神鳴もやり取りしてる交友関係消せるよね?」

「なんで神鳴が消さないといけないの!」
「……はぁ?」

「神鳴、そんなに連絡してないもん。一緒にゲームやる時くらいだもん」

「お前さぁ、ふざけんなよ? 俺も言ったよな? 頻繁に連絡してる人じゃないって。それもで、消せって言うから消したんだぞ? 当然、お前も消せるよな? 人に消させておいて、自分が消せないって、ふざけんなよ」

「なんで!? 神鳴関係ないじゃん! それに、神鳴の友達はずっと付き合いが長い友達だから、消せるわけないじゃん!」

 自分勝手な意見を通す神鳴に、怒りではなく憎悪の感情が溢れ出す。神鳴を見ている在過の表情は、今まで以上に怖い顔をしており、その気迫に神鳴はたじろぐ。

「俺だって、消した人達は長い付き合いなんだよ! 自分勝手すぎるだろ!」
「そんなに嫌なら、元に戻せばいいじゃん! どうせ、神鳴より、その人達の方が大切なんでしょ!」

「……っざけんなよ」

 怒りを抑えるため、在過は握りこぶしをつくり耐える。この怒りを発散するために暴れたい、どこかにぶつけたい衝動に駆られる。

 そんな姿を見ている神鳴は、目の前の在過が怖かった。なんでそんなに怒っているのか? 今までに見たことない憎しみの表情と、深呼吸している姿が恐ろしく怖い。

「なら、元に戻してくれ」

 携帯を神鳴の目の前に投げ落とす。携帯を拾い、神鳴はじっとディスプレイを眺めて、再度在過を見つめる。

「どうやって戻すの」

「俺が知るわけないだろ? お前が消せっていたんだ。神鳴が自分の交友関係消せないって言うなら、早く元に戻してくれ」

「神鳴だって知ってるわけないじゃん! また、その友達にアカウントID聞けばいいじゃん」
「どうやって聞くんだよ? たったいま連絡先全部消したんだぞ?」

「会いに行けばいいじゃん」

「なら、会いに行ってID聞いてきてくれよ。愛知県のどっかにいるだろうから、今すぐ言って聞いてきてくれ」

「そんなの無理に決まってんじゃん。それに、神鳴が消したわけじゃないもん! 在君が自分で消したんじゃん。神鳴は悪くないもん! 在君が女の子と仲良くしてるのが悪いんだ!」

 そう、消した交友関係が二度と元に戻らないことは認識していた。しかし、在過は神鳴の発言に怒りが抑えられなく、無理難題を要求する。心の中で後悔してしまう。消す必要なかったではないか、何のために友人や恩人を消してしまったのだろうかと。

「お前が消せって言ったんだろ! 消した人の中に、返しきれないほどの恩人もいたんだ。元に戻せないなら、神鳴だって同じように消せよ」

 肩呼吸する神鳴は、目の前に立っている在過を睨み上げる。自分は悪くないのに、なんで在過は責めてくるのか? 酷い、他の彼氏は絶対にそんなことしないのに。そんな思いが、神鳴を行動させる。自分の携帯を手に持ち、一本の電話を掛けた。

「ママに言うから!」
「……」

 ベット上に座り込んで泣き声の状態で、神鳴は電話をしている。在過は、さらに心臓の痛みを増していく。全身が苦しいと悲鳴を上げ、二度と戻らない交友関係達の悲しさも溢れ出す。そして、また母親なのか? と言う不快感がより怒りの感情が膨れ上がる。

 だが、今回は誰が聞いても自分に非はないはずだ、もし母親が介入してきたとしても理解してもらえるはずだ。電話を掛けている神鳴を見ながら、在過はそう考えていた。

「うぅえぇえん! ママっ助けて! 怖いよぉぉ、助けてぇ」
「……」

 大泣きしながら、電話相手の母親である雷華らいかに助けを求めた。神鳴が言った言葉に、在過は怒りではなく、血の気が引く感覚に襲われる。通話はスピーカー音に切り替わっており、あえて在過に聞かせるように音量も大きくなっている。

「神鳴! どうしたの? 大丈夫なの!? すぐに行くから」

 雷華の焦った声が在過を不安にさせる。まただ、また来てしまう。呼吸の苦しさと、胸の痛みが増していく。だが、それでも目の前にいる神鳴のことは好きであった。

 家族構成の話をしても側に居てくれる存在で、一緒にゲームをしたり映画を観て過ごす幸福感を得てしまっている。正直なところ、在過は自分が悪いとは思っていなかったが、このままでは、また一人になってしまうのではないか? と言う孤独感と言う鎖が在過に迫っていた。

 考え、考えて、考え続けて結論を出す。この場を解決する最善は――なんだと。
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