光秀の甘やかな策略〜堕ちたのは戦国武将の腕の中

今雪みく

文字の大きさ
38 / 40

ください

しおりを挟む

 手を引かれ褥のある隣の部屋へ入ると、光秀が静かに障子を閉めた。

 腰に回された手にそっと引き寄せられ、美琴は光秀の胸に顔を埋める。
 このままずっと抱きしめられていたいような、もっと熱っぽく求められたいような——。

 光秀の香りを一杯に吸い込んで息を吐くと、意地悪な声に唆された。

「どうして欲しいか、お前の唇で紡いでみろ」
 
 ちょん、と長い指で、唇をつつかれる。

「口付け、して、ください」

 恥じらいながら告げると、口元を緩めた光秀の顔が近づいて、唇が触れ合った。と思うとすぐに離れてしまう。

「これでいいか?」

 揶揄いを含んだ目に、瞳を覗き込まれる。
 頭を振って、美琴は甘えた。

「だめです! もっと……もっといっぱい、して」

 いつになく素直に紡いだ言葉が、美琴自身をも煽る。

 苛立ったように眉を顰めた光秀に、美琴の唇はすぐに塞がれた。

 触れるだけで足りるなど、あるはずもない。
 光秀にも、そう思っていて欲しい。

 重ね合わせた唇の隙間からすぐに差し込まれた舌に、口の中を舐られる。美琴も舌を伸ばし、光秀のそれと必死で絡ませた。

 ずっ、と音を立てて吸われると、美琴の喉からあられもない声が漏れ出る。追い打ちをかけるように口蓋をなぞられて、漏れ出た甘い声は、光秀の耳に届いたに違いない。

 自力で立っていられなくなりそうで、美琴は光秀の首に腕を縋り付かせた。

「ん、んんっ、んあっ」

 ガクンと膝から力が抜け、美琴はその場にくずおれる。
 へたり込んだ美琴は光秀の長い指に顎を掬われ、上向かされた。熱情の籠る眼差しに、射抜かれる。

 情欲を隠しもしない光秀の双眸に捉えられ、肉食獣の獲物になったような心地がした。
 刹那、貪るように口付けられる。

 座っていてもなお力は入らず、まさしく意のままにされている。口の中にこれほど快楽を享受できる場所があることを、美琴は初めて知った。

 たっぷり舐られて光秀の唇が離れていく頃にはくたりと力が抜け、気づけば褥に身体を投げ出していた。

「まだ口付けしかしていないが……」

 荒い息を吐く美琴は、涙の溜まった瞳でじっと光秀を見つめる。

「……光秀さま、すき……」

 美琴にできるのは、素直に気持ちを紡ぐことくらであった。

 けれどその真っ直ぐな思いが、光秀の心の中にぬるりと入り込んで、抉るように愛を伝える。

「っ……」

 また眉を顰めた光秀の頰に、美琴は手を伸ばし僅かに微笑む。

「お前になら、籠絡されるのも悪くない、か」

 伸ばした手に光秀の手が添えられ、人差し指にざらりと舌が這わされる。その煽情的な刺激に、ぞくりと背中が粟立ち小さく息を詰めた。

 触れられてもいないのに、身体が熱い。

「お前は唇も、指先ですら甘い。これほど甘くては悪酔いしてしまいそうだ」

 首筋を辿った光秀の指が、美琴の着物の上をそろりと撫でていく。下腹部辺りまで下りていった指先の動きが、そこでピタリと止まった。

 光秀の眼差しに射抜かれたまま、美琴は動くことができない。

「帯が邪魔だな」

 言うなり解いた帯が抜き取られ、着物の合わせが開かれる。晒された肌が粟立つのは、空気の冷たさのせいなの
か、視線の艶かしさのせいなのか。

 ゾクゾクと昇り来る快楽の前触れに、吐息が熱くなる。

 それからはもう、どこをどうされたのかわからない程に甘やかされ、蕩けさせられ、打ち込まれる重みを必死に受け止めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...