プールサイド

なお

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幼馴染とクラスメイト

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昔から、大人っぽいクールな男子が好きだった。

何考えてるかわからないのがよかったし、ちょっとワガママで、強引でいたずら好きで、やけに人懐っこくて、わかりやすい奴はタイプではなかった。

昔から、落ち着いた人が好きだった。

……だから、こんなガサツな奴は、全くタイプではない。




「なおー!ちょっと小銭貸して!」

教室のドアから覗く男。
川内光輝。3年生。幼馴染に近い存在。
ここは1年生の教室なのに、3年生である彼はなぜか空気に馴染んでいる。

「……もう、またぁ?」
「いつもちゃんと返してるだろ~?」

ヘラヘラヘラヘラしながら、いつも私の後をついてくる。
お金パクるような真似はしないけど、これで何度目?
渋々、廊下に出て、コインケースからいくらか出してコウキの手の平に小銭を渡すと、彼はニヤッと笑ってみせた。

「今日一緒に帰らね?」
「えっヤダ。せっかく部活ないのに」
「チッ。待ち伏せしてやる」

待って。ホントにやりそう。

「放課後迎えにくるからな」
「…わかったよ!」

私いつも、コウキの言うこと聞いてるような…。
振り回されてる私の身にもなってみてほしい。

私は波多野奈緒。高校1年生。
コウキと初めて会ったのは10年前、近所にあったスイミングスクール。

最初の印象は、最っ悪だった。
あまり厳しくない小さなクラブだったけど、それでも一応選手コースなるものがあり、それはコーチの推薦を受けた者のみが入る。
四泳法を習得し終えてタイム級に在籍していた私は、小学2年生になった春からそのコースでお世話になることになり、初日はドキドキしながらプールサイドに集まった。

すると、突然ビート板が飛んできて、膝裏に当たる。

「!?」

な、何?
誰?

くるっと振り返ると同じ頃合いで、コーチが怒鳴った。

「コウキ!投げるな!」
「ねえコーチぃ、この子誰?」

大きな声で怒られてるのに一切気にせずに、私を指差してコーチに尋ねるコウキ。
コーチもカチンときてるのか、「なおだよ」とは言ったけど、ばたばた慌ただしい様子でメンバーたちにメニューを見せて伝え始める。
が、専門用語だしアルファベットは読めないしで、私は全然わからずつっ立ったまま。
そんな私にコウキは遠慮なく顔を近づけてきた。

「なお?何年?」
「2年生…」

びくびくしながら答えた。
なんか怖い。顔が悪そう。悪ガキの顔してる。
ビート板投げるし、嫌だなあ…。

「オレ4ねーん!」
「…………」

なんと答えれば正解なのか、迷ってるうちにコーチがやってきた。

「えーと。じゃ、なおとコウキは早速板キック◯本ね~。時間見てちゃんとインターバル確認してね」

このコースのなかでは、あんまり泳げない組である私とコウキは、端のレーンで二人きりで泳ぐこととなった。

ふざける子は苦手だし、男の子も苦手。
とにかく早く速くなって奴から逃れようと思っていた。


あのビート板を投げつけられた日から10年。
逃れられずに、高校まで一緒になってしまった。

細かく言えば、中学生でクラブは卒業だったので、2歳離れたコウキとは2年間会っていなかった。
コウキは中受して名門私立中学へ。私は地元の公立中学へ進学した。

もう会うこともないと思ってたのに、高校に入り、通学中の電車で再会した時は悲鳴をあげた。
コウキは高校を受け直し、水泳部に在籍していたのだ。

もっとも、長年のクラブ生活で、根は悪い奴ではないと知ったし、コウキにもいろいろあるのも聞いていた。
奴のことは嫌いではないけど、纏わり付かれるのがウザい時もあった。

それは……。


「波多野の彼氏、メッチャ教室来るよね」

隣の席の野原君。
ちょっと冷たい雰囲気で、落ち着いてて、でも優しいところもあって、塩顔で、メガネで細身。とにかく、好きなタイプだった。

「彼氏じゃないし…」
「ふはは。知ってる」

笑わないでー。かわいい、かわいい!

私がいくら彼氏ではないと否定すれども、毎回コウキを彼氏扱いする野原君。
半分ネタとして言ってるのはわかってるけど複雑だった。

「私、ほんとは野原君が好き」って言ったらどうなるんだろ……って思ってた。
でも、本人に告う勇気はなかった。
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