プールサイド

なお

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幼馴染とクラスメイト

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「おっせぇ~。おまえ、ほんといつも待たすよなぁ」
「………」

放課後上履きを脱ぎ、下駄箱を開けてたらコウキが近寄ってきた。
いちいち文句言うんだよなー。

「コウキ、塾はないの?」
「あるけど今日はいいや」
「えーっ。お母さんに怒られない??」

コウキのお母さんはスパルタママで有名だった。
小学校の時は習い事もたくさんしてたし、練習が始まる前によく宿題してた。
コウキの性格もあると思うけど、よく叱られていた。

ここ、S高は、わりと水泳部が強い公立高校で、スイマーならみんな知ってる。
コウキは、一流大学を受かるために塾通いすることをお母さんと約束して、私立中学をやめ、S高を受けた。

「ほんとに塾行かなくていいの?」
「なおも来る?」
「行かないよ」
「ん~~~、ま、一日ぐらい……休んでも」

一人っ子のコウキは、ずっとお母さんに従って生きてきた。
タイムだって、ベストが出なければ認めてもらえない。100点取って当たり前。
お母さんがコウキを思うが故のことかもしれない。
でもそういうところは、子供心に、少しかわいそうかなと思っていた。
コウキは、できる限り期待に応えようとしていたから。


コウキと電車に乗り、隣どうしで座る。
立ってる人はいないけど、座る場所は埋め尽くされている。

しばらくふつうに乗っていたら、コウキが膝をごんごん当ててくる。
ジロッとにらんだら、へらっと笑ってる。
……昔と変わってなさすぎる。

「ついたらなんか食おー」

ガンガン当ててきてた足を前に投げ出したり、組んだり。
車内は空いてるからいいけど、昔っからこんな感じで落ち着きがないから、膝をぺちぺち叩いてやめてもらう。
それでもへらへら笑ってる。

「なんかってなに食べるの?」
「ん~~……」

コウキの返事を待ってるうちに、次の駅に着いた。私たちの地元まではあと3駅ぐらい。
杖をついたおばあさんが乗ってきたのが見えて立ち上がろうとしたら、コウキがすでに立っていた。

「ごめんなさいねぇ、ありがとう」

おばあさんは申し訳なさそうにお礼を言ってくれて、いいえと返事した。

コウキは、私とおばあさんが話しているのを見たり、窓の外を見たり。
駅に着き、おばあさんに一礼して電車を降りた。

昔なら、「オレいいことしてやった!」みたいなことを言いそうなもんなのに、すました顔で先を歩いている。
ちょっと大人になってるじゃん。
私は、少しだけ嬉しくなって、コウキが歩くそばまで駆け寄った。

「ねえコウキ、私ドーナツたべたい」
「うえ~。甘めーな~」
「うそ!あんた甘いの好きだったじゃん」
「最近はあんまり。メシ気分だしー。腹減って仕方ねえの」

私はそんなお腹すいてないし、ここでメシを食うとなると定食屋さんになる。
もしくは、ちょっと歩いてファミレス。

譲歩案を考えてたら、
「ま、なおが食いたいならドーナツでもいーけど」とコウキが言った。


◆◆◆


「ポンデリングと、フレンチクルーラーと…」

スタンダードなものが好きな私と、チョコに偏るコウキ。

「コウキの、私が頼んだやつのチョコ版だね」
「えっ。なんかスゴくね?メッチャ気ー合ってね?」

スゴいといえばスゴいかな…?

「気ー合ってたら、チョコなしなんじゃない?それにチョコかかってるほうが甘そう」
「どっちも甘いわ」

笑いながら二階席に上がる。いつのまにかトレイはコウキが持っていた。
窓に向かったカウンター席の左端に、コウキが座る。その隣に私。カバンは下に。
窓はロールスクリーンが半分かかってて、下の通りを歩く人の頭を見ながら、ドーナツを食べ始めた。

「塾、ほんとにいいの?」
「いいんだよ。狙ってる大学合格圏内だしー。余裕余裕」

あ。いつものコウキ。
これで敵を作る。

「なんかウザいけど、すごいね…」
「ちっせー頃からあんだけ詰め込まれたら、そりゃな。ババア、クッソうるせーから」
「ババアってやめなよ~。私、自分の子供に言われたらいやだ」
「…………ふ。なおもババアだろ」
「はい帰る」

下に置いてたカバンを持とうとすると、コウキはすぐに機嫌をとってくる。

「あっ、嘘です。ごめん。許して。帰んないで」
「次言ったら帰る」
「了解。絶対言わない~」

また調子よくわらってる。
しょーがないやつだ。

いたずらして気を引いて、それを繰り返す。
私は、コウキがそれでなにかを満たそうとしているように思えていた。
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