プールサイド

なお

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でも、ここじゃキスは無理だよね。コウキもしきりに向こうを気にしてるし。
こんなとこでやっちゃったら、周り見えてない奴だよ。
がまんがまん。

「なんで黙ってんの?」
「えっ?コウキこそ……」
「なんか喋れよー」
「コウキ喋ってよ」

するとコウキは向こうの教室のほうを見て言った。

「土曜……うち誰もいないんだ」


き、きた。


「オレんち、来る?」



誰もいない家で……勉強だけで終わる?
水着姿は晒してても、脱ぐのはまだ心の準備が。

「……なにもしない?」
「しねぇかな~。するかな~。つか、なおはどっちがいいの」

自分の膝に肘を乗せて、頬杖みたいにして座ってるコウキ。
え~っと……

「……キスだけでお願いします…」
「え~?」

あからさまに不満な返事……

「だって、コウキとそんなことする自分が想像つかない」
「昨日あんなにしたのに?」
「キスは嫌じゃなかったけど…」
「オレ我慢できる気がしない」

返事がいかにもコウキっぽくて笑った。
エッチする気で家に呼んだり、それを隠してないあたりも、コウキらしいけど、次の発言も彼らしいものだった。

「でもオレ、なおが乳ないの知ってるし、あれだけ水着見てんのに、別に脱いでもよくね?」
「はっ???最低!!あんた、普段どこ見ながら泳いでんの?!」

胸ないのは当たりだけど、失礼なやつ!!

「違うって~、なお~」
「土曜日、絶対行かない」

セクハラ男をどーんと突き飛ばし、その場に置き去りにして教室に戻った。

デリカシー、どうなってんのあいつ。
つきあいだしても根本は変わらないみたい。
バカだなー。ほんとに…
そりゃ他の子たちも、あんな彼氏は嫌だよね。きっと今までフラれまくったに違いない。

そんなやつとつきあいはじめた私も、モテる部類ではないけど。
コウキのこと、ウザいと思いながら、こんな関係になる予感もなくはなかった。キスした時、感動したし…

胸なくて悪かったなあ。


ぷんぷん怒りながら1時間目の授業の準備をしていたら、野原君が声をかけてきた。

「準備、荒いね笑」
「あっ笑 ごめんね、うるさくして」

にこ、と笑い、軽く首を振っている。スマートだなあ。

「藍瑠、2時間目から来るみたいだよ」
「そうなんだ。休みかと思った」

含み笑いしてたら、「バラさないでよ?」って、野原君に軽く叩かれる。

仲良くなれたみたいで、ふつうに嬉しい。
藍瑠が学校来たら話聞いてもらわなきゃ。

あのコウキと、おつきあい始めましたって。
野原君とはふつうにお友達になりましたって。

コウキとの件は、昨日メールで言おうと思ったけど、どう言ったらいいのか迷いに迷って、送らなかった。
初キスでぼーっとしてたし……

コウキが、吐息混じりで唇をソフトに擦り付けてきて、キュンってなった。
ちょっと音が鳴って、二人でふっと笑い合ったりして。

思い出したらキスしたくなっちゃった。
キスだけでこれなら、エッチはどんな状態になるの?

今日は私も部活だし、コウキは塾。会う時間はない……


携帯見たら、「さっきはすいませんでした」と、律儀にコウキから詫びが入っていた。

「いいよ。キスしてくれたら」って送信。

そっこー
「する。したい。放課後しよう」
って返ってきた。

それを見てクスっと笑う。
まだつきあって2日目なのに、はやくもバカップルロードまっしぐら。
藍瑠につきあったことは言えても、こんなやりとりしてることは言えないな。


●◎●◎●


2時間目、藍瑠が来た。

「……おはよ」
「おはよう、どうしたの?具合悪かっ……え?」

目が腫れてる。

「なんかあった?」
「………あった。前田先輩とケンカしたの」

藍瑠の目には涙がたまっている。
2年生の前田先輩が藍瑠の彼氏だ。

「ケンカ……」
「今日は部活出ないで帰る。会いたくない…」

藍瑠がこんなに泣くなんて。
なにがあったんだろう……


昼休み、裏庭に出て話を聞いた。
コウキの話なんてどこかに飛んでいた。藍瑠が、少しずつ話し始める。

「前田先輩にね。彩夏先輩と私、二股かけられてたの」

彩夏先輩…。よくコウキとも話してる水泳部の2年生だ。

「二股?」
「うん……怪しいなと思ったことはあったんだけど、昨日白状されて……。彩夏先輩も彼氏いたから、前田先輩とはセフレみたいな感じだったらしくて……」

大人の世界すぎてわからないが、藍瑠が悲しいのが嫌だ。

「彩夏先輩、彼氏いたんだね」
「えっ、知らなかった?コウキ先輩の元カノだよ?」

え?

待って。

彩夏先輩……今日も朝のストレッチでコウキと仲良くしてたよね?

つきあってたんだ……。

頭が、真っ白。
浮き足立った気持ちは深く沈んでいった。
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