この手に“力”を、心に責任を――王都冒険譚

しらすの灯

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第三十一話 それぞれの想い

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「セレナ!」

アリアナが騎士団を連れて駆けつけてきた。

彼女の顔には安堵と心配が混じっている。

「無事だったのね……良かった……」

アリアナが私に泣きながら抱きついてきた。

「アリアナ……」

私も、彼女を抱きしめ返す。

温かい。

生きている人の、温かさだった。

「もう大丈夫よ。もう、一人で危険なことはさせないから」

アリアナの声が震えている。

きっと、私のことをとても心配してくれていたんだ。

オリヴィアを失って、今度は私まで失うかもしれないと思って、怖かったんだろう。

「ありがとう、アリアナ。あなたがいてくれて良かった」

私たちは、しばらくそうして抱き合っていた。

◆ ◆ ◆

そのとき、サラもタリアンと一緒に到着した。

「セレナ! 怪我はない?」

「はい、大丈夫です」

私は立ち上がって、サラに微笑みかける。

「ハルートを止めることができました」

「本当に……ありがとう」

サラの目に涙が浮かんでいる。

「私の代わりに、彼を止めてくれて……」

「サラさん……」

「本当は、私がハルートを止めたかった。でも、彼のことを想うあまり、向き合う覚悟ができていなかった」

サラが私の手を握る。

「私の代わりに止めてくれて、ありがとう」

その言葉を聞いて、私は少し複雑な気持ちになった。

確かにハルートを止めることはできた。

でも、これからどうなるのだろう。

◆ ◆ ◆

騎士団員たちがハルートの元に向かっていく。

彼は地面に倒れて、意識を失っているようだった。

「気を失っているようですね」

「運びましょう。治療も必要でしょう」

騎士団員たちがハルートを担架に乗せる。

私は、その光景をじっと見つめていた。

ついに、ハルートが捕まった。

長い間王都を恐怖に陥れた連続殺人事件も、これで終わりだ。

でも、なぜか心が晴れない。

ハルートは確かに罪を犯した。

でも、彼は私の大切な仲間でもあった。

そんな複雑な想いが、胸の奥で渦巻いている。

「これで事件は解決ですね」

騎士団員の一人が、安堵の表情を浮かべる。

「ええ。ようやく王都に平和が戻ります」

でも、私にとって平和が戻ったとは思えなかった。

大切な仲間を失って、もう一人の仲間を捕まえることになった。

私たちの日常は、完全に変わってしまったんだ。

◆ ◆ ◆

アリアナは、まだ私の胸元で泣いていた。

オリヴィアを失った悲しみと、私を失うかもしれなかった恐怖で、感情が溢れ出しているようだった。

「アリアナ……」

「セレナを失うかもしれないって思ったら、怖くて怖くて……」

彼女の声が震えている。

「でも、無事で良かった。本当に良かった……」

私は、アリアナの頭を優しく撫でた。

彼女の気持ちが、痛いほど分かる。

大切な人を失うのは、本当に辛いことだから。

「もう大丈夫よ。私はここにいるから」

「うん……うん……」

アリアナが小さく頷く。

きっと、彼女も大きく成長したんだろう。

憧れのオリヴィアを失って、でも私たちを支えてくれて。

そんな彼女を見ていると、私も頑張らなければいけないと思った。

◆ ◆ ◆

サラは、担架で運ばれていくハルートをじっと見つめていた。

「サラさん……」

「複雑ね」

サラが小さくつぶやく。

「嬉しいような、悲しいような……」

「はい……」

私も、同じ気持ちだった。

事件が解決して嬉しい反面、仲間を失った悲しさもある。

「でも、これで良かったのよね」

サラが自分に言い聞かせるように言う。

「これ以上、ハルートが罪を重ねることはない。これで良かったのよ」

「そうですね」

でも、本当にこれで良かったのだろうか。

ハルートを止める他の方法は、なかったのだろうか。

そんな疑問が、頭の中を巡っている。

でも、今更考えても仕方ない。

やってしまったことは、変えられないのだから。

アリアナは、まだ私の胸元で泣いていた。

ようやく事件が解決して、安堵しているようだった。

そのとき――

遠くで、騎士団員の声が聞こえてきた。

「これは……まずい……」

その声には、明らかに動揺が含まれていた。

私たちは顔を見合わせた。

何かが起こったのだろうか。

不穏な空気が、辺りを包み始めていた。

(つづく)
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