33 / 34
第三十五話 冒険者への道
しおりを挟む
サラとの面会の後、私の気持ちは少し整理がついた。
ハルートの過去を知って、彼の行動の理由が理解できた。
それでも、彼がしたことは許されることではないし、私が彼を殺してしまったことも変わらない。
でも、少なくとも前に進まなければならないということは分かった。
ハルートの分まで、正しい道を歩んでいかなければならない。
そんなことを考えていると、牢屋の外で声が聞こえてきた。
「すみません、面会をお願いします」
「申し訳ございませんが、面会時間はもう過ぎております。明日の朝にお越しください」
牢番の人が、誰かを追い返そうとしているようだった。
「そうですか。では、また明日に……」
「えっ、騎士団長!?失礼しました!お通りください」
牢番の人の声が急に変わった。
「なんで騎士団長が?」
小声で呟いているのが聞こえる。
騎士団長?
なぜ、そんな偉い人が私に会いに来るのだろう。
しばらくすると、牢番の人が私のところにやってきた。
「面会の方が来ています」
「どなたですか?」
「騎士団長だそうです」
◆ ◆ ◆
面会室に入ると、見覚えのある人が座っていた。
アランだった。
「あなたが……騎士団長だったんですか?」
私は驚いて声を上げた。
アランは元冒険者だと言っていたのに、まさか騎士団長だったなんて。
「気にするな。アランでいい」
彼はいつものように、落ち着いた表情をしていた。
「でも、どうして嘘を……」
「嘘というわけではない。確かに昔は冒険者だった。それに、騎士団長という立場で君に接すると、色々と面倒なことになるからな」
確かに、もし最初から騎士団長だと知っていたら、私はあんなに自然に話すことはできなかっただろう。
「何のご用でしょうか?」
「今日は世間話をしに来たんだ」
アランが少し微笑む。
「世間話?」
「そう。スキルを手に入れてどうだった? 大変だっただろう」
確かに、大変だった。
スキルを手に入れたことで、私の人生は大きく変わってしまった。
「はい……言葉にできませんが」
「念願のスキルを手に入れて、今は牢屋。力を持つことの怖さが分かったんじゃないか」
アランの言葉が、胸に刺さった。
確かに、私は力を持つことの恐ろしさを思い知らされた。
◆ ◆ ◆
「この後、お前にはオリエンテ要塞に行ってもらうことになるだろう」
「オリエンテ要塞?」
「魔物との戦いの最前線の地だ。あそこはいつでも戦力がほしいからな」
アランが説明してくれる。
「そこには、君がランクDになるまでに戦ってきた魔物と比べ物にならないくらい強い魔物がうようよいる」
私は少し身震いした。
今まで戦ってきた魔物でも、十分に怖かったのに。
「君は、そこで生き延びなければならないのだ」
「そうですか……」
想像するだけで、恐ろしくなってくる。
でも、これが私の罪に対する罰なのだろう。
「そこでだ」
アランが少し前に身を乗り出す。
「一つ、そこに行かなくても済む方法がある」
「え?」
「スキルを捨て、元の街に戻ることだ」
私は驚いた。
スキルを捨てるなんて、そんなことができるのか。
「今回の事件は、あまり公にしたくない事件だ。君がスキルを持っていないことになれば、殺人はなかったことにもできる」
「それは……」
確かに、魅力的な提案だった。
スキルを捨てれば、故郷に帰ることができる。
妹に会うこともできる。
平和な生活を取り戻すこともできるかもしれない。
「そして、君はスキルに頼らなくても強いはずだ」
アランが続ける。
「さあ、どうする?」
◆ ◆ ◆
私は少し考えた。
確かに、スキルは怖い。
また誰かを傷つけてしまうかもしれない。
でも――
「スキルは怖いです」
私は答えた。
「でも、今のままじゃ駄目なんです。もっと強くならなければ」
「そうか」
「もっと強かったら、ハルートも、オリヴィアさんも……だから、スキルは諦めません」
私の決意を聞いて、アランが小さく頷いた。
「そうか。これから君にたくさんの苦難や悲しみが待ち受けているだろう」
「はい」
「目的のために生き残ってくれ。健闘を祈る」
アランが立ち上がる。
「ありがとうございました」
私も立ち上がって、深くお辞儀をした。
アランは、私のことを本当に心配してくれているんだ。
だからこそ、スキルを捨てるという選択肢も提示してくれた。
でも、私には帰る場所がある。
妹が待っている故郷がある。
そして、守りたい人たちがいる。
だから、どんなに辛くても、前に進まなければならない。
◆ ◆ ◆
アランが去った後、私は一人で考えていた。
オリエンテ要塞。
魔物との戦いの最前線。
きっと、とても危険な場所なんだろう。
でも、それが私の選んだ道だ。
強くなるための道だ。
妹を救うための道だ。
そして、ハルートやオリヴィアの分まで生きるための道だ。
怖いけど、逃げるわけにはいかない。
必ず、生き延びてみせる。
必ず、強くなってみせる。
そして、いつか故郷に帰って、妹を救う。
それが、私の目標だ。
私は深く息を吸って、決意を新たにした。
新しい戦いが、始まろうとしていた。
でも、今度は一人じゃない。
ハルートとオリヴィアの想いを背負って、私は歩いていく。
どんなに辛い道でも、必ず最後までやり抜いてみせる。
それが、生き残った私の使命なのだから。
窓の外を見ると、夕日が沈んでいく。
明日からは、新しい人生が始まる。
冒険者として、戦士として、そして一人の人間として。
私は、その準備を始めることにした。
心の準備を、そして覚悟の準備を。
オリエンテ要塞での日々が、どれほど過酷なものになるのか分からない。
でも、きっと乗り越えてみせる。
仲間たちの想いと共に。
(つづく)
ハルートの過去を知って、彼の行動の理由が理解できた。
それでも、彼がしたことは許されることではないし、私が彼を殺してしまったことも変わらない。
でも、少なくとも前に進まなければならないということは分かった。
ハルートの分まで、正しい道を歩んでいかなければならない。
そんなことを考えていると、牢屋の外で声が聞こえてきた。
「すみません、面会をお願いします」
「申し訳ございませんが、面会時間はもう過ぎております。明日の朝にお越しください」
牢番の人が、誰かを追い返そうとしているようだった。
「そうですか。では、また明日に……」
「えっ、騎士団長!?失礼しました!お通りください」
牢番の人の声が急に変わった。
「なんで騎士団長が?」
小声で呟いているのが聞こえる。
騎士団長?
なぜ、そんな偉い人が私に会いに来るのだろう。
しばらくすると、牢番の人が私のところにやってきた。
「面会の方が来ています」
「どなたですか?」
「騎士団長だそうです」
◆ ◆ ◆
面会室に入ると、見覚えのある人が座っていた。
アランだった。
「あなたが……騎士団長だったんですか?」
私は驚いて声を上げた。
アランは元冒険者だと言っていたのに、まさか騎士団長だったなんて。
「気にするな。アランでいい」
彼はいつものように、落ち着いた表情をしていた。
「でも、どうして嘘を……」
「嘘というわけではない。確かに昔は冒険者だった。それに、騎士団長という立場で君に接すると、色々と面倒なことになるからな」
確かに、もし最初から騎士団長だと知っていたら、私はあんなに自然に話すことはできなかっただろう。
「何のご用でしょうか?」
「今日は世間話をしに来たんだ」
アランが少し微笑む。
「世間話?」
「そう。スキルを手に入れてどうだった? 大変だっただろう」
確かに、大変だった。
スキルを手に入れたことで、私の人生は大きく変わってしまった。
「はい……言葉にできませんが」
「念願のスキルを手に入れて、今は牢屋。力を持つことの怖さが分かったんじゃないか」
アランの言葉が、胸に刺さった。
確かに、私は力を持つことの恐ろしさを思い知らされた。
◆ ◆ ◆
「この後、お前にはオリエンテ要塞に行ってもらうことになるだろう」
「オリエンテ要塞?」
「魔物との戦いの最前線の地だ。あそこはいつでも戦力がほしいからな」
アランが説明してくれる。
「そこには、君がランクDになるまでに戦ってきた魔物と比べ物にならないくらい強い魔物がうようよいる」
私は少し身震いした。
今まで戦ってきた魔物でも、十分に怖かったのに。
「君は、そこで生き延びなければならないのだ」
「そうですか……」
想像するだけで、恐ろしくなってくる。
でも、これが私の罪に対する罰なのだろう。
「そこでだ」
アランが少し前に身を乗り出す。
「一つ、そこに行かなくても済む方法がある」
「え?」
「スキルを捨て、元の街に戻ることだ」
私は驚いた。
スキルを捨てるなんて、そんなことができるのか。
「今回の事件は、あまり公にしたくない事件だ。君がスキルを持っていないことになれば、殺人はなかったことにもできる」
「それは……」
確かに、魅力的な提案だった。
スキルを捨てれば、故郷に帰ることができる。
妹に会うこともできる。
平和な生活を取り戻すこともできるかもしれない。
「そして、君はスキルに頼らなくても強いはずだ」
アランが続ける。
「さあ、どうする?」
◆ ◆ ◆
私は少し考えた。
確かに、スキルは怖い。
また誰かを傷つけてしまうかもしれない。
でも――
「スキルは怖いです」
私は答えた。
「でも、今のままじゃ駄目なんです。もっと強くならなければ」
「そうか」
「もっと強かったら、ハルートも、オリヴィアさんも……だから、スキルは諦めません」
私の決意を聞いて、アランが小さく頷いた。
「そうか。これから君にたくさんの苦難や悲しみが待ち受けているだろう」
「はい」
「目的のために生き残ってくれ。健闘を祈る」
アランが立ち上がる。
「ありがとうございました」
私も立ち上がって、深くお辞儀をした。
アランは、私のことを本当に心配してくれているんだ。
だからこそ、スキルを捨てるという選択肢も提示してくれた。
でも、私には帰る場所がある。
妹が待っている故郷がある。
そして、守りたい人たちがいる。
だから、どんなに辛くても、前に進まなければならない。
◆ ◆ ◆
アランが去った後、私は一人で考えていた。
オリエンテ要塞。
魔物との戦いの最前線。
きっと、とても危険な場所なんだろう。
でも、それが私の選んだ道だ。
強くなるための道だ。
妹を救うための道だ。
そして、ハルートやオリヴィアの分まで生きるための道だ。
怖いけど、逃げるわけにはいかない。
必ず、生き延びてみせる。
必ず、強くなってみせる。
そして、いつか故郷に帰って、妹を救う。
それが、私の目標だ。
私は深く息を吸って、決意を新たにした。
新しい戦いが、始まろうとしていた。
でも、今度は一人じゃない。
ハルートとオリヴィアの想いを背負って、私は歩いていく。
どんなに辛い道でも、必ず最後までやり抜いてみせる。
それが、生き残った私の使命なのだから。
窓の外を見ると、夕日が沈んでいく。
明日からは、新しい人生が始まる。
冒険者として、戦士として、そして一人の人間として。
私は、その準備を始めることにした。
心の準備を、そして覚悟の準備を。
オリエンテ要塞での日々が、どれほど過酷なものになるのか分からない。
でも、きっと乗り越えてみせる。
仲間たちの想いと共に。
(つづく)
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる