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募金
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「ご協力よろしくお願いしまーす」
プラスチックの白い箱を両手にかかえ、声を張り上げる。箱の上面には数センチの開口部。善意をつなぐ扉の入り口、と言い換えてもいいだろう。
見知った人はいないとはいえ、当初は大きな声を出すことにだいぶ抵抗があった。しかし、続けていくにつれていつしか羞恥心など微塵も感じないくなった。これもひとつの成果だろう。
「よろしくお願いしまーす」
道行く人は何も聞こえないかのように、この場には何も無いかのように目の前を通り過ぎていく。
「皆さんの温かいお心をお願いしておりまーす」
サラリーマンと思しき人が多い。寒空の下、コートを羽織り、皆一様に俯き加減で歩いている。その両の手はポケットに入ったままピクリとも動かない。
この人たちに温かい心を求めるのは無謀かもしれない。
所詮自分に関係ないことには関心がないのだ。
世間なんてそんなもの。
この活動を始めて嫌という程思い知らされた。
しかし、止めるわけにはいかない。この行動には間違いなく意味がある。そして少ないながらも成果はある。
そんなことを考えながら声を出していると、不意に背の低い影が目の前に現れた。
子供だ。まだ小学生の低学年くらいだろう。
右手を握りしめ、こちらに手を伸ばしている。
「ありがとう」
努めて穏やかな口調でそう言い、かがんで箱を差し出した。
子供が手を伸ばす。箱の中から軽い金属音が聞こえた。
おそらくは100円。
子供は踵を返し、すたすたとその場を離れていった。
行方を目で追うと母親と思しき女性が嬉しそうにその子の頭に手を当てている。
母親の方に視線を合わせ、口の動きとお辞儀で感謝の意を再度伝える。
そろそろ人通りもまばらになってきた。
時計に目をやる。
もう時間だ。
切れ込みから箱の中をのぞき見た。
硬貨がチラホラ。紙はない。
ざっと見積もって2000円といったところだろう。
成果はまずまずか。
再度時計を確認。もう行かないとだめだ。
実は最近いい仕事をを見つけたのだ。
自由にシフトが組めて、時給は1000円ほど。
柔軟に募金の呼びかけに立てるのでありがたい。
5時間ほどいたその場を離れ、仕事先に向った。
プラスチックの白い箱を両手にかかえ、声を張り上げる。箱の上面には数センチの開口部。善意をつなぐ扉の入り口、と言い換えてもいいだろう。
見知った人はいないとはいえ、当初は大きな声を出すことにだいぶ抵抗があった。しかし、続けていくにつれていつしか羞恥心など微塵も感じないくなった。これもひとつの成果だろう。
「よろしくお願いしまーす」
道行く人は何も聞こえないかのように、この場には何も無いかのように目の前を通り過ぎていく。
「皆さんの温かいお心をお願いしておりまーす」
サラリーマンと思しき人が多い。寒空の下、コートを羽織り、皆一様に俯き加減で歩いている。その両の手はポケットに入ったままピクリとも動かない。
この人たちに温かい心を求めるのは無謀かもしれない。
所詮自分に関係ないことには関心がないのだ。
世間なんてそんなもの。
この活動を始めて嫌という程思い知らされた。
しかし、止めるわけにはいかない。この行動には間違いなく意味がある。そして少ないながらも成果はある。
そんなことを考えながら声を出していると、不意に背の低い影が目の前に現れた。
子供だ。まだ小学生の低学年くらいだろう。
右手を握りしめ、こちらに手を伸ばしている。
「ありがとう」
努めて穏やかな口調でそう言い、かがんで箱を差し出した。
子供が手を伸ばす。箱の中から軽い金属音が聞こえた。
おそらくは100円。
子供は踵を返し、すたすたとその場を離れていった。
行方を目で追うと母親と思しき女性が嬉しそうにその子の頭に手を当てている。
母親の方に視線を合わせ、口の動きとお辞儀で感謝の意を再度伝える。
そろそろ人通りもまばらになってきた。
時計に目をやる。
もう時間だ。
切れ込みから箱の中をのぞき見た。
硬貨がチラホラ。紙はない。
ざっと見積もって2000円といったところだろう。
成果はまずまずか。
再度時計を確認。もう行かないとだめだ。
実は最近いい仕事をを見つけたのだ。
自由にシフトが組めて、時給は1000円ほど。
柔軟に募金の呼びかけに立てるのでありがたい。
5時間ほどいたその場を離れ、仕事先に向った。
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