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癖(へき)
しおりを挟む「思いついたぞ!」
「先生、一体何を思いついたんですか?」
「クセを治す装置だ」
「クセ? 貧乏ゆすりとか、爪を噛んでしまうとかのあの癖ですか?」
「そうだ。それ以外に何がある」
「なるほど。癖で困っている人はたくさんいそうですもんね。でもそんなことできるんですか?」
「ああ、できるさ。癖というのは一種の病気なんだよ。ひどい場合は局所性ジストニアなんて呼ばれている」
「でもどうやって治すんです?」
「なに、理論はいたって簡単さ。まず動作を検知するセンサーを体に取り付け、治したい癖を記録する。そして頭には脳に電気刺激を与えるための電極を取り付けるんだ」
「なるほど。それで?」
「癖の行動を起こしたときだ痛みや不快感を感じる電気を脳に流し、何もしていない時には心地よくなる刺激を与えるんだ」
「なるほど、確かにわかりやすいですね。患者はその電気刺激が嫌で癖を行わなくなる、というわけですか。それならば確かに治りそうだ」
「そうだろう? 動作センサーの代わりにマイクをつければ口癖だって治せるはずだ」
「でも脳に電気なんて流して大丈夫ですかね」
「問題ない。事実、局所性ジストニアに脳への電気刺激が有用なことは実証されている」
「さすがです、先生。これで一儲けできますね」
「いや、君。私は金儲けなんて考えていないよ。困っている人を助けたいだけだ」
「素晴らしいです」
「よし、ようやく装置ができた。あとはプログラムだ。サンプリングを行わないといけない。私がモニターになる」
「え? 先生自らが?」
「ああ。開発者の責任というやつだよ。君はランダムに刺激を流してくれ」
「わかりました」
「私の方は不快感があるときはこの赤のボタン、心地よいときはこちらの青のボタンを押す。その記録を取り、装置に反映させるんだ」
「わかりました」
「よし、ついに全て完成した」
「ようやくですね」
「この装置の名前はどうするんですか?」
「そうだな。『無くして七癖』なんてどうだ。なかなかいいネーミングだろう?」
「いいですね。それじゃ、さっそく癖を治したい患者さんを募りましょう」
「先生、大変です」
「どうした、血相を変えて。それほどまでに効果が得られたか?」
「いえ、そうではないんです」
「ではどうしたというんだ?」
「皆さん、癖が増えています」
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