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自動ドアを潜ると嗅ぎなれた出汁と肉汁の匂いが鼻腔をくすぐった。
マスクをつけたままでも感じるそれにそそられながら、食券機でお決まりのメニューのボタンを押す。
金額の表示を見ながら、すでに手の中に用意してある硬貨を投入し、出てきた券を取り出した。
席を探す。
今日はなかなかの混みようだ。20席ほど並んだカウンターはほぼ埋まっている。
改めて見直したところで食後のトレイはあるものの、人は座っていない席を見つけた。
空いているが片付けがまだ済んでいないのだろう。
狭いスペースをかき分け、目的の席に着地する。
中にいる店員がすぐにやってきて目の前の盆をさげた。
すかさず先ほど購入した食券を出す。
メニューを呼称すると同時に、店員の手元から水の入ったプラスチック製のタンブラーが出てきた。
まただ。
水。
水、だ。
なぜか水が出てくる。
この店ではサービスで出す飲み物を時期によって変えているらしい。
暑い時期は冷たい水。寒い時期は熱いお茶。
これはいい。気の利いたサービスだ。
でも今は1月。冬の真っ只中。
なぜ水が出てくるのだ。
暑さ寒さの定義は曖昧だ。この季節にでも場合によって水を出すのがこの店のポリシーならそれはそれでいい。
しかし。
首を動かさず、横目で左右を確認する。
お茶だ。
自分以外の人はお茶なのだ。
もちろん頼めばもらえるだろう。寒い時でも水が飲みたい人はいるはずだ。
自分もその一人。
基本、飲み物は冷たい方がいい。
だからここにくるときはいつも水を頼んでいた。
しかし、いつからか頼まなくても水が出されるようになったのだ。
なぜだ。
いつも頼むので、顔を覚えてもらえた結果かもしれない。しかし自分は精々、週一回程度しか来ない。常連と呼ぶには程遠い。
そんなわけで、今日はその点を確認すべくマスクをしてきた。顔を隠したらどうなるか、と。
で、この状況だ。
顔を隠してもやはり自分だけは水が出てくる。
なぜだ。
わからない。
たまたま湯呑みを切らしているのだろうか。だから水にされたのか。
頼んだものが出てくるまで、店員の動作をじっと見守る。
立ち上がった向かいの客と入れ替えで次の客が座った。
店員がメニューを取りに向かう。
お茶だ。
やはりお茶だ。
なぜだ。
わからない。
やがて店員が自分のメニューを運んでくる。
なぜだか聞きたい衝動に駆られる。
しかし。
グッとこらえた。
目の前にトレイが置かれる。同時に香ばしい匂いが鼻腔を刺激した。
「お待たせしましたー。オリジナル激辛カレー牛、大盛りです」
首を傾げながら、スプーンを手に取る。
一口頬張ると、いつもの刺激が身体中に広がった。
まあ、いいか。
マスクをつけたままでも感じるそれにそそられながら、食券機でお決まりのメニューのボタンを押す。
金額の表示を見ながら、すでに手の中に用意してある硬貨を投入し、出てきた券を取り出した。
席を探す。
今日はなかなかの混みようだ。20席ほど並んだカウンターはほぼ埋まっている。
改めて見直したところで食後のトレイはあるものの、人は座っていない席を見つけた。
空いているが片付けがまだ済んでいないのだろう。
狭いスペースをかき分け、目的の席に着地する。
中にいる店員がすぐにやってきて目の前の盆をさげた。
すかさず先ほど購入した食券を出す。
メニューを呼称すると同時に、店員の手元から水の入ったプラスチック製のタンブラーが出てきた。
まただ。
水。
水、だ。
なぜか水が出てくる。
この店ではサービスで出す飲み物を時期によって変えているらしい。
暑い時期は冷たい水。寒い時期は熱いお茶。
これはいい。気の利いたサービスだ。
でも今は1月。冬の真っ只中。
なぜ水が出てくるのだ。
暑さ寒さの定義は曖昧だ。この季節にでも場合によって水を出すのがこの店のポリシーならそれはそれでいい。
しかし。
首を動かさず、横目で左右を確認する。
お茶だ。
自分以外の人はお茶なのだ。
もちろん頼めばもらえるだろう。寒い時でも水が飲みたい人はいるはずだ。
自分もその一人。
基本、飲み物は冷たい方がいい。
だからここにくるときはいつも水を頼んでいた。
しかし、いつからか頼まなくても水が出されるようになったのだ。
なぜだ。
いつも頼むので、顔を覚えてもらえた結果かもしれない。しかし自分は精々、週一回程度しか来ない。常連と呼ぶには程遠い。
そんなわけで、今日はその点を確認すべくマスクをしてきた。顔を隠したらどうなるか、と。
で、この状況だ。
顔を隠してもやはり自分だけは水が出てくる。
なぜだ。
わからない。
たまたま湯呑みを切らしているのだろうか。だから水にされたのか。
頼んだものが出てくるまで、店員の動作をじっと見守る。
立ち上がった向かいの客と入れ替えで次の客が座った。
店員がメニューを取りに向かう。
お茶だ。
やはりお茶だ。
なぜだ。
わからない。
やがて店員が自分のメニューを運んでくる。
なぜだか聞きたい衝動に駆られる。
しかし。
グッとこらえた。
目の前にトレイが置かれる。同時に香ばしい匂いが鼻腔を刺激した。
「お待たせしましたー。オリジナル激辛カレー牛、大盛りです」
首を傾げながら、スプーンを手に取る。
一口頬張ると、いつもの刺激が身体中に広がった。
まあ、いいか。
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