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第27話 終活の予感
しおりを挟む倉田はガミラの件は
MPSにも明かさず自分だけの
秘密にするつもりだった。
ガミラの思いは理解できる
責める気にはならない
もしインビテーションが届いて
オレがワーズブラザーズに移籍したとして
ヒット作に恵まれ今の地位を保てるのか?
未来はどうなるか、わからない。
結果これでよかったんじゃないか?
FB財団の陰謀を知らない倉田は
一人そんな事を考えていた。
MPS側もガミラの真実は分からなかった。
郵便がどこへ消えたのか?それはどうでもいい。
会社は彼との契約をどうするか?で思案していた。
エドを始め多くの役員は彼のファンだ。
その卓越したアドリブを評価する映画関係者も多い。
だがその天才的なひらめきの演技が仇となるとは…
「私はクラが日本に戻る事が1番だと思う」
「FB財団の目が光っているうちは仕事も無い。
日本映画界に戻って巻き返しを図るほうがいい」
「私もそう思う、日本に居ながら時期を待つのだ」
社長、副社長両名が同じ意見だった。
その他の役員も異口同音に倉田の帰国を薦める。
*******
翌日。
「またかよ…」
ビルからの連絡で胃がキリキリと痛む。
今度はなんだ? ガミラの死の真相がわかったのか?
調査チームが探っても分からないだろう。
郵便を隠した事はオレしか知らない。
仕事が減った事を苦に責任を感じて。
それくらいの理由しか思い浮かばないだろう。
ガミラの事は誰にも知らせたくない。
死者に鞭打つ事はしたくないと思った。
スゥ
25F
一度くらいウキウキしながらここに来たいよ。
そんな事を想いつつ、例の3人と対面する。
エド、アレックス、チャックいつものメンバーだ。
それに今はマネージャー的な役割のビル。
座るやいなや、3人は、遠回しに帰国を薦めた。
一旦帰国してくれ、その間に財団と折衝していく。
契約は更新しないが、日本支社と連絡を取り合う。
どうか希望をもってみんなで乗り切ろう。
倉田は帰国命令を出されても
別に悲しくもなんともなかった。
ガミラの死から彼の感情も死んでしまった。
だがそれでよかったのかもしれない。
追い打ちをかけるように、もう1つの
「まさか?」を 倉田は転がる事になる。
********
ある日。
「お、ももちゃん、どうした?」
「社長、ロスの時間も確かめずにすいません」
「いや、まだ起きてるよ、どうした?」
「大変なんです、堀井さんが退職するって」
「ええ?」
「さっき事務所にお見えになって
一身上の都合により退職いたしますって」
「岡は?」
「今、私一人なんです。
なので岡元さんにはお伝えしていません
とにかく早くお伝えしようと思って」
突然の堀井の退職願い。
彼女は休暇を終えてアメリカに戻るはずだった。
「そうか・・・辞めるってか?」
堀井も倉田の仕事は心配していた。
郵便の件も少し話をしただけに
ガミラと形は違えども同じように自分に
責任を感じての退職願いかな?と思った。
オレのせいだ、ガミラも堀井ちゃんも
オレが追い込んだようなものかもしれないな…
正直悲しかったが感情の起伏はなかった。
そうなんだ?という静かな感覚。
自分ではその冷静さが気味悪いなと感じた。
そうだ、リオンタウンの家はどうしよう?
彼女も1年近く住んだ家だ。私物もあるだろう。
どうするつもりなんだろう?
とりあえず吉岡に退職願のほかに
なにか伝言は無かったか?たずねた。
吉岡は退職願以外なにも無いという。
「ももちゃん、中、見てくれないか?」
「あ!お手紙みたいになってます」
「一身上の都合により退職…とふつうですね」
「あ、あと、えーっと
リオンタウンの住居を提供していただき
感謝しております。わたくしの私物は全て
持ち帰りました、整理して退去したつもりですが
もし不備ございましたらお許しくださいませ」
ですって?
「自分の物は引き払ったという事なのか?」
「そう書いてあります」
「ほかは?」
「いえ、何も…」
「そうか、ももちゃん、この話、秘密で」
「わかりました、お2人には黙っています」
吉岡は岡元が堀井を嫌っている事を 薄々感じていた。
*******
始めて堀井の家に入る。
こじんまりした小さなマンションだ。
ガレージには彼女の車がそのままに。
鍵を開けて部屋に入る。 整頓された家。
2LDKの間取りだ。
きれいに清掃された家の中。
家財道具のせいでモデルルームのようだった。
堀井は倉田に告げずに一度渡米し
この家を片付けていたのだった。
テーブルには手紙。
「5年間ありがとうございました。
社長との日々を心の支えにこれからも
がんばります。本当に私は幸せでした。
私の不注意でご迷惑をおかけしました
おゆるしくださいませ」
遺書のようなもんだ
倉田は静かに思った。
ガミラ、堀井ちゃんで次はオレか・・・
倉田は終活の予感を感じていた。
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