極悪皇女が幸せになる方法

春野オカリナ

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極悪皇女の結婚

禁断の魔法

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 その日、皇都中に皇后の訃報を知らせる教会の鐘が鳴り響いた。

 国中の人々が皇后を偲んで、涙する中、グレーテルだけは明日になれば母に遊んでもらえると信じて待っていた。しかし、何時もと違った皇宮の夜は、幼いグレーテルの心を不安にさせるのか、その夜は中々眠れない。暗い回廊を母の部屋へと向かい、寝台に横たわる母の横で眠ろうとした。
 だが、温かい母の体温は感じられず、冷たい氷の様な寒さに目が冴える。

 グレーテルは、強く願った。

 かあさまがわたしとあそんでくれますように…。

 その瞬間、皇后の体が光り遺体が体を起こして、「グレーテル…」と呟いた。

 皇后の葬儀の段取りを大臣らと協議して、護衛らと共に皇后の部屋に向かったヘルメスは皇后の部屋から声が聞こえている事に不審に思った。
 中に入ると遺体とお人形で遊ぶグレーテルの姿がある。それを見た幾人かの騎士達は声にならない恐怖が襲う。
 青白い顔をした皇后の遺体と会話をしているグレーテル。遺体の声はグレーテルにしか聞こえないらしく、他の者にはグレーテルだけが喋っている様に見えた。きゃらきゃらと楽しそうに笑う皇女を見て、誰かが「悪魔が乗り移ったのでは」と呟いた。ヘルメスですら、聞いたことのない能力を開花させた皇女を見て、背筋が凍り付くのを感じていた。
 すぐさま箝口令が敷かれたが、騎士達だけでなく皇女を捜しにきた侍女にもその様子を見られ、口から口に皇女の気味悪さが伝えられてしまった。
 その話は、皇太子の耳に入り、プリンストンは妹が自分の母親を玩具の様に扱ったことへの憎悪が胸の中に芽生えたのだ。
 中でも、皇后が実家から連れてきた腹心の侍女の皇女への侮蔑と憎しみは膨れ上がり、自室で謹慎させられた皇女を攫って、眠らせ皇后の棺の中に押し込めた。

 葬儀の日、何も知らない参列者が献花を捧げた時、それは必然と起きた。

 沢山の花で埋められた皇后の遺体の傍で目が覚めたグレーテルは、花粉に鼻腔を擽られて「くしゅん」とくしゃみをした。参列者たちの間からざわめきが起きると、祭壇にある棺を指さした。皆が注目する中、グレーテルは母の棺の中から顔を出した。

 誰もが悪劣な事をすると思った。

 既にグレーテルが皇后を玩具の様に扱ったという噂を耳にした者達は、彼女に悪意を向けている。事態を重く見たヘルメスはグレーテルを離宮に移した。そして、自分の目の届かない様にした。実行犯の侍女はアリージェンナの後を追って殉死した。この事件の真相をヘルメスもプリンストンも明かそうとはしなかった。

 こうして、グレーテルは母の葬儀にも出られず、一日あまりで家族に捨てられた。


 ──呪われた皇女グレーテル…。


 皇女は、影でそう呼ばれるようになった。

 唯一味方だったグレーテルの乳母も三年後に亡くなり、グレーテルを心配してくれる者は極少数となった。

 
 
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