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極悪皇女の結婚
贖罪
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レイモンドはグラッセ公爵家の唯一の後継者として生まれた。
母レイチェルが、レイモンドを産んだ時に体を壊して二度と子供は産めなくなったからだ。そんな公爵夫人に不満を持つ者もいたが、妾を持つように薦められてもガーランド・グラッセは首を縦に振らなかった。
「貴族の結婚は契約で成り立っている物だ。私が余所に女を囲ったらそれは立派な契約違反となる」
と言って、全ての縁談を断り、死ぬまで妻のレイチェル一人を守った。妻を特別愛していたとは思えなかったが、死んだ後では聞くこともできない。
ただ、そんな父を母は尊敬し、信頼を寄せていた事だけは確かだった。
母には、友人がいてその娘がアリージェンナだった。新興伯爵家に生まれたアリージェンナは家族に恵まれなかった。
母メアリージュンは、没落寸前のカイゼン侯爵家の令嬢だった。中央に顔を売る為に名家の娘を妻に持ちたかった伯爵が、実家の借金を肩代わりするために金に物を言わせて妻にした。そこには打算的な感情しかない。伯爵は女癖が悪く、多くの愛人がいた。その上、酒癖が悪く酔うと妻に暴力を振っていた。
そんな崩壊した家庭環境でアリージェンナは育ったのだ。
夫人は夫の伯爵の機嫌が悪い時は、娘を公爵家に避難させ、夫の目に移らない様にしていた。なぜならアリージェンナは類まれなる魔法の才を持っていて、その証拠に金色の髪と紫の瞳を持っている。昔から魔力の高い者は金色の髪をしていると言われていたからだ。その証拠に、聖女となる者は紫の瞳を多く持っていた。
夫人は伯爵が娘を商品の様に売り飛ばすのではないかと不安だった。
幼い頃からレイモンドとアリージェンナは共に過ごす幼馴染。いつしか、大人になっても夫婦になることを望む様になっていた。
しかし、母が赦しても父は納得しなかった。当時、格下の侯爵家にも釣り合う令嬢が多くいたからだ。その誰もが公爵家や皇族との婚姻を望んでいる。
その中にエドモンドの母ソニア・ディバイン侯爵令嬢も候補に挙がっていた。彼女はジャネットの取り巻きの一人で、ジャネットから何度もソニアを婚約者に選ぶように薦められた。
レイモンドはその度にきっぱりと断っていた。
アリージェンナがデビュタントを迎える年、レイモンドは彼女にドレスを贈った。もちろんお揃いで、その日はエスコートもして入場した。
今思えばレイモンドにとって、一番幸せな記憶だっただろう。お披露目とダンスが終わればアリージェンナに結婚を申し込むつもりだったレイモンドは、上着の内ポケットに忍ばせた指輪のケースを握って確かめていた。
既に王族の親衛隊に配属されて、次期公爵の後継者としても順風満帆な人生に落とし穴が存在するなどその時は知らなかった。
皇宮の侍女から内緒の手紙を受けて、レイモンドは逸る気持ちを抑えながら、約束の場所に行く。
「アリージェンナ…」
呼んだのに彼女からは返事がない。回り込んで顔を確認すると、相手はソニアだった。人違いだとレイモンドが立ち去ろうとすると、縋ってソニアは身体を押し付けてきた。
とても、成人したての令嬢のすることではない。下品極まりないと憤慨して突き放そうとした時ソニアは最後の手段をとった。
自身の唇をレイモンドのそれに押し当てたのだ。物陰からさっきの侍女が飛び出してきて、密会をしていたと騒ぎ始めた。会場に戻ると青い顔をしたアリージェンナと目が合ったが、彼女はそのまま帰宅した。
ことの次第を両親に話してもすでに起きたことはなかったことにできなかった。謝罪の手紙もアリージェンナには届かず、彼女はその後すぐに聖女認定をされた。
この国の法で聖女は王族と婚姻することが決まっており、アリージェンナはヘルメスと婚姻することになったのだ。
それでも諦めきれなかったレイモンドは、アリージェンナの結婚式当日、彼女の本心を聞くことにした。
だが、彼女から帰ってきた言葉は、過去の思い出だと言われ、諦めることにした。
最後にアリージェンナは、
「もし、わたしの子供に何かあったなら、力を貸してほしい」
と頼んだ。
レイモンドは、そのことを胸に刻み、いつの日か約束を果たそうと思っていた。
彼女の産んだグレーテルを冷遇するヘルメスに対し、何度も諫言してみたが聞き届けられることはなかった。それに皇女を養女になどできない。
そこで、レイモンドは自身の息子の伴侶として迎えることで、愛する人の娘を救おうと考えていた。まさか、二人が破局するとは想像もしていなかったのだ。
「例え、母上が画策したとしても父上も向き合えばよかったのでは」
「そうだな。だが、お前の母が犯した罪はそれだけではなかった」
「もしかして、母上が亡くなる前に言い争いをしていたことと何か関係が」
「あれを見ていたのか?」
「はい、夜中に目が覚めて…偶然」
「そうか…なら仕方がない」
「お前の母、私の妻は罪人なのだよ。皇后を呪い殺した…」
「ま…まさか。う…嘘ですよね」
「本当だ。ソニアの部屋から呪術用の魔道具が見つかって、その一つを皇后に贈った」
「証拠はあるんですか?」
「ああ、本にの口から聞いた。それで言い争いになって、皇后の死の知らせと共に自身も服毒したんだ」
「な…なんてこと」
「だから、余計罪滅ぼしをしたかったんだ。皇女様をあんな境遇に追いやったのは私の所為だからな」
知らない母の秘密を知って、エドモンドは自室に帰った。
そして、父から聞かされたもう一つの真実…。母をそそのかしたのはジャネット・マーキュリー公爵夫人ではないかと。
もしそうなら、フローラとの婚約もいい機会だ。何か決定的な証拠が見つかるかもしれないと考えた。
もうグレーテルに会えないのなら、せめてもの償いに真実を明らかにしたいと決心した。
母レイチェルが、レイモンドを産んだ時に体を壊して二度と子供は産めなくなったからだ。そんな公爵夫人に不満を持つ者もいたが、妾を持つように薦められてもガーランド・グラッセは首を縦に振らなかった。
「貴族の結婚は契約で成り立っている物だ。私が余所に女を囲ったらそれは立派な契約違反となる」
と言って、全ての縁談を断り、死ぬまで妻のレイチェル一人を守った。妻を特別愛していたとは思えなかったが、死んだ後では聞くこともできない。
ただ、そんな父を母は尊敬し、信頼を寄せていた事だけは確かだった。
母には、友人がいてその娘がアリージェンナだった。新興伯爵家に生まれたアリージェンナは家族に恵まれなかった。
母メアリージュンは、没落寸前のカイゼン侯爵家の令嬢だった。中央に顔を売る為に名家の娘を妻に持ちたかった伯爵が、実家の借金を肩代わりするために金に物を言わせて妻にした。そこには打算的な感情しかない。伯爵は女癖が悪く、多くの愛人がいた。その上、酒癖が悪く酔うと妻に暴力を振っていた。
そんな崩壊した家庭環境でアリージェンナは育ったのだ。
夫人は夫の伯爵の機嫌が悪い時は、娘を公爵家に避難させ、夫の目に移らない様にしていた。なぜならアリージェンナは類まれなる魔法の才を持っていて、その証拠に金色の髪と紫の瞳を持っている。昔から魔力の高い者は金色の髪をしていると言われていたからだ。その証拠に、聖女となる者は紫の瞳を多く持っていた。
夫人は伯爵が娘を商品の様に売り飛ばすのではないかと不安だった。
幼い頃からレイモンドとアリージェンナは共に過ごす幼馴染。いつしか、大人になっても夫婦になることを望む様になっていた。
しかし、母が赦しても父は納得しなかった。当時、格下の侯爵家にも釣り合う令嬢が多くいたからだ。その誰もが公爵家や皇族との婚姻を望んでいる。
その中にエドモンドの母ソニア・ディバイン侯爵令嬢も候補に挙がっていた。彼女はジャネットの取り巻きの一人で、ジャネットから何度もソニアを婚約者に選ぶように薦められた。
レイモンドはその度にきっぱりと断っていた。
アリージェンナがデビュタントを迎える年、レイモンドは彼女にドレスを贈った。もちろんお揃いで、その日はエスコートもして入場した。
今思えばレイモンドにとって、一番幸せな記憶だっただろう。お披露目とダンスが終わればアリージェンナに結婚を申し込むつもりだったレイモンドは、上着の内ポケットに忍ばせた指輪のケースを握って確かめていた。
既に王族の親衛隊に配属されて、次期公爵の後継者としても順風満帆な人生に落とし穴が存在するなどその時は知らなかった。
皇宮の侍女から内緒の手紙を受けて、レイモンドは逸る気持ちを抑えながら、約束の場所に行く。
「アリージェンナ…」
呼んだのに彼女からは返事がない。回り込んで顔を確認すると、相手はソニアだった。人違いだとレイモンドが立ち去ろうとすると、縋ってソニアは身体を押し付けてきた。
とても、成人したての令嬢のすることではない。下品極まりないと憤慨して突き放そうとした時ソニアは最後の手段をとった。
自身の唇をレイモンドのそれに押し当てたのだ。物陰からさっきの侍女が飛び出してきて、密会をしていたと騒ぎ始めた。会場に戻ると青い顔をしたアリージェンナと目が合ったが、彼女はそのまま帰宅した。
ことの次第を両親に話してもすでに起きたことはなかったことにできなかった。謝罪の手紙もアリージェンナには届かず、彼女はその後すぐに聖女認定をされた。
この国の法で聖女は王族と婚姻することが決まっており、アリージェンナはヘルメスと婚姻することになったのだ。
それでも諦めきれなかったレイモンドは、アリージェンナの結婚式当日、彼女の本心を聞くことにした。
だが、彼女から帰ってきた言葉は、過去の思い出だと言われ、諦めることにした。
最後にアリージェンナは、
「もし、わたしの子供に何かあったなら、力を貸してほしい」
と頼んだ。
レイモンドは、そのことを胸に刻み、いつの日か約束を果たそうと思っていた。
彼女の産んだグレーテルを冷遇するヘルメスに対し、何度も諫言してみたが聞き届けられることはなかった。それに皇女を養女になどできない。
そこで、レイモンドは自身の息子の伴侶として迎えることで、愛する人の娘を救おうと考えていた。まさか、二人が破局するとは想像もしていなかったのだ。
「例え、母上が画策したとしても父上も向き合えばよかったのでは」
「そうだな。だが、お前の母が犯した罪はそれだけではなかった」
「もしかして、母上が亡くなる前に言い争いをしていたことと何か関係が」
「あれを見ていたのか?」
「はい、夜中に目が覚めて…偶然」
「そうか…なら仕方がない」
「お前の母、私の妻は罪人なのだよ。皇后を呪い殺した…」
「ま…まさか。う…嘘ですよね」
「本当だ。ソニアの部屋から呪術用の魔道具が見つかって、その一つを皇后に贈った」
「証拠はあるんですか?」
「ああ、本にの口から聞いた。それで言い争いになって、皇后の死の知らせと共に自身も服毒したんだ」
「な…なんてこと」
「だから、余計罪滅ぼしをしたかったんだ。皇女様をあんな境遇に追いやったのは私の所為だからな」
知らない母の秘密を知って、エドモンドは自室に帰った。
そして、父から聞かされたもう一つの真実…。母をそそのかしたのはジャネット・マーキュリー公爵夫人ではないかと。
もしそうなら、フローラとの婚約もいい機会だ。何か決定的な証拠が見つかるかもしれないと考えた。
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