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極悪皇女の結婚
極悪皇女の婚約発表
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舞踏会場の大広間は、多くの貴族とデビュタントの子供たちで既に賑わっている。
勿論彼らの目的は久々に社交界に顔を出す皇女の行動だ。
もう一組のカップルも出席するというので、皇女が今度は何を仕出かすのか、賭けている者までいる。
記憶喪失という噂の真偽を確かめようと、貴族達は入り口の扉が開くのを固唾を呑んで待っていた。
ファンファーレの音と共に皇族が入場すると、皆が一斉に頭を下げる。
皇帝が玉座に着くと、皆が一斉に注目した。始まりの言葉を述べるとデビュタントが開催される。初々しい新人達のダンスが終わり、子供達は一度下がってお互いの気になる場所に散っていく。
再び、侍従が皇女の入場を知らせると、一同は静まり返って扉の方に向き直った。
ギイイ……。
年季の入った扉の開く音は鈍く感じる。
貴族たちの注目を浴びて、グレーテルは一歩を踏み出す。
「緊張している?」
「少しね」
「大丈夫。何があっても僕がついているから安心して」
「そうね。頼もしいわね」
お互いの顔を見合わせながら、微笑んでゆっくりと中央を皇帝の前まで歩いて行った。
多くの貴族から普段とは違う皇女の様子に感嘆の声が聞こえている。
「噂は本当なのか?皇女殿下が記憶喪失だと…」
「本当なのでしょう。ほら、婚約者の方と仲睦まじそうな雰囲気ですもの」
「それよりもご覧になって、お二人の衣装の美しいこと」
「そうね、並び立つとまるで対の人形のようですわ」
「ええ、なんてお似合いの二人なのかしら」
「何もかも美しい…」
賞賛の声とため息が漏れる中、グレーテルは、記憶がないから、過去の自分の行動から、また間違っているのではと不安に感じていた。
「うまくやれているから」
「本当に?」
「ああ、今日の主役は間違いなく僕のお姫様だよ」
ヴィランの励ましにグレーテルは少し自信を持った。
ヘルメスの前で立ち止まると、礼をする。ヘルメスが皇女の婚約を正式に発表すると同時に大勢の貴族から祝いの言葉が飛び交った。
今でかつて、こんなに大勢の人から祝われたことのないグレーテルは少し戸惑いを見せた。
そして、ヘルメスがマーキュリー公爵夫人にダンスを申し込むと大人の夜会が始まった。
ヴィランとグレーテルが踊りだすと、貴族は羨望の眼差しを向ける。グレーテルの衣装の美しさは動くたびに注目された。
白地に縁取りを黒、刺繡を金色そしてウェストから裾までを何枚もの布で重ねたドレスは花びらの様にグレーテルの動きに合わせてひらひらと舞っている。何よりごてごてとした宝石は一切使っておらず、レースには銀色の糸が混ざっている。それがシャンデリアの明かりを反射して、キラキラと七色に光っていた。
「意外とダンスが上手なのね」
「まあ、これも貴族の務めだと叩き込まれたからね」
「そうなのね。踊りなれているのかと思ったわ」
「僕はあまり夜会が好きじゃあないから、ほら見た目がね」
「あ…ごめんなさい。そんなつもりでは」
「わかっているから、気にしないで」
グレーテルは、自分の失言でヴィランが傷ついたのではと不安になった。
今は黒髪や黒い目は友好的に見られているが、10年前までは「黒持ち」と言って不吉の象徴の様に言われていた。隣国が魔法使いについての論文を発表してから、180°態度を変えた。
元々、この世界には、多くの魔法使いがいたのだが、異界の歪を大聖女と7人の使徒達が封じて、世界に平和が訪れた。という伝説がある。
その中に黒髪、黒目の魔法使いが出てくるのだが、いつしか都合良く、誰かに書き換えられ、金髪、青い目となっていた。
10年前に古代の石板が見つかり、原文が公開された。
それによって黒髪、黒目を持つ者に対する偏見も収まりつつあるのだが、問題は「黒持ち」と呼ばれていた流浪の民「エヴァット」族の数が減ってしまった事だ。
彼らは確実に子孫に魔力を引き継がすことが出来るのだ。
そして、ヴィランは、希少な「エヴァット」族の血を引いている。
ここ数年は、魔法使いの血を求めた餓えた貴族達から大量の見合い話が舞い込んでいる。
だから、ヴィランは、夜会には殆ど顔を出さないようにしていた。
勿論、愛する女性が他の男に夢中になっていて、自分の事は眼中になかったことも要因なのだが……。
何も知らないグレーテルは、ヴィランに極上の微笑みを向けていた。
勿論彼らの目的は久々に社交界に顔を出す皇女の行動だ。
もう一組のカップルも出席するというので、皇女が今度は何を仕出かすのか、賭けている者までいる。
記憶喪失という噂の真偽を確かめようと、貴族達は入り口の扉が開くのを固唾を呑んで待っていた。
ファンファーレの音と共に皇族が入場すると、皆が一斉に頭を下げる。
皇帝が玉座に着くと、皆が一斉に注目した。始まりの言葉を述べるとデビュタントが開催される。初々しい新人達のダンスが終わり、子供達は一度下がってお互いの気になる場所に散っていく。
再び、侍従が皇女の入場を知らせると、一同は静まり返って扉の方に向き直った。
ギイイ……。
年季の入った扉の開く音は鈍く感じる。
貴族たちの注目を浴びて、グレーテルは一歩を踏み出す。
「緊張している?」
「少しね」
「大丈夫。何があっても僕がついているから安心して」
「そうね。頼もしいわね」
お互いの顔を見合わせながら、微笑んでゆっくりと中央を皇帝の前まで歩いて行った。
多くの貴族から普段とは違う皇女の様子に感嘆の声が聞こえている。
「噂は本当なのか?皇女殿下が記憶喪失だと…」
「本当なのでしょう。ほら、婚約者の方と仲睦まじそうな雰囲気ですもの」
「それよりもご覧になって、お二人の衣装の美しいこと」
「そうね、並び立つとまるで対の人形のようですわ」
「ええ、なんてお似合いの二人なのかしら」
「何もかも美しい…」
賞賛の声とため息が漏れる中、グレーテルは、記憶がないから、過去の自分の行動から、また間違っているのではと不安に感じていた。
「うまくやれているから」
「本当に?」
「ああ、今日の主役は間違いなく僕のお姫様だよ」
ヴィランの励ましにグレーテルは少し自信を持った。
ヘルメスの前で立ち止まると、礼をする。ヘルメスが皇女の婚約を正式に発表すると同時に大勢の貴族から祝いの言葉が飛び交った。
今でかつて、こんなに大勢の人から祝われたことのないグレーテルは少し戸惑いを見せた。
そして、ヘルメスがマーキュリー公爵夫人にダンスを申し込むと大人の夜会が始まった。
ヴィランとグレーテルが踊りだすと、貴族は羨望の眼差しを向ける。グレーテルの衣装の美しさは動くたびに注目された。
白地に縁取りを黒、刺繡を金色そしてウェストから裾までを何枚もの布で重ねたドレスは花びらの様にグレーテルの動きに合わせてひらひらと舞っている。何よりごてごてとした宝石は一切使っておらず、レースには銀色の糸が混ざっている。それがシャンデリアの明かりを反射して、キラキラと七色に光っていた。
「意外とダンスが上手なのね」
「まあ、これも貴族の務めだと叩き込まれたからね」
「そうなのね。踊りなれているのかと思ったわ」
「僕はあまり夜会が好きじゃあないから、ほら見た目がね」
「あ…ごめんなさい。そんなつもりでは」
「わかっているから、気にしないで」
グレーテルは、自分の失言でヴィランが傷ついたのではと不安になった。
今は黒髪や黒い目は友好的に見られているが、10年前までは「黒持ち」と言って不吉の象徴の様に言われていた。隣国が魔法使いについての論文を発表してから、180°態度を変えた。
元々、この世界には、多くの魔法使いがいたのだが、異界の歪を大聖女と7人の使徒達が封じて、世界に平和が訪れた。という伝説がある。
その中に黒髪、黒目の魔法使いが出てくるのだが、いつしか都合良く、誰かに書き換えられ、金髪、青い目となっていた。
10年前に古代の石板が見つかり、原文が公開された。
それによって黒髪、黒目を持つ者に対する偏見も収まりつつあるのだが、問題は「黒持ち」と呼ばれていた流浪の民「エヴァット」族の数が減ってしまった事だ。
彼らは確実に子孫に魔力を引き継がすことが出来るのだ。
そして、ヴィランは、希少な「エヴァット」族の血を引いている。
ここ数年は、魔法使いの血を求めた餓えた貴族達から大量の見合い話が舞い込んでいる。
だから、ヴィランは、夜会には殆ど顔を出さないようにしていた。
勿論、愛する女性が他の男に夢中になっていて、自分の事は眼中になかったことも要因なのだが……。
何も知らないグレーテルは、ヴィランに極上の微笑みを向けていた。
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