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極悪皇女の結婚
レーチェ・アドニス
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ダンスを終えるとグレーテル達はホールの端に退いた。
すると、あっと言う間にグレーテル達の周りは一言でも言葉を交わそうと貴族達が押し寄せてきた。
中には噂の真相を聞き出そうと躍起になっている無礼者もいる。
以前は全く見向きもしなかったのに、皇都から出ていくことになると人が群がって来た。多くの者は疫病神が僻地に追いやられるのが楽しみで仕方がないのだ。
いつも何か娯楽を求めている貴族にとって、恰好の獲物。
貴族達の群れを掻き分けて、声をかけて来たのはレイモンド・グラッセだった。その隣にはレーチェの姿もあった。
レーチェ・アドニス侯爵令嬢は、レイモンドの従弟の娘。そのせいかグレーテルにも気軽に話しかけてくる。
「皇女様にご挨拶します」
「堅苦しい挨拶はいいわ。レーチェ嬢も久しぶりね」
「最近、皇都に戻ってきたばかりなんです」
「そうなの。また会えて嬉しいわ」
「わたしもです。でも、残念だなあ。エディ兄さまと結婚して本当の親族になると思っていたんですけどね」
早く紹介してほしそうに、視線をグレーテルの隣に向けていた。
「紹介するわ。わたくしの婚約者のヴィラン・クレイモア。辺境伯の令息よ」
「まあ、あなたがあの有名な魔法使い」
ヴィランは最年少で魔法使いになっただけでなく、クレイモア領地アンガス一帯に平穏をもたらした立役者の一人。同世代の中でも将来の有望株として、是非とも婿にと多くの貴族から求婚書が届いたほどだ。
記憶喪失前のグレーテルも、その噂は知っている。しかし、その頃は別段に興味もなかったので受け流していたのだが、運命とは皮肉なもので、まさか自分の結婚相手に彼が選ばれるとは思いもしなかった。
「有名とは大げさすよ。あれは辺境地を守る大勢の人間の功績ですから」
「ご謙遜を、君の攻勢が一番大きかったと聞いている」
「これはグラッセ公爵。公爵の耳に届くほど噂に尾ひれがついたようですね」
「大げさなものか。君の防衛魔法は素晴らしかった。そんおかげでこちらの損傷はほとんどなく。相手を簡単に降伏させられたのだから」
「そんなことはないですよ。公爵家の方のように武門の家に生まれた不出来な僕には魔法しか取り柄がないですからね」
「ああ、君は剣術が少しばかり苦手だったか」
「恥ずかしながら…全くダメですね」
「ははは、その分魔法が長けているんだ。いいじゃないか」
公爵は、自分の娘婿を褒めるようにヴィランを褒めていた。
その様子を見ていた貴族がひそひそと囁きあっている。
昔のレイモンドとアリージェンナの恋物語を……。
「難しい話はいいでしょう。それよりもグレーテル様のドレス素敵ですわね。どちらの方がデザインされたものですか?」
「これはマダムポリーヌにお願いしたのよ」
「うわーっ、本当に素敵です」
目を輝かせながら、レーチェはグレーテルのドレスを見つめていた。
デザイナーの名前を聞いてグラッセ公爵は、持っていたグラスを落としそうになった。ヴィランが気付いて、魔法で制止しなければ、そのままグレーテルのドレスが赤く染まっていただろう。
「ど…どうやら、少し酔っているようだ。年寄りはこの辺で失礼するよ」
そう言ってその場を離れた。
(私がアリージェンナに贈った最後のドレスもマダムポリーヌがデザインしたものだったなあ)
楽しそうに談笑している若人を見つめながら、
──アリージェンナ、君の娘はもう時期遠くに嫁いで行くよ。彼女の為にも真実を必ず突き止めてみせる。
もう一度、心に誓っていた。
「あら、グレーテル。今日の衣装は、どなたから贈られたのかしら。素敵なドレスね」
グレーテルの後ろから近付いて来たのは、フローラとエドモンドの二人だった。
全ての役者が揃った所で、皇帝ヘルメスが聖女の記録を発表した。
すると、あっと言う間にグレーテル達の周りは一言でも言葉を交わそうと貴族達が押し寄せてきた。
中には噂の真相を聞き出そうと躍起になっている無礼者もいる。
以前は全く見向きもしなかったのに、皇都から出ていくことになると人が群がって来た。多くの者は疫病神が僻地に追いやられるのが楽しみで仕方がないのだ。
いつも何か娯楽を求めている貴族にとって、恰好の獲物。
貴族達の群れを掻き分けて、声をかけて来たのはレイモンド・グラッセだった。その隣にはレーチェの姿もあった。
レーチェ・アドニス侯爵令嬢は、レイモンドの従弟の娘。そのせいかグレーテルにも気軽に話しかけてくる。
「皇女様にご挨拶します」
「堅苦しい挨拶はいいわ。レーチェ嬢も久しぶりね」
「最近、皇都に戻ってきたばかりなんです」
「そうなの。また会えて嬉しいわ」
「わたしもです。でも、残念だなあ。エディ兄さまと結婚して本当の親族になると思っていたんですけどね」
早く紹介してほしそうに、視線をグレーテルの隣に向けていた。
「紹介するわ。わたくしの婚約者のヴィラン・クレイモア。辺境伯の令息よ」
「まあ、あなたがあの有名な魔法使い」
ヴィランは最年少で魔法使いになっただけでなく、クレイモア領地アンガス一帯に平穏をもたらした立役者の一人。同世代の中でも将来の有望株として、是非とも婿にと多くの貴族から求婚書が届いたほどだ。
記憶喪失前のグレーテルも、その噂は知っている。しかし、その頃は別段に興味もなかったので受け流していたのだが、運命とは皮肉なもので、まさか自分の結婚相手に彼が選ばれるとは思いもしなかった。
「有名とは大げさすよ。あれは辺境地を守る大勢の人間の功績ですから」
「ご謙遜を、君の攻勢が一番大きかったと聞いている」
「これはグラッセ公爵。公爵の耳に届くほど噂に尾ひれがついたようですね」
「大げさなものか。君の防衛魔法は素晴らしかった。そんおかげでこちらの損傷はほとんどなく。相手を簡単に降伏させられたのだから」
「そんなことはないですよ。公爵家の方のように武門の家に生まれた不出来な僕には魔法しか取り柄がないですからね」
「ああ、君は剣術が少しばかり苦手だったか」
「恥ずかしながら…全くダメですね」
「ははは、その分魔法が長けているんだ。いいじゃないか」
公爵は、自分の娘婿を褒めるようにヴィランを褒めていた。
その様子を見ていた貴族がひそひそと囁きあっている。
昔のレイモンドとアリージェンナの恋物語を……。
「難しい話はいいでしょう。それよりもグレーテル様のドレス素敵ですわね。どちらの方がデザインされたものですか?」
「これはマダムポリーヌにお願いしたのよ」
「うわーっ、本当に素敵です」
目を輝かせながら、レーチェはグレーテルのドレスを見つめていた。
デザイナーの名前を聞いてグラッセ公爵は、持っていたグラスを落としそうになった。ヴィランが気付いて、魔法で制止しなければ、そのままグレーテルのドレスが赤く染まっていただろう。
「ど…どうやら、少し酔っているようだ。年寄りはこの辺で失礼するよ」
そう言ってその場を離れた。
(私がアリージェンナに贈った最後のドレスもマダムポリーヌがデザインしたものだったなあ)
楽しそうに談笑している若人を見つめながら、
──アリージェンナ、君の娘はもう時期遠くに嫁いで行くよ。彼女の為にも真実を必ず突き止めてみせる。
もう一度、心に誓っていた。
「あら、グレーテル。今日の衣装は、どなたから贈られたのかしら。素敵なドレスね」
グレーテルの後ろから近付いて来たのは、フローラとエドモンドの二人だった。
全ての役者が揃った所で、皇帝ヘルメスが聖女の記録を発表した。
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