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勝利の冠を君に捧げる
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僕は勝利した。だが、素直に喜べない状況だった。
僕が勝利した瞬間を誰よりも喜んでいたコーネリアを前に、僕は予定通り彼女に求婚した。舞台は揃っていた。大勢の観客が見守る中で彼女に跪き、
「君にこの勝利の冠を捧げる」
それは騎士なら誰でも憧れるシチュエーションだった。この時、僕はまだ言えなかった。
「結婚して欲しい。僕だけの妻になって欲しい」
言葉は喉まで出かかったが、アイゼンとの試合の不完全燃焼な状態が尾を引いて、素直に口に出せなかった。今思えばこの時さっさと言葉にして、彼女と早く結婚すれば良かったのだ。
そうすればこんな体にされなかったのに……。今更、後悔しても遅い。
次の日から僕の周辺はガラリと変わった。今まで僕と付き合いのない連中まですり寄って来るようになった。正直鬱陶しい。そんなことより、コーネリアとの時間が思う様に取れなくなったことの方が重要だった。
毎日、彼女との連絡をとる為、騎士団の連絡を使っていたのだが、後で調べると僕が送った手紙はどうやら誰かの手で一度開封されていた様だった。
贈ったはずの品物も何故か、届いていないことがあった。不審に思っている内に、僕はある人物から呼び出される。
その人物は、第二王子殿下だった。
元々、僕の兄は第二王子の友人として幼い頃より傍にいた。所謂側近候補というやつだ。しかし、国王陛下の頼みで王太子殿下の執務官になった。
当時、兄は強かな野心家だと噂されたが、これには陛下の思惑がある。
二人の王子は共に優秀だが、性格が違っていた。第二王子殿下は柔軟な性格で広く、人の意見を拾える人物。
王太子殿下は逆に視野が狭いところがあった。それが当時、彼を王太子にする事を陛下が懸念した理由でもある。
そんな状態を打開すべく、兄を王太子殿下の補佐に当てたのだ。彼の欠点を補う為に、自分見に従うだけの者より、苦言を呈してくれる者も必要だと陛下の親心だったのだろう。
「失礼します。殿下お呼びと覗ったのですが」
「久しぶりだね。兄上は元気かい?彼は今王太子殿下の執務官をしているのだろう」
「はい、元気です。殿下はお会いにならないのですか?」
「まあ、宮が離れているからね。わざわざ会いに行くのは憚られるんだよ。その辺は察してくれないかな」
僕は、騎士としては優秀かもしれないが、政治には疎かった。王太子殿下と第二王子殿下の微妙な関係が僕とコーネリアの結婚にも影響しているとはこの時、思ってもいなかった。
「実は今日、君を呼んだのは、他でもない。私の護衛に付く気はないか?」
唐突な誘いに驚いていると
「今すぐに返事が欲しい訳ではないから、考えておいてくれ」
王族の誘いを無下に等出来ない事は、わかっているはずなのに敢えて僕を呼び出して、打診してくる意図が僕には理解できない。
政治的な事なら、僕ではなく、父や兄に言ってほしい。僕は騎士として国にただ忠誠を誓う者だ。そこに雑念を持ち込みたくないのだ。
その日、夜遅く帰った父から叱責を受けることになる。
「アレクセイ、今日、第二王子殿下に呼ばれて、部屋までいったらしいな。何故、断らなかったんだ。兄の立場も考えろ」
「断れるのなら断りました。王子の呼び出しを断る訳にいかないでしょう」
「お前もこの公爵家の一員だ。今の家の立場が微妙な事ぐらい、お前もわかっていると思ったんだが」
「理解はできますが、自ら進んで覗ったわけではありません。それに第二王子の護衛の話も僕だけの判断ではできないでしょう」
「その件については、ローランドと相談する。今日のところはもういい。下がれ」
父から投げやりな態度をとられ、部屋から出て行った。
その後、辞令が降り、正式に王太子殿下の親衛隊に所属することになった。その知らせを持って、愛するコーネリアにプロポーズしに行ったのだった。
僕が勝利した瞬間を誰よりも喜んでいたコーネリアを前に、僕は予定通り彼女に求婚した。舞台は揃っていた。大勢の観客が見守る中で彼女に跪き、
「君にこの勝利の冠を捧げる」
それは騎士なら誰でも憧れるシチュエーションだった。この時、僕はまだ言えなかった。
「結婚して欲しい。僕だけの妻になって欲しい」
言葉は喉まで出かかったが、アイゼンとの試合の不完全燃焼な状態が尾を引いて、素直に口に出せなかった。今思えばこの時さっさと言葉にして、彼女と早く結婚すれば良かったのだ。
そうすればこんな体にされなかったのに……。今更、後悔しても遅い。
次の日から僕の周辺はガラリと変わった。今まで僕と付き合いのない連中まですり寄って来るようになった。正直鬱陶しい。そんなことより、コーネリアとの時間が思う様に取れなくなったことの方が重要だった。
毎日、彼女との連絡をとる為、騎士団の連絡を使っていたのだが、後で調べると僕が送った手紙はどうやら誰かの手で一度開封されていた様だった。
贈ったはずの品物も何故か、届いていないことがあった。不審に思っている内に、僕はある人物から呼び出される。
その人物は、第二王子殿下だった。
元々、僕の兄は第二王子の友人として幼い頃より傍にいた。所謂側近候補というやつだ。しかし、国王陛下の頼みで王太子殿下の執務官になった。
当時、兄は強かな野心家だと噂されたが、これには陛下の思惑がある。
二人の王子は共に優秀だが、性格が違っていた。第二王子殿下は柔軟な性格で広く、人の意見を拾える人物。
王太子殿下は逆に視野が狭いところがあった。それが当時、彼を王太子にする事を陛下が懸念した理由でもある。
そんな状態を打開すべく、兄を王太子殿下の補佐に当てたのだ。彼の欠点を補う為に、自分見に従うだけの者より、苦言を呈してくれる者も必要だと陛下の親心だったのだろう。
「失礼します。殿下お呼びと覗ったのですが」
「久しぶりだね。兄上は元気かい?彼は今王太子殿下の執務官をしているのだろう」
「はい、元気です。殿下はお会いにならないのですか?」
「まあ、宮が離れているからね。わざわざ会いに行くのは憚られるんだよ。その辺は察してくれないかな」
僕は、騎士としては優秀かもしれないが、政治には疎かった。王太子殿下と第二王子殿下の微妙な関係が僕とコーネリアの結婚にも影響しているとはこの時、思ってもいなかった。
「実は今日、君を呼んだのは、他でもない。私の護衛に付く気はないか?」
唐突な誘いに驚いていると
「今すぐに返事が欲しい訳ではないから、考えておいてくれ」
王族の誘いを無下に等出来ない事は、わかっているはずなのに敢えて僕を呼び出して、打診してくる意図が僕には理解できない。
政治的な事なら、僕ではなく、父や兄に言ってほしい。僕は騎士として国にただ忠誠を誓う者だ。そこに雑念を持ち込みたくないのだ。
その日、夜遅く帰った父から叱責を受けることになる。
「アレクセイ、今日、第二王子殿下に呼ばれて、部屋までいったらしいな。何故、断らなかったんだ。兄の立場も考えろ」
「断れるのなら断りました。王子の呼び出しを断る訳にいかないでしょう」
「お前もこの公爵家の一員だ。今の家の立場が微妙な事ぐらい、お前もわかっていると思ったんだが」
「理解はできますが、自ら進んで覗ったわけではありません。それに第二王子の護衛の話も僕だけの判断ではできないでしょう」
「その件については、ローランドと相談する。今日のところはもういい。下がれ」
父から投げやりな態度をとられ、部屋から出て行った。
その後、辞令が降り、正式に王太子殿下の親衛隊に所属することになった。その知らせを持って、愛するコーネリアにプロポーズしに行ったのだった。
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