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王太子からの提案
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これはアレクセイが領地に出発する一週間前のこと。
王宮に呼び出しを受けたアレクセイは案内された部屋に入って驚いた。そこには錚々たる国の重臣がいたのだ。
何故こんなところに自分が呼ばれるのか分からない。
「ギャロット伯爵、かけてくれ」
声をかけて来たのは新王太子となったルイナード殿下だった。
「殿下、発言をお許し頂けるなら何故?私はこのような場所に呼ばれたのでしょうか」
「それをこれから説明しよう」
「まず君の御蔭で国の膿を切り取れた事に感謝したい。私の息子の親衛隊隊長に君を任命しようと考えている。君の能力は国中が知っている。誰も反対する者もいないし、次期王太子の側近として彼を守ってほしい。今回はその打診ともう一つは、今貴族の夫婦の在り方が大きく変わってきている。それは君たちの騒動があったからなのだが、国としても女性の地位向上を後押ししたい。そこで、模範となるのに君達が一番適任だということになったのだ」
「それはどういうことなのですか?」
突拍子もない事をいわれてアレクセイは戸惑いを見せながら、理解しようと必死の様子に兄のローランドが
「殿下、弟は今まで政治的な事には関与してなかったので、私から説明させていただいて宜しいでしょうか?」
「うむ。まかせる」
「では…」
ローランドはアレクセイ用に内容を分かりやすく噛み砕いて話した。
貴族法に新たに【一夫一妻制】を付け加え、愛人を持たない様に国が細かく法に記すというものだった。その内容は政略結婚であっても妻の意志を尊重し、夫が勝手に愛人を持つことを禁じ、妻も同様に夫に尽くす事を示した。
跡取りに恵まれない場合においても養子を迎えるか、別の女性を迎えるかは夫婦でよく話合う事を前提とし、法に基づいて司法代理人の立会のもと誓約書を国に提出して管理するというもの。
こんな事を提案したのには訳があり、アレクセイ達のことがきっかけで、『お飾り妻』の事実が発覚したのだ。貴族の1/3程が夫が妻を蔑にしたり、愛人が正妻を貶める行為に走ったりする報告が多く寄せられた。
しかもその多くは実家や嫁ぎ先で子供を作ることを強制され、精神的に追い詰められている者のも少なくなかった。こうしたことから、不妊に悩む女性や虐げられた女性への救済処置として今回、法が改正されることになったのである。
今回新たに『仮婚契約』というものが加わった。それは以前の『白い結婚』とは違い。お試し期間を設けるという意味なのだ。
まあ、『仮婚約』『仮結婚』ということなのだが、どちらも女性が嫁ぎ先に行き、ある一定の期間共に生活してみて、今後一生添い遂げられるのか否かをお互いに考慮するというもの。
これは今後増える可能性がある離婚率を少しでも下げる為の処置でもあり、若い世代の要望でもある。
現在、婚約中の若い世代から婚約者の浮気によって、婚約を結び直す申請で管轄部署が処理に追われている。
だからそのモデルケースにアレクセイ達が選ばれた。彼らが良き手本となって夫婦の在り方を示してくれれば、時代を担う貴族らも見習う様になるだろう。そして、これからの国の政治においても良い影響が出てくるという王妃の提案だった。
夫婦というものは不思議なもので長年連れ添うと相手に多少の愛情が生まれるもの。それは若い時の熱に浮かされたようなものではないが、側にいるのが当たり前という家族愛が芽生える。だからこそそういった感情が貴族には必要なのだ。それがないから国の政治も足の引っ張り合いで、前を向いていかない。皆が他人を妬み羨み嫉妬する。そうした感情が他人を貶めようとする悪意と変わり、国政を乱す原因を作っている。
アレクセイ達に期待を寄せるのは、彼らにはそんな感情がないからだ。人を陥れてでも欲しい物を手に入れようとする貪欲さが……。
「話は分かりましたが、実は私は騎士をやめようと思っているので、王子の親衛隊隊長は辞退したのです」
この言葉にその場にいた全員が言葉を失った。
アレクセイの言葉の真意とは。
王宮に呼び出しを受けたアレクセイは案内された部屋に入って驚いた。そこには錚々たる国の重臣がいたのだ。
何故こんなところに自分が呼ばれるのか分からない。
「ギャロット伯爵、かけてくれ」
声をかけて来たのは新王太子となったルイナード殿下だった。
「殿下、発言をお許し頂けるなら何故?私はこのような場所に呼ばれたのでしょうか」
「それをこれから説明しよう」
「まず君の御蔭で国の膿を切り取れた事に感謝したい。私の息子の親衛隊隊長に君を任命しようと考えている。君の能力は国中が知っている。誰も反対する者もいないし、次期王太子の側近として彼を守ってほしい。今回はその打診ともう一つは、今貴族の夫婦の在り方が大きく変わってきている。それは君たちの騒動があったからなのだが、国としても女性の地位向上を後押ししたい。そこで、模範となるのに君達が一番適任だということになったのだ」
「それはどういうことなのですか?」
突拍子もない事をいわれてアレクセイは戸惑いを見せながら、理解しようと必死の様子に兄のローランドが
「殿下、弟は今まで政治的な事には関与してなかったので、私から説明させていただいて宜しいでしょうか?」
「うむ。まかせる」
「では…」
ローランドはアレクセイ用に内容を分かりやすく噛み砕いて話した。
貴族法に新たに【一夫一妻制】を付け加え、愛人を持たない様に国が細かく法に記すというものだった。その内容は政略結婚であっても妻の意志を尊重し、夫が勝手に愛人を持つことを禁じ、妻も同様に夫に尽くす事を示した。
跡取りに恵まれない場合においても養子を迎えるか、別の女性を迎えるかは夫婦でよく話合う事を前提とし、法に基づいて司法代理人の立会のもと誓約書を国に提出して管理するというもの。
こんな事を提案したのには訳があり、アレクセイ達のことがきっかけで、『お飾り妻』の事実が発覚したのだ。貴族の1/3程が夫が妻を蔑にしたり、愛人が正妻を貶める行為に走ったりする報告が多く寄せられた。
しかもその多くは実家や嫁ぎ先で子供を作ることを強制され、精神的に追い詰められている者のも少なくなかった。こうしたことから、不妊に悩む女性や虐げられた女性への救済処置として今回、法が改正されることになったのである。
今回新たに『仮婚契約』というものが加わった。それは以前の『白い結婚』とは違い。お試し期間を設けるという意味なのだ。
まあ、『仮婚約』『仮結婚』ということなのだが、どちらも女性が嫁ぎ先に行き、ある一定の期間共に生活してみて、今後一生添い遂げられるのか否かをお互いに考慮するというもの。
これは今後増える可能性がある離婚率を少しでも下げる為の処置でもあり、若い世代の要望でもある。
現在、婚約中の若い世代から婚約者の浮気によって、婚約を結び直す申請で管轄部署が処理に追われている。
だからそのモデルケースにアレクセイ達が選ばれた。彼らが良き手本となって夫婦の在り方を示してくれれば、時代を担う貴族らも見習う様になるだろう。そして、これからの国の政治においても良い影響が出てくるという王妃の提案だった。
夫婦というものは不思議なもので長年連れ添うと相手に多少の愛情が生まれるもの。それは若い時の熱に浮かされたようなものではないが、側にいるのが当たり前という家族愛が芽生える。だからこそそういった感情が貴族には必要なのだ。それがないから国の政治も足の引っ張り合いで、前を向いていかない。皆が他人を妬み羨み嫉妬する。そうした感情が他人を貶めようとする悪意と変わり、国政を乱す原因を作っている。
アレクセイ達に期待を寄せるのは、彼らにはそんな感情がないからだ。人を陥れてでも欲しい物を手に入れようとする貪欲さが……。
「話は分かりましたが、実は私は騎士をやめようと思っているので、王子の親衛隊隊長は辞退したのです」
この言葉にその場にいた全員が言葉を失った。
アレクセイの言葉の真意とは。
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