婚約者は妹をご所望のようです…

春野オカリナ

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37.王宮からの呼び出し

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 カインデルからの急な告白の後、レスティーナはそのまま眠りについていた。

 翌朝、レスティーナがいつもと同じ時間に食堂に行くと、そこには見知った老人の姿がある。

 「ハウル大神官様…」

 「やあ、久しぶりだね。レスティーナ様」

 「どうしてここにいらっしゃるのです」

 「もう、この年だから王都に来るのもこれが最後だと思ってね。陛下に挨拶をと思ったんだが…」

 大神官の表情が曇っている。

 「実は、どうしてもレスティーナ様の力を借りなければならない事があるのだが、協力してもらえないだろうか」

 「私で良ければ…」

 「よかった。では食事が済んだら一緒に王城に行ってほしい」

 「王城にですか?」

 今レスティーナは妃教育を休ませてもらっている。
 
 まだ今はクロイツェルに会いたくないレスティーナも大神官からの要請では流石に断れない。

 渋々ながら、大神官と一緒に王城に行くことになったのだが、カインデルは急には登城できない。

 カインデルは神の加護を持っている所為か、一抹の不安が頭を掠めた。

 
  気のせいだ…。


 後日、その予感を甘く考えていたことを深く反省する事になる。

 レスティーナは、王宮に着くと大神官とは別に王妃の元に案内された。そこでレスティーナは、王妃グレイシスからクロイツェルが高熱を出して寝込んでいる事を聞かされた。

 クロイツェルを見舞う為に部屋に案内されると、そこには大神官の姿があった。どうやら、大神官がレスティーナに頼みたいこととは、クロイツェルの祈祷の補助の様だった。

 「レスティーナ様、殿下の手を握っていてもらえますか?貴女様には癒しの力が宿っていますので、殿下の苦痛を和らげることが出来るかと思います」

 「はい、大神官様」

 レスティーナは、大神官が指示した通りクロイツェルの手をぎゅっと握りしめていた。大神官が祈祷を始めるとクロイツェルの息が和らいでいくのが分かった。レスティーナもこれで一安心だとクロイツェルの寝台から離れようとした時だった。

 急に強い力で手首を握られ、クロイツェルの方に引き寄せられた。


 『決して逃しはしない』


 クロイツェルの口から別の声が聞こえた。他人とは思えないような…どちらかといえば今のクロイツェルの声よりトーンが低い。

 そして、また急にクロイツェルが苦しみだすと彼の身体から無数の糸の様な黒い束が広がって、レスティーナに襲い掛かって来た。

 大神官が祈祷を再び始めると、黒い塊の糸が悲鳴に似た声を上げて消えたのだが、レスティーナの手に撒き付いた糸が彼女の手に黒い痣を作った。

 そして、最後の糸が消え去ったと同時にクロイツェルの顔色も良くなったが今度はレスティーナがその場に倒れたのだ。

 すぐさまゲイルが呼ばれ、レスティーナを連れて公爵家に帰ったが、レスティーナの手に付けられた黒い痣がレスティーナを苦しめだした。

 レスティーナは高熱を出して、やり直し前の夢の中に落ちていく。

 そこは、過去のレスティーナが体験した苦しみと悲しみだけが詰まった世界だったのだ。

 
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