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ラストダンスは貴方と
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私は王太子殿下の手を取り、ホールの中心に向かって歩いていた。この国のラストダンスは『メヌエット』。しかし、躍動感のあるステップは踏まない。どちらかと謂うと大人しいゆっくりと歩きながらパートナーの動きに合わせて踊る。
だから、体の密着はない。静かな動きだが、相手との息が合わないと踊れない。最初の礼をお互いにして、手を顔の位置まで上げ重ねる様に足を運ぶ。私は辿々しい足取りで殿下の動きに合わせる。殿下もそんな私の体を気遣ってゆっくりと歩く速さで静かに踊る。
今のこの瞬間だけは世界は私だけの様な感覚。殿下を見つめているとかつての熱い思いが甦ってくる。
何故、目覚めたのだろう。目覚めるのならもっと早く目覚めたかった。半年前なら私はまだ殿下の婚約者でいられたのに。
自分でもどうしようもない感情の波が押し寄せてくる。最早周りの声も聞こえない。音楽すら聞こえない。お互いから目を話す事が出来ない程、見つめ合ったまま躍り続けた。
だから知らなかった。
ホールで私達を見つめながら貴族達が
「お似合いね」
「息がピッタリ合っている、なんて素敵なのかしら」
「やはり王太子殿下の隣は本物の社交界の女神が相応しい」
そう囁かれていることなど耳入らない程、お互いから目を離せなかった。
その静かな二人だけの世界を壊したのはローズだった。
「お、お腹が痛い、誰か助けてーっ」
悲鳴に似た甲高い声を上げた。そして、助けを求める声に誰もが注目していた。その声でハッと我に還える。
まだ私は、愚かにも過去に縋って囚われ続けている自分に気付いてしまった。
急いで殿下はローズの元に駆け寄ると、身を寄せて歩けない仕種をして、しなだれかかるローズの姿が目に入った。
殿下は急いで彼女を腕に抱いて、広間を出て行き、後に残った広間には、異様な雰囲気と困惑のする貴族らが取り残された。
四方八方から王太子妃に対する非難の声が上がっている。
私は両親に目を向けるといつもになくオロオロとしている様子が何だか可笑しかった。
そして、母はいつもの様にローズと殿下の後を追って行く、その姿を見て又、貴族達から
「無作法な上にまだ親離れが出来ていないのか」
「本当にあの王太子殿下を支えていけるのか」
「この国の未来が不安で仕方がない」
本音と嘲りが入り雑じった中で、国王陛下が夜会の終了の合図を促す。
私はユリウス様に連れられて、馬車に乗ると
「やはり君と殿下の息はピッタリだね。まるで比翼の鳥か連理の枝といった様だった。だが、これからは私とそうなって欲しい」
「申し訳ありません。あの場でお断りすれば良かったのです。そうすれば妹も…」
醜態を晒さずにすんだのに
私は続きの言葉を口に出来なかった。
「仕方がない。王太子の申し出を断れば咎められるからね。でも少し妬けたよ。相手が私なら良かったのにと思う位はね」
「そ…そうですか」
ユリウス様の言葉に私の顔が火照るのを感じながら馬車は静かに屋敷に向かって行く。
段々と王宮から離れて行く景色を見ながら、
私は一体何処に向かっているのだろう。
このままではいけない。皆が不幸になってしまう。どうすれば断ち切れるのか。
未だに心を捉えて離さない王太子殿下への思いを持て余していた。
だから、体の密着はない。静かな動きだが、相手との息が合わないと踊れない。最初の礼をお互いにして、手を顔の位置まで上げ重ねる様に足を運ぶ。私は辿々しい足取りで殿下の動きに合わせる。殿下もそんな私の体を気遣ってゆっくりと歩く速さで静かに踊る。
今のこの瞬間だけは世界は私だけの様な感覚。殿下を見つめているとかつての熱い思いが甦ってくる。
何故、目覚めたのだろう。目覚めるのならもっと早く目覚めたかった。半年前なら私はまだ殿下の婚約者でいられたのに。
自分でもどうしようもない感情の波が押し寄せてくる。最早周りの声も聞こえない。音楽すら聞こえない。お互いから目を話す事が出来ない程、見つめ合ったまま躍り続けた。
だから知らなかった。
ホールで私達を見つめながら貴族達が
「お似合いね」
「息がピッタリ合っている、なんて素敵なのかしら」
「やはり王太子殿下の隣は本物の社交界の女神が相応しい」
そう囁かれていることなど耳入らない程、お互いから目を離せなかった。
その静かな二人だけの世界を壊したのはローズだった。
「お、お腹が痛い、誰か助けてーっ」
悲鳴に似た甲高い声を上げた。そして、助けを求める声に誰もが注目していた。その声でハッと我に還える。
まだ私は、愚かにも過去に縋って囚われ続けている自分に気付いてしまった。
急いで殿下はローズの元に駆け寄ると、身を寄せて歩けない仕種をして、しなだれかかるローズの姿が目に入った。
殿下は急いで彼女を腕に抱いて、広間を出て行き、後に残った広間には、異様な雰囲気と困惑のする貴族らが取り残された。
四方八方から王太子妃に対する非難の声が上がっている。
私は両親に目を向けるといつもになくオロオロとしている様子が何だか可笑しかった。
そして、母はいつもの様にローズと殿下の後を追って行く、その姿を見て又、貴族達から
「無作法な上にまだ親離れが出来ていないのか」
「本当にあの王太子殿下を支えていけるのか」
「この国の未来が不安で仕方がない」
本音と嘲りが入り雑じった中で、国王陛下が夜会の終了の合図を促す。
私はユリウス様に連れられて、馬車に乗ると
「やはり君と殿下の息はピッタリだね。まるで比翼の鳥か連理の枝といった様だった。だが、これからは私とそうなって欲しい」
「申し訳ありません。あの場でお断りすれば良かったのです。そうすれば妹も…」
醜態を晒さずにすんだのに
私は続きの言葉を口に出来なかった。
「仕方がない。王太子の申し出を断れば咎められるからね。でも少し妬けたよ。相手が私なら良かったのにと思う位はね」
「そ…そうですか」
ユリウス様の言葉に私の顔が火照るのを感じながら馬車は静かに屋敷に向かって行く。
段々と王宮から離れて行く景色を見ながら、
私は一体何処に向かっているのだろう。
このままではいけない。皆が不幸になってしまう。どうすれば断ち切れるのか。
未だに心を捉えて離さない王太子殿下への思いを持て余していた。
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