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ユリウス視点
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ある日、王宮から急ぎの連絡が入った。
「王太子殿下からか…」
最近、殿下は情緒不安定だった。それもあの女狐のせいで。
事の起こりは、殿下が当時の婚約者であるサフィニア嬢に内緒で誕生日プレゼントをサプライズしようと計画したのがそもそもの誤りだ。相談するのなら側近の我々にすれば良かったのに、お世辞にも仲の良い姉妹とは言えない妹のローズマリアに相談していたから、不貞を疑われることになったのだ。
そして、あの転落事故が起こった。殿下は自責の念にかられて、暫く殿下は王太子妃の寝室に重体の彼女を寝かせて自ら世話をしながら、公務に専念していた。周りからは
「流石、王太子殿下は何事に置いても冷静沈着だ。例え婚約者がああなっても取り乱さない」
勝手にそう思い込んでいる。真実はいつこと切れるか分からない細い綱渡りをしている状態で、かろうじて生きているサフィニア嬢が傍にいることで精神を安定していた。周りはそんな殿下の心情を理解していなかった。常に重圧に耐えてきた殿下の心が狂ってしまうのを我々側近はどうすることも出来なかった。
そんな状態が2カ月たった頃、医師から状態が安定したから実家の公爵家に移してはどうかと提案された。勿論、殿下は反対されたが、いつ目覚めるとも分からない婚約者を切れと陛下に言われ、殿下は渋々、眠っている彼女を公爵家に還した。せめてその間だけでも彼女の傍にいたいと死んだように眠る彼女を抱いて馬車に乗り込んだ。何かあってはと私も同乗させてもらってはいたが、殿下は嬉しそうに、愛しい女性を抱いていた。その姿に背筋が凍るのを感じていた。
昔から彼女に異常な程の執着を見せていたが、ここまでとは思っていなかった。侍女や侍従から殿下が眠っているサフィニア嬢の寝台に同衾していることは聞いていたが、このまま彼女が目覚めなければどうなるのだろう。一抹の不安を抱えながら、馬車は公爵家の敷地に入り、公爵夫妻と女狐が出迎えた。女狐の殿下の見る目が変わった。まるで獲物を見る様な飢えた目をしていたのだ。
公爵がサフィニア嬢を代わって抱き上げようとすると
「このままでよい」
殿下はそれを拒んだ。渋々公爵は殿下を彼女の部屋に案内し、殿下は寝台に彼女をそっと寝かせた。
私が驚いたのは、彼女の部屋は女性の部屋よりもシンプルなものだった。そう必要最低限のものしか置いていなかった。ふと彼女の机の上に置かれている箱に目が留まった。彼女らしくない大きな箱に
「殿下、あれはなんでしょう」
彼女付きの侍女ラナに問うと
「これはお嬢様の宝物入れです。ご覧になりますか」
侍女が箱を開けると、殿下は愛しそうに箱の中身を確認した。
「ああ、サフィニア嬢はこんなものまで大切にしていたのだな」
殿下は中の物を一つずつ丁寧に確かめながら自身の思い出を辿っている様だった。
だが、公爵のいらぬ言葉が殿下の心に止めを刺した。
「殿下、残念ですが、ここへは来ない様にお願いします。いつ目覚めるか分からない娘のことは一刻も早くお忘れになり、先にお進み下さい。娘も臣下としてそう望んでいるでしょう」
「わ、分かった。一応換言はありがたくもらっておくよ。だが、婚約は続行する」
殿下の言葉には抑揚がなく言われた言葉に現実を突き付けられたのだろう。それが彼女と殿下の最後の別れとなった。
その後、あの女狐が婚約者に収まったのだが、更に殿下を苦しめる出来事が起きたのだった。
「王太子殿下からか…」
最近、殿下は情緒不安定だった。それもあの女狐のせいで。
事の起こりは、殿下が当時の婚約者であるサフィニア嬢に内緒で誕生日プレゼントをサプライズしようと計画したのがそもそもの誤りだ。相談するのなら側近の我々にすれば良かったのに、お世辞にも仲の良い姉妹とは言えない妹のローズマリアに相談していたから、不貞を疑われることになったのだ。
そして、あの転落事故が起こった。殿下は自責の念にかられて、暫く殿下は王太子妃の寝室に重体の彼女を寝かせて自ら世話をしながら、公務に専念していた。周りからは
「流石、王太子殿下は何事に置いても冷静沈着だ。例え婚約者がああなっても取り乱さない」
勝手にそう思い込んでいる。真実はいつこと切れるか分からない細い綱渡りをしている状態で、かろうじて生きているサフィニア嬢が傍にいることで精神を安定していた。周りはそんな殿下の心情を理解していなかった。常に重圧に耐えてきた殿下の心が狂ってしまうのを我々側近はどうすることも出来なかった。
そんな状態が2カ月たった頃、医師から状態が安定したから実家の公爵家に移してはどうかと提案された。勿論、殿下は反対されたが、いつ目覚めるとも分からない婚約者を切れと陛下に言われ、殿下は渋々、眠っている彼女を公爵家に還した。せめてその間だけでも彼女の傍にいたいと死んだように眠る彼女を抱いて馬車に乗り込んだ。何かあってはと私も同乗させてもらってはいたが、殿下は嬉しそうに、愛しい女性を抱いていた。その姿に背筋が凍るのを感じていた。
昔から彼女に異常な程の執着を見せていたが、ここまでとは思っていなかった。侍女や侍従から殿下が眠っているサフィニア嬢の寝台に同衾していることは聞いていたが、このまま彼女が目覚めなければどうなるのだろう。一抹の不安を抱えながら、馬車は公爵家の敷地に入り、公爵夫妻と女狐が出迎えた。女狐の殿下の見る目が変わった。まるで獲物を見る様な飢えた目をしていたのだ。
公爵がサフィニア嬢を代わって抱き上げようとすると
「このままでよい」
殿下はそれを拒んだ。渋々公爵は殿下を彼女の部屋に案内し、殿下は寝台に彼女をそっと寝かせた。
私が驚いたのは、彼女の部屋は女性の部屋よりもシンプルなものだった。そう必要最低限のものしか置いていなかった。ふと彼女の机の上に置かれている箱に目が留まった。彼女らしくない大きな箱に
「殿下、あれはなんでしょう」
彼女付きの侍女ラナに問うと
「これはお嬢様の宝物入れです。ご覧になりますか」
侍女が箱を開けると、殿下は愛しそうに箱の中身を確認した。
「ああ、サフィニア嬢はこんなものまで大切にしていたのだな」
殿下は中の物を一つずつ丁寧に確かめながら自身の思い出を辿っている様だった。
だが、公爵のいらぬ言葉が殿下の心に止めを刺した。
「殿下、残念ですが、ここへは来ない様にお願いします。いつ目覚めるか分からない娘のことは一刻も早くお忘れになり、先にお進み下さい。娘も臣下としてそう望んでいるでしょう」
「わ、分かった。一応換言はありがたくもらっておくよ。だが、婚約は続行する」
殿下の言葉には抑揚がなく言われた言葉に現実を突き付けられたのだろう。それが彼女と殿下の最後の別れとなった。
その後、あの女狐が婚約者に収まったのだが、更に殿下を苦しめる出来事が起きたのだった。
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