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王宮へ
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王宮からローズマリアの死を知らせる使者が
「今後の事を話す為に公爵と令嬢に王宮に来られるように命令書が出されております」
「分かりました。明日、伺いますと陛下にお伝え下さい」
父は私を再び執務室に呼ぶと
「王宮に明日、私と行くから準備をするように」
「何故、私も呼ばれるのでしょう」
「詳しい事情は知らされていない。ただこれが王命だということしか分からない。従うしかないのだ」
「畏まりました。では準備します」
私は別邸に帰り、クローゼットから喪服に近い色の衣装を選んだ。
「明日、王宮に行くことになったから、この衣装でお願いね」
次女のラナにそう伝えて、夕暮れ時の庭を散策しながら、またいつものブランコに座って、夕日を浴びて美しい花を眺めながら、ふと視線を塀の外にやった。
「まさか、気のせいだわ」
そんな言葉を紡ぎたくなる。私の心が作り出した幻覚を見たとしか思えない。
塀は外の景色が見えるように所々、円形の鉄格子が填め込まれている。そこからある人物が見えたのだ。こんな所にいるはずのない人物が……
私は目の錯覚だと信じたかった。出ないと私の妄想ではないかと。もう一度見るとその人影はもうなかった。
良かった、見間違えたのね。そうよね。彼がこんな所にいるはずがないもの。
浅ましい。妹が亡くなったのに彼が王太子殿下が私に会いに来るなんて在り得ない。あれは自分の心が見せた幻。
妹の顔を見ていないせいか、何処か他人事の様に感じる。
実感が湧かない。
本当に妹は亡くなったのだろうか?
そうなら、教会の弔いの鐘が鳴るはずなのに……
次々に疑問が浮かび上がっては消える。
兎に角、明日王宮に行けば何かわかるだろう。
私は、血の様な日が沈むのを見て何処か薄気味悪さを感じながら、屋敷に入っていった。
次の日、父と共に王宮に参内したが、父だけが陛下に呼ばれて向かった。一人取り残された私は、妹が使っていた王太子妃の部屋に案内された。
まだ片付けのされていない部屋は生前使用していたままの状態だった。主のいない部屋は閑散としており、そして居心地が悪かった。
ふと部屋の中の続き部屋への扉が目に留まった。その向こうは夫婦の寝室。
殿下と妹はこの部屋を使ったのだろうか?
胸が締め付けられる程、痛んでいる。苦しい。悲しい。様々な思いで苦しくなっていく。本来ならあの部屋を私が使うはずだった。見なければ良かった。
段々気分が悪くなる私は、蹲る様にその場に倒れ込んで意識を失った。
どのくらい経ったのだろう。目が覚めると知らない部屋の寝台に寝かされていた。
「ここは何処なのかしら?王宮にこんな部屋があるの?」
周りを見渡せば、そこは若い女性が住まうような部屋。明るい色のカーテンや壁紙・落ち着いた雰囲気の絨毯に寝台や家具は白を基調としたモダンなものばかり。
一体誰が使っていたのかしら。私の記憶にはこんな場所はなかった気がする。
考えれば考える程、分からなかった。
私が寝台から起き上がろうとした時、扉が開き二人の人間が入って来た。
一人はユリウス・デントロー公爵令息。
もう一人はジークレスト王太子殿下。
慌てて、私が挨拶をしようと寝台から立とうとすると、殿下に制止された。
「サフィニア嬢、そのままで構わない。まだ体調も万全ではないのだろう」
「殿下、申し訳ございません。直ぐに出て行きますので……」
私が立ち上がり、殿下に一礼した後、立ち去ろうとした瞬間、殿下に二の腕を掴まれた。
「で…殿下、何を……なさるのです」
「この部屋から出る事は許さない。君は一生この部屋で過ごすか、罪人として家門を潰すかの二択を与えよう。さあ、選ぶがいい。君の返答次第で、一族は救われもするし、滅びもする。君次第だ」
殿下の表情はかつての婚約者を見る目ではなく、今はこの国の王太子として私に接している。
しかし、私には殿下の意図するところが分からなかった。何故、こんな選択をさせるのか全く理解が出来ないでいたのだ。
「今後の事を話す為に公爵と令嬢に王宮に来られるように命令書が出されております」
「分かりました。明日、伺いますと陛下にお伝え下さい」
父は私を再び執務室に呼ぶと
「王宮に明日、私と行くから準備をするように」
「何故、私も呼ばれるのでしょう」
「詳しい事情は知らされていない。ただこれが王命だということしか分からない。従うしかないのだ」
「畏まりました。では準備します」
私は別邸に帰り、クローゼットから喪服に近い色の衣装を選んだ。
「明日、王宮に行くことになったから、この衣装でお願いね」
次女のラナにそう伝えて、夕暮れ時の庭を散策しながら、またいつものブランコに座って、夕日を浴びて美しい花を眺めながら、ふと視線を塀の外にやった。
「まさか、気のせいだわ」
そんな言葉を紡ぎたくなる。私の心が作り出した幻覚を見たとしか思えない。
塀は外の景色が見えるように所々、円形の鉄格子が填め込まれている。そこからある人物が見えたのだ。こんな所にいるはずのない人物が……
私は目の錯覚だと信じたかった。出ないと私の妄想ではないかと。もう一度見るとその人影はもうなかった。
良かった、見間違えたのね。そうよね。彼がこんな所にいるはずがないもの。
浅ましい。妹が亡くなったのに彼が王太子殿下が私に会いに来るなんて在り得ない。あれは自分の心が見せた幻。
妹の顔を見ていないせいか、何処か他人事の様に感じる。
実感が湧かない。
本当に妹は亡くなったのだろうか?
そうなら、教会の弔いの鐘が鳴るはずなのに……
次々に疑問が浮かび上がっては消える。
兎に角、明日王宮に行けば何かわかるだろう。
私は、血の様な日が沈むのを見て何処か薄気味悪さを感じながら、屋敷に入っていった。
次の日、父と共に王宮に参内したが、父だけが陛下に呼ばれて向かった。一人取り残された私は、妹が使っていた王太子妃の部屋に案内された。
まだ片付けのされていない部屋は生前使用していたままの状態だった。主のいない部屋は閑散としており、そして居心地が悪かった。
ふと部屋の中の続き部屋への扉が目に留まった。その向こうは夫婦の寝室。
殿下と妹はこの部屋を使ったのだろうか?
胸が締め付けられる程、痛んでいる。苦しい。悲しい。様々な思いで苦しくなっていく。本来ならあの部屋を私が使うはずだった。見なければ良かった。
段々気分が悪くなる私は、蹲る様にその場に倒れ込んで意識を失った。
どのくらい経ったのだろう。目が覚めると知らない部屋の寝台に寝かされていた。
「ここは何処なのかしら?王宮にこんな部屋があるの?」
周りを見渡せば、そこは若い女性が住まうような部屋。明るい色のカーテンや壁紙・落ち着いた雰囲気の絨毯に寝台や家具は白を基調としたモダンなものばかり。
一体誰が使っていたのかしら。私の記憶にはこんな場所はなかった気がする。
考えれば考える程、分からなかった。
私が寝台から起き上がろうとした時、扉が開き二人の人間が入って来た。
一人はユリウス・デントロー公爵令息。
もう一人はジークレスト王太子殿下。
慌てて、私が挨拶をしようと寝台から立とうとすると、殿下に制止された。
「サフィニア嬢、そのままで構わない。まだ体調も万全ではないのだろう」
「殿下、申し訳ございません。直ぐに出て行きますので……」
私が立ち上がり、殿下に一礼した後、立ち去ろうとした瞬間、殿下に二の腕を掴まれた。
「で…殿下、何を……なさるのです」
「この部屋から出る事は許さない。君は一生この部屋で過ごすか、罪人として家門を潰すかの二択を与えよう。さあ、選ぶがいい。君の返答次第で、一族は救われもするし、滅びもする。君次第だ」
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