【完結】この愛に囚われて

春野オカリナ

文字の大きさ
56 / 57

番外編~サフィニア~

しおりを挟む
 私の名前はサフィニア・ロンドウェル王国の王女として生まれた。

 父と母は生まれて直ぐに亡くなった。だから両親の顔は知らない。でも双子の兄ジェラルドがいるから寂しくない。

 侍女や教育係は私が失敗すると、直ぐに同じ名前の公爵令嬢を引き合いに出して、私を貶める。

 「かの公爵令嬢は、王女様くらいの頃はもっと御出来になられましたよ」

 私の出来が悪いのは母クロアの所為だといっているようなものだ。でも、私は知っている。母クロアと公爵令嬢は同じ人だという事を。

 憧れのユリウス様の後を付けた時に、彼が呟いていたのを見たのだ。母のドレスに口付けしながら。

 だから私にもチャンスはある。だって、顔は瓜二つなんですもの。必ず、手に入れてみせる。他の女性には渡さない。彼は私だけのものよ。

 だって、こんなに母に生き写しで生まれたのには意味があるのよ。

 きっと、神様が彼を幸せにしてあげてという意味なのよ。

 私は勝手に解釈して、盛り上がっていた。成人すれば彼が振り向いてくれると、だからこっそりユリウス陛下の寝所に忍び込んだ。既成事実さえできれば私と結婚してくれると。

 「王女の気持ちはありがたいのですが、私は貴方の父上と同じ年です。父親への思慕と恋情を勘違いなさっておいでの様なのでなかったことにします」

 そうきっぱり断られた。そのショックで私は自分が何のために生まれたのかを見失ったのだ。

 その日から食事も喉を通らなくなり、早く死んでしまいたいと思うくらいだった。

 段々痩せ細って行く私に、兄が囁く。

 「そんなに彼がいいのか?他にも齢の誓い令息も大勢いるのに」

 呆れた様に問い掛ける兄を睨みながら

 「どうしても彼でないと嫌なの。お願いお兄さま何とかして」

 何度も頼むうちに私は、ベッドから起き上がれない程、体を悪くした。

 即位した兄が最初に臣下に下した命は

 「ユリウス・エイバン大公に王妹サフィニアを降嫁させる」

 そう告げた。

 例え、ユリウス様が未だに母を想っていてももう母はいない。それに生きていてもあの執念深い父は死ぬまで母を手放さない。
 
 だって、生まれたばかりの我が子より母と死ぬ事を選んだ人だもの。

 ふふ、ああ早く月日が経って、私は純白のウエディングドレスに身を包みながら、愛するユリウス様と愛の誓いをする日を心待ちにしていた。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

『紅茶の香りが消えた午後に』

柴田はつみ
恋愛
穏やかで控えめな公爵令嬢リディアの唯一の楽しみは、幼なじみの公爵アーヴィンと過ごす午後の茶会だった。 けれど、近隣に越してきた伯爵令嬢ミレーユが明るく距離を詰めてくるたび、二人の時間は少しずつ失われていく。 誤解と沈黙、そして抑えた想いの裏で、すれ違う恋の行方は——。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

処理中です...