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番外編~サフィニア~

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 私の名前はサフィニア・ロンドウェル王国の王女として生まれた。

 父と母は生まれて直ぐに亡くなった。だから両親の顔は知らない。でも双子の兄ジェラルドがいるから寂しくない。

 侍女や教育係は私が失敗すると、直ぐに同じ名前の公爵令嬢を引き合いに出して、私を貶める。

 「かの公爵令嬢は、王女様くらいの頃はもっと御出来になられましたよ」

 私の出来が悪いのは母クロアの所為だといっているようなものだ。でも、私は知っている。母クロアと公爵令嬢は同じ人だという事を。

 憧れのユリウス様の後を付けた時に、彼が呟いていたのを見たのだ。母のドレスに口付けしながら。

 だから私にもチャンスはある。だって、顔は瓜二つなんですもの。必ず、手に入れてみせる。他の女性には渡さない。彼は私だけのものよ。

 だって、こんなに母に生き写しで生まれたのには意味があるのよ。

 きっと、神様が彼を幸せにしてあげてという意味なのよ。

 私は勝手に解釈して、盛り上がっていた。成人すれば彼が振り向いてくれると、だからこっそりユリウス陛下の寝所に忍び込んだ。既成事実さえできれば私と結婚してくれると。

 「王女の気持ちはありがたいのですが、私は貴方の父上と同じ年です。父親への思慕と恋情を勘違いなさっておいでの様なのでなかったことにします」

 そうきっぱり断られた。そのショックで私は自分が何のために生まれたのかを見失ったのだ。

 その日から食事も喉を通らなくなり、早く死んでしまいたいと思うくらいだった。

 段々痩せ細って行く私に、兄が囁く。

 「そんなに彼がいいのか?他にも齢の誓い令息も大勢いるのに」

 呆れた様に問い掛ける兄を睨みながら

 「どうしても彼でないと嫌なの。お願いお兄さま何とかして」

 何度も頼むうちに私は、ベッドから起き上がれない程、体を悪くした。

 即位した兄が最初に臣下に下した命は

 「ユリウス・エイバン大公に王妹サフィニアを降嫁させる」

 そう告げた。

 例え、ユリウス様が未だに母を想っていてももう母はいない。それに生きていてもあの執念深い父は死ぬまで母を手放さない。
 
 だって、生まれたばかりの我が子より母と死ぬ事を選んだ人だもの。

 ふふ、ああ早く月日が経って、私は純白のウエディングドレスに身を包みながら、愛するユリウス様と愛の誓いをする日を心待ちにしていた。
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