【完結】この愛に囚われて

春野オカリナ

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番外編~ジェラルド~

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 僕には双子の妹がいる。両親は僕達が生まれた時に亡くなった。

 そう聞いているが、本当は心中したんだ。侍女達がこそこそ話しているのを聞いてしまった。

 僕たちは王家特有の銀髪で妹は母譲りの青い目を持って生まれた。この国の人間にはない色だティエリティー皇国特有の瞳。

 母に生き写しの妹を見ているだけで癒される。僕は父親似で妹は僕を見ても何とも思わないようだ。

 妹は物心ついた時から、父替わりだった王太子ユリウス殿下に夢中だ。本当に腹が立つ。僕と同じ銀髪で父によく似た男の人。

 昔は父と見分けがつかない程で、髪を黒く染めていたらしい。

 兎に角、美男子なのに未だに妃を待たない。その理由は、僕に王位を譲る為だと言っている。でも本当は今でも彼には愛する人がいる。父とユリウス殿下の想い人。

 サフィニア・ミシェルウィー公爵令嬢。

 『幸薄き悲劇の令嬢』として観劇の題目にまでなっている女性だ。母に瓜二つの彼女は父の最初の婚約者。事故で一年眠ったままだったのに、目覚めたら妹が父と結婚していて、その妹が亡くなった時にはユリウス殿下と婚約していた。領地に帰る時、崖から馬車が転落して亡くなった。

 父が母と結婚したのは、その女性と瓜二つだったからだと言われている。完璧な淑女の見本のような女性で、未だに彼女を知る人は、同じ名前のその人と比べるのだ。死んだ母を引き合いに出して。

 でも僕は知っている。父とユリウス殿下が結託して、母を生かしたことを、母クロアは本当はサフィニア・ミシェルウィーだったという事を。

 偶然ユリウス殿下が離宮に行く姿を見て、後を付けた事があるんだ。そこには父が残した母の肖像画や彼女の遺品と言うべきものがコレクションの様に飾っている。

 今も生きているかの様に部屋は常に清潔に保たれていた。

 そこに、かつて母が着ていたウエディングドレスも飾っていた。ユリウス殿下はそのドレスの裾を持ちながら

 「私の愛しいサフィニア」

 そう呟いていた。きっと今も母を愛しているのだろう。

 妹が14才のデビュタントを迎えた日、

 「私、ユリウス陛下と結婚したい」
 
 そう言い出した。何度も止めたのだが、妹は意固地になって陛下の寝所まで夜這いのような行動まで起こした。

 さすがに噂になると、妹を諌めたら、次は自殺未遂まで引き起こす。とうとう、僕も折れて即位後、初めての王命で妹をユリウス大公に娶せたのだ。

 結局、僕は妹に甘い。

 あの母に似た瞳を潤ませながら

 「この世で大切なお兄さま。私の願いを叶えて欲しいの」

 そう言われれば、何でも叶えてしまいそうになる。嫌になる。何で僕らは双子に生まれたのだろう。

 別の家に生まれれば、僕の方が妹を幸せに出来るのに。

 ついていない。

 大公の年齢からしたら、間違いなく妹は寡婦になる。その時が来たら、僕はあの離宮に妹を閉じ込めよう。

 他の誰にも見せない。僕だけの小夜啼鳥ナイチンゲールなのだから。


 早く、その日が来るのが楽しみだ。
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