夢から醒めた令嬢は幸せになった

春野オカリナ

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偽りの友情

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 「ごきげんよう。カレンデュラ嬢」

 「ごきげんよう。リゼット嬢」

 きたきたきた。

 BGMに破滅の音を鳴らしながら、軽やかな足取りで私に近付いてきたのはリゼット・ガーベナ伯爵令嬢。

 夢の中でラナネ亡き後、その後釜に座った女。

 何も知らない私は、この女に騙されて、領地の片隅で死ぬことになったんだ。

 今まで親切な友人だと思っていたが、よくよく考えるとおかしなことばかり。

 彼女の服装や髪型、趣味に至るまで、ラナネにそっくり。よくぞここまで話し方や仕草まで真似ることができるものだと感心してしまう。

 最初から彼女の目的は明確で、アイゼンを手に入れ、未来の公爵夫人に収まることだった。

 バッカみたい!

 私は学園で親切にしてくれる彼女を信じていたのに…。結局は彼女に手によって破滅させられた。2人が蜜月を楽しんでいたころ、夢の中の私は流行り病で身すぼらしい小屋でひっそりと誰にも孤独に死んでいった。

 愚かな恋愛脳が生み出した幻想にしがみついていたなんて、ほんと馬鹿よね。

 私は頭の中で悪態を付きながら、彼女に優雅な微笑みを返した。

 「今日は……」

 きょろきょろと周辺を見渡す姿はまるで盗人みたい。

 流石、泥棒令嬢だ。他人のものを盗むのが得意なだけはある。その特技を以てしてもラナネには敵わないのに…。

 清純そうな容姿と強かな演技力で、他人の恋路を何度も邪魔した。お邪魔虫。 

 私は、その執念に本気で感心した。

 私の傍にお目当てのアイゼンがいないことにがっくりと肩を落とした。

 あ~あ、こんなに分かりやすいのに…私はなんて鈍感だったのだろう。

 3年間の学園生活を返してほしい。

 アイゼンがいない私に関心が薄れたのか。別の子息にちょっかいを掛けに立ち去った。

 ああ良かった。疫病神が立ち去って、今日は私の厄日かと思ったよ。

 私が教室に入ると直ぐに担任の教師が入ってきて、卒業証書を皆に手渡した。

 特別卒業式があるわけではない。ただの学園の終了日ということだけだ。本番は今夜の記念パーティーにある。

 今夜から卒業生は本格的に貴族社会の中に入っていく。

 だから、身分の格差に気をつけなければならない。

 今夜は特にだ。

 昔、ある国では婚約破棄を大々的にパーティーでやらかした王子がいたそうだ。そのせいでどの国も卒業パーティーという場に警戒をしている。

 浮かれた者が後先考えずにやらかすのを恐れて。




 私は屋敷に帰ると直ぐにリサにドレスに着替えさせられ、夕刻デュエルのエスコートで王宮に急いだ。

 王宮に着いた私が一番の目にしたのは、きれいに盛り付けされた料理の数々だった。

 朝、少し食べただけでほとんど何も食べていない…。お腹が鳴く声を聴きながら、早く始まればいいのにと心で呟いた。

 壇上に立っている第二王子ウィザードが怪訝そうな顔をして私を凝視している。

 私は何か不備があるのかと自分の衣装を確認した。でも不審な点はなかった。

 「ねえ…なんであんなに第二王子は私を見ているのかな?」

 「さあ…?なんでだろうな」

 隣のデュエルにもわからないという。

 デュエルは第二王子の側近候補。その彼も知らないというなら、気のせいだと思うことにした。

 しかーし、ことは私が思っているほど単純なものではなかったのだ。

 それを知ったのは王宮から帰った後の事だった。

 まだ屋敷ではアイゼンとラナネの誕生会が賑やかに開かれていた。

 
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感想 2

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みんなの感想(2件)

ジャムおばさん

続き読みたいです。

解除
sanzo
2025.07.03 sanzo

朴発思想に

勃発しそうに

かな?
チョット笑った🤣

解除

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