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アリスティア編
どこかで
馬車の停留所に着くまでに私達は、何人かの学生に声を掛けられた。
「先生、さようなら。あれ、見かけない人と一緒なんですね。もしかして先生の恋人ですか?」
気軽に声をかけて来たのは、ゴシップ好きと噂されている伯爵令嬢だった。
「レスト伯爵令嬢。個人のプライバシーだから答えないよ。もう遅いから早く帰りなさい」
手をひらひらさせながら、先生は彼女から私を隠す様に背を向けている。
だが、被っていた上着から、私の赤い髪が見え隠れしている事に、私は気が付かなかった。
馬車で先生は私の気を紛らわす様に色々な話をしてくれた。それは聞いたこともない異国のものだったりもした。
彼を見ていると何故か懐かしい誰かを思い出しそうになるが、でも記憶が途切れて思い出せない。母に関する事だったような気がする。
だから、思い出そうとすると息苦しくなる。
今はまだその時ではないのだろう。きっといつか母との事も笑って話せる様になることを信じたい。
馬車は公爵家の前で停まり、楽しいお喋りの時間も終わりを告げた。
これから先は、私にとって鬼の棲む家も同然なのだから。ふうっと一息入れて
「先生、送って下さって有難うございます」
お礼を言って屋敷へ重い足取りで歩いて行った。もう日は沈んで辺りには暗闇で覆われている。
屋敷に帰り、再度入浴を済ませた私を、待っていたかの様に父が呼ぶ。
いつもの様に八つ当たりをされるのだ。
「エリーゼから聞いた。昼食を一緒に摂るのを嫌がっているそうだな。これ以上私の娘を悲しませるな!その赤い髪も二度と私の前で晒すことを禁じる!その髪を見ているだけで、あの女を思い出す。お前の母親をな!用が終わったなら、ささっと出て行け!」
父は怒鳴るだけ怒鳴って私を部屋から追い出した。
折角、先生に貰った元気は今にも窄んで無くなってしまいそうになっていく。
部屋に帰ると侍女のユーリが簡単に摘める食事を用意してくれていた。
「ありがとう。やっと一息入れられる」
「お嬢様。またあの人に何か言われたのですか?」
「いつものお説教よ。昼食をエリーゼと摂らなかった事を咎められただけよ」
「無神経にも程があります。嫌われている自覚がないのでしょうか」
「さあ、どうかしら。貴族社会に入って間もないし、本当の貴族でないからデビュタントにも出ていない。なのに皆あの子に夢中になって行くの。おかしな話よね。まるで魔法の様に……」
この世界には魔法は存在しない。昔はあったらしいけど、今はない。失われたのだ。
今日は色々な事があった。嬉しい事にクラスメイトは私の味方の様だった。先生も送ってくれた。泣いてる私を宥めてくれた大きな手が温かかった。
私は早めの寝支度を済ませて、ベットに横になって考えていた。
自分の手を見ながら、私の手より大きな男の手を思い出していた。
どうせなら先生の様な人が婚約者なら良かったのに。そうすれば私をここから出してくれるかもしれない。
そんな馬鹿な事を考えながら眠りについた。
しかし翌日、学院は大変な騒ぎとなっていた。
『午前0時のシンデレラ』が学園の生徒だという噂のせいで。
噂のお蔭で、私も無関係ではいられなくなったのだった。
「先生、さようなら。あれ、見かけない人と一緒なんですね。もしかして先生の恋人ですか?」
気軽に声をかけて来たのは、ゴシップ好きと噂されている伯爵令嬢だった。
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手をひらひらさせながら、先生は彼女から私を隠す様に背を向けている。
だが、被っていた上着から、私の赤い髪が見え隠れしている事に、私は気が付かなかった。
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彼を見ていると何故か懐かしい誰かを思い出しそうになるが、でも記憶が途切れて思い出せない。母に関する事だったような気がする。
だから、思い出そうとすると息苦しくなる。
今はまだその時ではないのだろう。きっといつか母との事も笑って話せる様になることを信じたい。
馬車は公爵家の前で停まり、楽しいお喋りの時間も終わりを告げた。
これから先は、私にとって鬼の棲む家も同然なのだから。ふうっと一息入れて
「先生、送って下さって有難うございます」
お礼を言って屋敷へ重い足取りで歩いて行った。もう日は沈んで辺りには暗闇で覆われている。
屋敷に帰り、再度入浴を済ませた私を、待っていたかの様に父が呼ぶ。
いつもの様に八つ当たりをされるのだ。
「エリーゼから聞いた。昼食を一緒に摂るのを嫌がっているそうだな。これ以上私の娘を悲しませるな!その赤い髪も二度と私の前で晒すことを禁じる!その髪を見ているだけで、あの女を思い出す。お前の母親をな!用が終わったなら、ささっと出て行け!」
父は怒鳴るだけ怒鳴って私を部屋から追い出した。
折角、先生に貰った元気は今にも窄んで無くなってしまいそうになっていく。
部屋に帰ると侍女のユーリが簡単に摘める食事を用意してくれていた。
「ありがとう。やっと一息入れられる」
「お嬢様。またあの人に何か言われたのですか?」
「いつものお説教よ。昼食をエリーゼと摂らなかった事を咎められただけよ」
「無神経にも程があります。嫌われている自覚がないのでしょうか」
「さあ、どうかしら。貴族社会に入って間もないし、本当の貴族でないからデビュタントにも出ていない。なのに皆あの子に夢中になって行くの。おかしな話よね。まるで魔法の様に……」
この世界には魔法は存在しない。昔はあったらしいけど、今はない。失われたのだ。
今日は色々な事があった。嬉しい事にクラスメイトは私の味方の様だった。先生も送ってくれた。泣いてる私を宥めてくれた大きな手が温かかった。
私は早めの寝支度を済ませて、ベットに横になって考えていた。
自分の手を見ながら、私の手より大きな男の手を思い出していた。
どうせなら先生の様な人が婚約者なら良かったのに。そうすれば私をここから出してくれるかもしれない。
そんな馬鹿な事を考えながら眠りについた。
しかし翌日、学院は大変な騒ぎとなっていた。
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