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アリスティア編
私の秘密
先生に公爵家に送ってもらい帰ると、エントランスホールで家令のセバスが私を慌てて出迎えた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「お嬢様。公爵様がお越しです。直ぐに支度をして執務室まで来るようにとの指示です」
「分かりました。直ぐに行きます」
「あの、そちらの方は…」
「学院の薬草学の教授です。私を送って下さったの」
「そうですか。わざわざありがとうございます」
「すまないが、公爵が王都にお戻りなら、挨拶をしたいのだが」
「畏まりました。覗ってきますので、少々お待ち下さい」
セバスと先生は祖父の執務室に早足で向かった。私は言われた通り、着替えて祖父の執務室に向かう途中で父に出会ってしまった。
面倒な人間に会ってしまった。
「この間、言ったはずだ。お前の母親を思い出させるその髪を見せるなと、私の言いつけが聞けないのか!流石、あのアデライトの娘なだけある。どこまで、私を縛り付け、苦しませ続ければ気が済むのだ」
「そんなつもりはありません」
私の否定的な言葉に逆上した父の手が近くに感じた時には遅かった。
バシッ!!
鉄の味がするのと同時に背中に鈍い痛みが走った。
父に殴られた拍子に、私は階段の手すりの柱で背中をぶつけたのだ。
侍女達の悲鳴と従僕達が次の攻撃に移ろうとしている父を抑えている。
騒ぎを聞きつけて、愛人と連れ子が私の前に出て
「何をなさっているのです。お父様」
「どけ、今日こそはあのアデライトの亡霊に目にもの見せてやるのだ」
最早、父の目には私の姿は映っていない。彼には自分に執着し続けた妻にしか見えていないのだろう。
私を足で踏みつけようとした瞬間、父の体は宙を舞った。
「女性にこんな無体な事をして、貴方は貴族としてのプライドも捨ててしまったのですか?」
庇って、父を殴ったのは先生だった。
それと同時に私の頭の記憶の扉が開くのを感じた。痛い、母の事を思い出そうとすると痛むあの痛み。
次々と走馬灯の様に私の頭の中を忘れていた記憶が甦る。
そして、五才の時に父に言った言葉を私は大声で叫んだ。
「貴方は、私の父ではない!偽物の癖に堂々と公爵家に居座って、お母様を悲しませた。さっさと出て行きなさい!薄汚い娼婦の女とその連れ子を連れて!」
その場にいた全員が私を見て驚いている。中でも一番驚いているのは父だった。まさか、再び同じ言葉を浴びせられると思わなかったのだろう。
その後、私は再び頭痛がして、その場に倒れ込んだ。
次の日、私は前日遭った出来事を忘れていた。祖父は医師を呼んで私を診察させたが体に問題はないことがわかり、普通に学院に行ったのだ。
違っている事は、私の容姿だろう。
「おはよう。どうしたの?アリス、その姿は」
「ええ、何だか今朝はすっきりして今まで、容姿を気にしていたのが馬鹿らしくなったんです」
「そ…そうなんだ」
アイリーン様は不思議そうに私を見ている。道行く人も振り返ってでも見ている。
そんなに私がおかしいのだろうか?
試験を受ける為に学院に登校している私を。
自分の事なのに何だか自分の事ではないような気持ちがしていた。
試験が終わり、私は温室に寄ってみたが、先生の姿がない。
昨日の出来事は朝、セバスと侍女から聞いていた。だからお礼が言いたかったのに。
私は、停留所まで歩いて行った。途中何人かの男子生徒に声を掛けられそうになったが、護衛が行く手を阻んでくれている。
『堂々としている君は美しい』
あれは誰が言ったのだろう。母の元に時々、訪れていた少年が幼い私に言っていたような気がする。
公爵家に帰ると祖父が待ち構える様に出迎えてくれた。
「今日は何事もなかったか?」
「試験を受けただけですので、特に何もありませんでした」
「昨日の事は思い出したか?」
「思い出せませんが、学院生活には支障はないのでしょう。お医者様も無理に思い出さなくても構わないと仰っていたではありませんか」
「うむ、そ…そうだったな」
「それより、家の中が静かですね。誰かいたような気がしたのですが」
「もう忘れたままでいなさい。後は約束通り私達が始末をつける。お前がこんなになるまで放って置いた私が悪かった」
祖父が何に対して謝っているのか分からない私はきょとんとしていた。
それから何事もなく一週間が過ぎたのだが、ケロイド様によって私の記憶の扉は再び開く事になるのだった。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「お嬢様。公爵様がお越しです。直ぐに支度をして執務室まで来るようにとの指示です」
「分かりました。直ぐに行きます」
「あの、そちらの方は…」
「学院の薬草学の教授です。私を送って下さったの」
「そうですか。わざわざありがとうございます」
「すまないが、公爵が王都にお戻りなら、挨拶をしたいのだが」
「畏まりました。覗ってきますので、少々お待ち下さい」
セバスと先生は祖父の執務室に早足で向かった。私は言われた通り、着替えて祖父の執務室に向かう途中で父に出会ってしまった。
面倒な人間に会ってしまった。
「この間、言ったはずだ。お前の母親を思い出させるその髪を見せるなと、私の言いつけが聞けないのか!流石、あのアデライトの娘なだけある。どこまで、私を縛り付け、苦しませ続ければ気が済むのだ」
「そんなつもりはありません」
私の否定的な言葉に逆上した父の手が近くに感じた時には遅かった。
バシッ!!
鉄の味がするのと同時に背中に鈍い痛みが走った。
父に殴られた拍子に、私は階段の手すりの柱で背中をぶつけたのだ。
侍女達の悲鳴と従僕達が次の攻撃に移ろうとしている父を抑えている。
騒ぎを聞きつけて、愛人と連れ子が私の前に出て
「何をなさっているのです。お父様」
「どけ、今日こそはあのアデライトの亡霊に目にもの見せてやるのだ」
最早、父の目には私の姿は映っていない。彼には自分に執着し続けた妻にしか見えていないのだろう。
私を足で踏みつけようとした瞬間、父の体は宙を舞った。
「女性にこんな無体な事をして、貴方は貴族としてのプライドも捨ててしまったのですか?」
庇って、父を殴ったのは先生だった。
それと同時に私の頭の記憶の扉が開くのを感じた。痛い、母の事を思い出そうとすると痛むあの痛み。
次々と走馬灯の様に私の頭の中を忘れていた記憶が甦る。
そして、五才の時に父に言った言葉を私は大声で叫んだ。
「貴方は、私の父ではない!偽物の癖に堂々と公爵家に居座って、お母様を悲しませた。さっさと出て行きなさい!薄汚い娼婦の女とその連れ子を連れて!」
その場にいた全員が私を見て驚いている。中でも一番驚いているのは父だった。まさか、再び同じ言葉を浴びせられると思わなかったのだろう。
その後、私は再び頭痛がして、その場に倒れ込んだ。
次の日、私は前日遭った出来事を忘れていた。祖父は医師を呼んで私を診察させたが体に問題はないことがわかり、普通に学院に行ったのだ。
違っている事は、私の容姿だろう。
「おはよう。どうしたの?アリス、その姿は」
「ええ、何だか今朝はすっきりして今まで、容姿を気にしていたのが馬鹿らしくなったんです」
「そ…そうなんだ」
アイリーン様は不思議そうに私を見ている。道行く人も振り返ってでも見ている。
そんなに私がおかしいのだろうか?
試験を受ける為に学院に登校している私を。
自分の事なのに何だか自分の事ではないような気持ちがしていた。
試験が終わり、私は温室に寄ってみたが、先生の姿がない。
昨日の出来事は朝、セバスと侍女から聞いていた。だからお礼が言いたかったのに。
私は、停留所まで歩いて行った。途中何人かの男子生徒に声を掛けられそうになったが、護衛が行く手を阻んでくれている。
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あれは誰が言ったのだろう。母の元に時々、訪れていた少年が幼い私に言っていたような気がする。
公爵家に帰ると祖父が待ち構える様に出迎えてくれた。
「今日は何事もなかったか?」
「試験を受けただけですので、特に何もありませんでした」
「昨日の事は思い出したか?」
「思い出せませんが、学院生活には支障はないのでしょう。お医者様も無理に思い出さなくても構わないと仰っていたではありませんか」
「うむ、そ…そうだったな」
「それより、家の中が静かですね。誰かいたような気がしたのですが」
「もう忘れたままでいなさい。後は約束通り私達が始末をつける。お前がこんなになるまで放って置いた私が悪かった」
祖父が何に対して謝っているのか分からない私はきょとんとしていた。
それから何事もなく一週間が過ぎたのだが、ケロイド様によって私の記憶の扉は再び開く事になるのだった。
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