【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ

文字の大きさ
18 / 52
アリスティア編

新しい私

 ルミエル様とケロイド様の言い争いは続いていた。

 「アリス、気分はどう?」

 「ありがとう。エミリー。もう大分落ち着いたわ」

 「えっ、もしや記憶が……」

 「ええ、さっき殆どの記憶が戻ったわ。今まで私とお友達でいてくれてありがとう。これからも宜しくね」

 「ほ…本当に、私が誰か解るのね。嬉しい、これからは一緒に夜会にも行けるし、お泊り会も出来るのね」

 「ええ、そうよ。もう気弱で、人の目を避けていた私じゃあない。私は公爵令嬢アリスティア・クロムウェル。かつて救国の英雄と呼ばれたこの国の第二王子マクシミアン殿下の末裔よ」

 「凄いわ。どうやって思い出したの?何がきっかけ」

 私達が盛り上がっている姿を見て、ルミエル様とケロイド様も言い争いを止めている。

 「一体、何が遭ったんだ。具合は大丈夫なのか」

 「もう平気です。ルミエル様。今まで親切にして下さりありがとうございます」

 「えっ、僕が誰だか解るのか?」

 「はい、もう頭の中の靄も無くなりました。今は何だかすっきりしています」

 「そ…そうか。それは良かった」

 「だから、ルミエル様もローラン様もエミリーもリーンも皆、好きな人と結ばれて下さい。私にはずっと慕っている方がいるので、今晩祖父に告げます」

 「じゃあ、もう心は決まったんだな」

 「はい、ご心配をおかけしました」

 そう、ルミエル様はエミリーナ様と、ローラン様はアイリーン様と想い合っていた。私が誰を選ぶか分からなかったから二組の婚約は保留となっている。

 私が選ぶ相手は決まっている。

 母がお茶会にも出席できなくなってから、よく公爵家に見舞いに来ていた人。

 レイラン王弟殿下。

 この学院の薬草学の教授。ライザス・ルクド。ルクドは彼の母方の伯爵家姓。ライザスはミドルネームなのだ。

 「それにしても貴女が『午前0時のシンデレラ』だったなんて、殿下方も酷いですわ。一言言ってくれても良かったでしょうに」

 「仕方ないよ。色々騒がれると厄介事が増えるからね。今だってそうだろう。なあ、ケロイド君。もういい加減にしないか?それとも警備の者を呼んで一晩牢屋で過ごせば気がすむのか?」

 「なんだと、いくら公爵家の人間だって言っていいことと…」

 「そこまでだ!君達は何をしているんだ。他の生徒の邪魔になるだろう。早く家に帰りなさい」

 「ええ、何故先生がここにいるんです?暫く帰ってこれないんじゃあ……」

 「ああ、あれはもっと前に書いて渡してあったんだが、君が今日受け取るとは思わなかった」

 「そうですか。でも戻られてホッとしています。レイラン王弟殿下・・・・・・・・

 「き…記憶が戻ったのか?全部?」

 「全てではないけれど、殆ど戻っています」

 「では、無駄足になったのかな」

 「先生そちらの方は?」

 「ああ、隣国の心理学の医師でロイド・メッシ―博士だ。この国に学会の発表で来られていると聞いて、訪ねて君を見てもらおうと思ったんだが、一足遅かったか」

 先生の隣に銀縁眼鏡の長身の男性がいた。その瞳は射抜くように私を見つめていたのだ。

 「すみません。先生」

 私は先生の後ろにいたケロイド様に

 「ケロイド様、貴方が何をなさろうと、どんな噂を流そうが私は正真正銘のクロムウェル公爵家の嫡子です。一週間後にその事実をご自分の目でお確かめ下さい。それではごきげんよう」

 私は綺麗な礼をして、自分の馬車に乗った。先生とメッシ―博士と共に帰宅したのだ。
感想 89

あなたにおすすめの小説

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

【完結】祈りの果て、君を想う

とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。 静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。 騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。 そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、 ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。 愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。 沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。 運命ではなく、想いで人を愛するとき。 その愛は、誰のもとに届くのか── ※短編から長編に変更いたしました。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。