【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ

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アデライト編

双子と公女

 あれは、私アデライト・クロムウェルが8才の誕生日、親類筋のブリュッセル伯爵が双子の兄弟ローフェルとオーウェンと一緒にやってきた。

 「ようこそ、伯爵。彼らが例の子たちなのかい」

 「そうです。ほら、公爵閣下にご挨拶しないか」

 「初めまして閣下。ローフェル・ブリュッセルです。本日はお招きに預かりまして光栄です」

 「初めまして閣下。オーウェン・ブリュッセルです。今日はお招きに預かりましてありがとうございます」

 「アデライト。お前も挨拶しなさい」

 父に促されて、私は二人に挨拶した。

 「初めまして、アデライト・クロムウェルです。今日で8才になりました」

 父と伯爵は仕事の話があるからと、子供同士で親睦を深めなさいと言われたが、体の弱かった私は、あまり同世代の子供と遊んだ経験がなく、何を喋ってたらいいのか解らなかった。

 オーウェンとローフェルは双子だが、性格は真反対で、ローフェルは落ち着いたちょっと大人の雰囲気が漂う近寄りがたい感じの男の子。

 オーウェンは逆に誰にでも打ち解ける社交的な男の子で、二人は見かけの美しさから女の子が群がっていた。

 父から二人が婚約者候補だ言われ、子供だった私は取っ付き難いローフェルよりもオーウェンと一緒にいる事が多くなり、何時しか彼が婚約者に選ばれることを望んでいた。

 三人で中庭を散歩していても私が具合が悪くなると、いつも付き添っていたのはオーウェンで、ローフェルは知らない間に使用人を呼んできてくれた。

 子供の頃の私はオーウェンが私を守る騎士の様に思えて淡い初恋となった。だがそれは、子供の狭い視野での事。
 
 見えている物だけが全てだった愚かしい私の思い違いだと気付いたのは、17才となり、社交界に出るようになってからだ。

 二人とは子供の頃に3年ほど一緒だったが、後の6年は会うことはなかった。再会が果たされたのは、6年後のある夜会でのことだった。

 二人が会場に現れると場が一気に華やかになり、注目を集めていた。人目を引く容姿からか、どこにいても目立つので人だかりが出来ていた。

 私は、久しぶりに会った二人を懐かしく思ったが、向こうはそうではなかったようで、婚約者候補だというのに中々声をかけてこない。

 そのうち、夜会が終了する頃に

 「久しぶりだね。アデライト嬢。もう帰るのかい。それなら送っていくよ」

 声をかけてきたのはローフェルだった。オーウェンは他の令嬢や令息に囲まれて会話を楽しんでいるようだ。私には気が付いていないのかもしれない。

 オーウェンを気にしていると

 「アデライト嬢。オーウェンは付き合いが広いんだ。あまり気にしない方がいい」

 そう言って、慰めているようにも聞こえた声は落ち着いている。

 公爵家の馬車までくると

 「君に何かあっては公爵家の一大事だからね。屋敷まで送るよ」

 彼はそう言って、一緒に同乗して送ってくれた。

 それからもローフェルは、私が参加せざるを得ない夜会やパーティーに顔を出しては送る様になった。

 社交界ではクロムウェル公爵令嬢は、ローフェル・ブリュッセル伯爵令息と恋仲だと噂される様になる程。

 しかし、まだ体に不安のある私の婚約は先延ばしされ、誰とも婚約を結ぶことなく3年の月日が流れた。

 その間、友人のキャスリンは王太子殿下と結婚し、既に王子を出産していた。

 気が付けば私は21才になっていた。
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