【完結】わたしの婚約者には愛する人がいる

春野オカリナ

文字の大きさ
46 / 52
ローフェル編

別れ

 デビュタントの日が近づいたが、相変わらずアリスティアは自分の容姿を嫌っている。

 私は義父である公爵に、遠縁の者だと紹介してもらい、部厚い眼鏡を付けてエスコートして会場入りした。

 既に私達が用意したドレスと装飾品は王宮の一室に運び込んでいる。王妃殿下と王子達とも話が出来ている。

 王族方への挨拶が終わった後、娘とファーストダンスを踊った。その後、壁の華のように静かに身を潜めているアリスティアを王子達が上手く連れ出してくれた。

 部屋で着替えて王子にエスコートされて出てきたアリスティアはかつてのアデライトの様で美しかった。

 一瞬で全ての人の注目を集め、その日の話題の人となった。午前0時の鐘と共に私と帰る途中、レイラン殿下がアリスティアと話をしようと追いかけて、靴が片方脱げてしまい。『午前0時のシンデレラ』と噂されることになる。

 時々、あの時の殿下の慌てようがおかしくて、揶揄う様に言うと「自分こそ長い間、娘に忘れていたくせに」と痛い所を突かれている事は、後々の話。

 アデライトが娘の為にドレスを造っても、ちっとも着てくれないとぼやいていたことも内緒だ。

 だから、アリスティアのドレスはいつもこっそり、持ち込んで、王妃殿下の指示で着替えさせられている。

 勿論、その都度エスコートは、私がしているのだが。

 アリスティアは覚えていない。いつか思い出した時に伝えればいい。

 そして、見事な髪飾りはランナの工房で作った物だ。これがきっかけで、彼女の工房は大きくなって公爵家の持つ商会の装飾品は彼女の工房が一手に担ってくれることになる。

 デビュタントでの様子を私はアデライトに話して聞かせた。もうこの頃の彼女は弱っていて、寝たり起きたりを繰り返していた。ベッドの傍らで彼女の寝顔に顔を近づけて、生きている事を確認するのが日課の様になっていた。

 アリスティアが学院に入学すると私は護衛としてついて行った。その際の仮の婚約者のケロイドの態度を見て何度殴ってやりたいと思ったかしれない。

 ランナの夫はガラス工芸の職人で、彼に頼んである物を作ってもらった。それは目の色を変えるガラスだ。普段は眼鏡を変えて色の変化を隠しているが、何れ必要になる。私は彼に何度も試作品を作ってもらっていた。

 この頃には、アリスティアはアデライトに変わって執務をこなしていた。公に私が手伝う訳にもいかず、苦労をさせている娘を不憫に思っている。

 そして、とうとう恐れていたことが起こった。

 アリスティアが17才を迎える春のある日、アデライトの容態が急変した。

 彼女はアリスティアを傍に呼び、まるで何かを予測していたように

 「アリスティア、17才の誕生日に呪いは全て解けるわ。罪は罪人に還るでしょう」

 そう言い残し、私には自分が死んだ後、アリスティアを頼むと涙を流しながらこの世を去って行った。

 最後に

 「貴方に会えて、妻でいられて幸せだった」

 そう言い残して。

 葬儀の最中に義父から

 「これから起こる事に君の手を汚す必要はない。アデライトの意志だ。全てあの子が計画した事だ」

 そして、それはアリスティアが17才の誕生日に起こる。そう伝えられた。

 オーウェンは葬儀にも顔を出さないで、アデライトが亡くなって3か月後にあのマリエルとエリーゼを伴って、わが物顔で公爵家に帰って来た。

 そして、それはアリスティアの幸せな時間を壊す結果となったのだ。

 
感想 89

あなたにおすすめの小説

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた

由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。 彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。 真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、 ただ一人、守るべきものを守り抜いた。 それは、愛する人の未来のための選択。 誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。 悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。

❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」 「大丈夫ですの? カノン様は。」 「本当にすまない。ルミナス。」 ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。 「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」 カノンは血を吐いた。

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

【完結】祈りの果て、君を想う

とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。 静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。 騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。 そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、 ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。 愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。 沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。 運命ではなく、想いで人を愛するとき。 その愛は、誰のもとに届くのか── ※短編から長編に変更いたしました。

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。