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それぞれの結末
ケロイド
俺が初めてアリスティアに会った時、公爵家の娘とは思えない程、おどおどとした態度にイライラさせられた。
しかも地味な衣装に髪の色も茶色。顔立ちは良く見れば整っているが、正直好みでない。
両親から何れ彼女のご機嫌を取っておけば俺の将来は明るい物になると言われた。
でも、こんな女にどんな価値があると言うんだ。貴族の令嬢らしからぬ地味な女に。
俺からしたら、こんな女のお守り役を押し付けられて辟易していた。そんな時に、エリーゼが現れた。
まるで、俺を地獄から救い出す天使のような容姿に一目惚れし、毎日彼女会いたさに公爵家を訪れている。
彼女が時々、口走る「私の母は赤い髪をしているの」という言葉は、公爵家の正当な後継ぎだと思わせる言葉だった。
この国の貴族なら誰でも知っている。クロムウェル公爵家の人間は皆、赤い髪をしている事を。
だから、それを聞いた連中はきっと勝手に自分の都合のいいように考えたはずだ。
もしかしたら、クロムウェル公爵の隠し子がエリーゼの母親で、彼女は市井で育った公爵令嬢とか、赤子の時に取り換えられたのでは等と想像していただろう。
俺もそうであればと自分に言い聞かせていた。
その思い込みがいつしか本物になり、俺は都合のいいように解釈していた。自分の婚約者はエリーゼで、いつか彼女がアリスティアの代わりに公爵家を継ぐものだと妄信していたのだ。
そんな事が在り得ない事は自分が一番知っている。
アリスティアが本当は赤い髪の『午前0時のシンデレラ』だという事も……。
学院でも俺はアリスティアよりもエリーゼを優先した。
絶対に手に入れる事の出来ないアリスティアよりも、簡単に手に入るエリーゼといる方が楽で楽しいに決まっている。
だが、所詮母親の私生児だ。公爵家に籍を入れていない彼女は貴族学院では浮いていた。夜会やお茶会にも呼ばれない影の様な存在。
可愛そうなのはその容姿が人より目に付く事だ。だから男どもは寄ってくる。しかし、伯爵以上の家柄の令息・令嬢はエリーゼの素性を知っている。
高位貴族からは相手にされていなかった。彼女が俺に執着しているのは、俺の家柄と容姿だけ。そんな事は既に知っている。
彼女が見かけとは違って腹黒い事も。
だが、それでも良かった。俺を選んでくれた事が嬉しかったんだ。だから、彼女の母親と一緒に罰を受けた時に修道院から帰ったら、彼女と結婚して公爵家には拘らない人生を送ろうと、アリスティアにこれまでの事を謝罪し、レイラン殿下に頭を下げて、商会に入れてもらった。
侯爵家から勘当された俺は平民だ。同じ平民同士なら上手くやれる。
それにレイラン殿下から真面目に働いたら商会の株分けで、自分の店を持たせてやると言われて、俺は懸命に働いた。
そんな何年か経った頃、エリーゼが修道院から帰ってくると知らせが俺の元に届いたのだが、エリーゼが知らせてきた内容に俺は驚いた。
アリスティアを陥れて、自分が公爵家を乗っ取るという内容だった。それに俺も加担しろと書いて寄越した。
なんて事だ。戒律の厳しい修道院で反省することもなく、まだアリスティアに危害を加えようとしている。
それも俺を巻き込んで。
こんな女と結婚して、人並みの幸せを手に入れようなんて俺は本当に馬鹿だった。
アリスティアという高嶺の花が手に入れられないから、エリーゼを望んだ俺に、彼女は追い打ちをかけて来た。
これが俺への罰なのだ。俺もエリーゼも幸せになれない。公爵家の赤い呪縛に囚われたままでは。
俺はレイラン殿下にその手紙を証拠として渡し、二度と公爵家に近付かないと制約して隣国に旅立った。
レイラン殿下が隣国に留学していた時に知り合ったという伝手を紹介してもらい隣国に渡った。
エリーゼとはあれ以来連絡を取っていない。
噂では男爵が新しい美しい奥方を貰ったと聞いたが、それがエリーゼだといいなと茫然と考えていた。
その男爵家はとても裕福で代々慈善家としても有名だから。
そんな家に嫁げばきっとエリーゼも過去を忘れて幸せになれるだろう。
俺も公爵家から逃れて、最近はなんとか独り立ちをした。
同僚だった今の妻とも何とか上手くやっている。貴族だった所為か。物言いや仕種が堅苦しいと言われるが、もうすぐ初めての子供も生まれる。
こんな俺が父親になれるとは思わなかったが、この子は俺の様な人間にならない様にしっかりと育てよう。
いずれ機会があれば、俺の更生に協力してくれたレイラン殿下にお礼の言葉を伝えたい。
今日も一日、俺は妻の尻に敷かれながら、馬車馬の如く働くのだった。
そして、元自国の方を見ながら、俺のかつての婚約者アリスティアの幸せを願っている。
俺の所為で、ますます地味な装いが止められなかった壁の華だった君に。
どうかこれからはレイラン殿下といつまでも幸せな日々を過ごして欲しいと。
しかも地味な衣装に髪の色も茶色。顔立ちは良く見れば整っているが、正直好みでない。
両親から何れ彼女のご機嫌を取っておけば俺の将来は明るい物になると言われた。
でも、こんな女にどんな価値があると言うんだ。貴族の令嬢らしからぬ地味な女に。
俺からしたら、こんな女のお守り役を押し付けられて辟易していた。そんな時に、エリーゼが現れた。
まるで、俺を地獄から救い出す天使のような容姿に一目惚れし、毎日彼女会いたさに公爵家を訪れている。
彼女が時々、口走る「私の母は赤い髪をしているの」という言葉は、公爵家の正当な後継ぎだと思わせる言葉だった。
この国の貴族なら誰でも知っている。クロムウェル公爵家の人間は皆、赤い髪をしている事を。
だから、それを聞いた連中はきっと勝手に自分の都合のいいように考えたはずだ。
もしかしたら、クロムウェル公爵の隠し子がエリーゼの母親で、彼女は市井で育った公爵令嬢とか、赤子の時に取り換えられたのでは等と想像していただろう。
俺もそうであればと自分に言い聞かせていた。
その思い込みがいつしか本物になり、俺は都合のいいように解釈していた。自分の婚約者はエリーゼで、いつか彼女がアリスティアの代わりに公爵家を継ぐものだと妄信していたのだ。
そんな事が在り得ない事は自分が一番知っている。
アリスティアが本当は赤い髪の『午前0時のシンデレラ』だという事も……。
学院でも俺はアリスティアよりもエリーゼを優先した。
絶対に手に入れる事の出来ないアリスティアよりも、簡単に手に入るエリーゼといる方が楽で楽しいに決まっている。
だが、所詮母親の私生児だ。公爵家に籍を入れていない彼女は貴族学院では浮いていた。夜会やお茶会にも呼ばれない影の様な存在。
可愛そうなのはその容姿が人より目に付く事だ。だから男どもは寄ってくる。しかし、伯爵以上の家柄の令息・令嬢はエリーゼの素性を知っている。
高位貴族からは相手にされていなかった。彼女が俺に執着しているのは、俺の家柄と容姿だけ。そんな事は既に知っている。
彼女が見かけとは違って腹黒い事も。
だが、それでも良かった。俺を選んでくれた事が嬉しかったんだ。だから、彼女の母親と一緒に罰を受けた時に修道院から帰ったら、彼女と結婚して公爵家には拘らない人生を送ろうと、アリスティアにこれまでの事を謝罪し、レイラン殿下に頭を下げて、商会に入れてもらった。
侯爵家から勘当された俺は平民だ。同じ平民同士なら上手くやれる。
それにレイラン殿下から真面目に働いたら商会の株分けで、自分の店を持たせてやると言われて、俺は懸命に働いた。
そんな何年か経った頃、エリーゼが修道院から帰ってくると知らせが俺の元に届いたのだが、エリーゼが知らせてきた内容に俺は驚いた。
アリスティアを陥れて、自分が公爵家を乗っ取るという内容だった。それに俺も加担しろと書いて寄越した。
なんて事だ。戒律の厳しい修道院で反省することもなく、まだアリスティアに危害を加えようとしている。
それも俺を巻き込んで。
こんな女と結婚して、人並みの幸せを手に入れようなんて俺は本当に馬鹿だった。
アリスティアという高嶺の花が手に入れられないから、エリーゼを望んだ俺に、彼女は追い打ちをかけて来た。
これが俺への罰なのだ。俺もエリーゼも幸せになれない。公爵家の赤い呪縛に囚われたままでは。
俺はレイラン殿下にその手紙を証拠として渡し、二度と公爵家に近付かないと制約して隣国に旅立った。
レイラン殿下が隣国に留学していた時に知り合ったという伝手を紹介してもらい隣国に渡った。
エリーゼとはあれ以来連絡を取っていない。
噂では男爵が新しい美しい奥方を貰ったと聞いたが、それがエリーゼだといいなと茫然と考えていた。
その男爵家はとても裕福で代々慈善家としても有名だから。
そんな家に嫁げばきっとエリーゼも過去を忘れて幸せになれるだろう。
俺も公爵家から逃れて、最近はなんとか独り立ちをした。
同僚だった今の妻とも何とか上手くやっている。貴族だった所為か。物言いや仕種が堅苦しいと言われるが、もうすぐ初めての子供も生まれる。
こんな俺が父親になれるとは思わなかったが、この子は俺の様な人間にならない様にしっかりと育てよう。
いずれ機会があれば、俺の更生に協力してくれたレイラン殿下にお礼の言葉を伝えたい。
今日も一日、俺は妻の尻に敷かれながら、馬車馬の如く働くのだった。
そして、元自国の方を見ながら、俺のかつての婚約者アリスティアの幸せを願っている。
俺の所為で、ますます地味な装いが止められなかった壁の華だった君に。
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