見捨てられて死にかけたけど、美少女吸血鬼に眷属にして貰えて吸血鬼として生き延びた?ので見捨てた奴らに復讐します。

Kooily

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1.吸血鬼

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 へし折られた右腕、感覚が無い両足。
 嘘だろ…この血、全部僕から? …まさか、このまま死んでしまうのか?

「た、助けてくれ!」

 誰も居ないのか? 後ろから援護してくれるって言ってたのに!

「可哀想ね貴方。」

 どことなく無機質で冷たい声だ。それに魔物の割には透き通った声をしている。

「貴方は仲間に置いて行かれたのよ。」

 いや…、いやいやいやそんな訳ない! きっと、隙を伺っているだけだ。

「何を泣いているの。仲間に置い──」

「黙れ! 吸血鬼めッ!」

 リリスが僕のことを置いてくわけないんだ。仲間なんだから。……仲間なんだからッ!

 ぐっ、視界がぼやけて…。
 それになんだか…、暖かい…。

「可哀想ね。ちょっと同情しちゃったわ。」

 意識が…うっ…………。

「…仕方ないから助けてあげる。」


◇□◇□◇□◇


「私はリリス! よろしくね。カリムくん。」

 僕が初めて彼女に出会って思った事、それは──

「可愛い…。」

 思わず、そう口から漏れ出た。そして、それに気が付かないほど、彼女に見とれていた。

「え?」

 この彼女の反応を見て、やっと自分がおかしくなっているということに気が付いた。

「あっ。ご、ごめんなさい。急に変なことを言っ──」

「嬉しいわ。ありがとう。」

 初めてだった。人に「ありがとう」なんて言われた事は。
 赤髪の僕は人からよく嫌われる。何故なら、赤髪は元奴隷の証。敗戦国の血族だという差別の象徴だからだ。
 そんな僕が初めて人に感謝された。本当に嬉しかった。

 そしてもう一つ初めての出来事が起きた。目から涙が溢れて止まらなかったのだ。今まで、殴られて泣いた事は数え切れないほどある。でも、そんなものとは違う初めて流す涙だった。

「ど、どうしたのカリムくん。」

 そんな風な出会いだった。あれから二週間しか経っていない。のに、とても濃密な時間を過ごして来た。リリスと過ごした日々は、生まれてから一番楽しかった。

 …帰ったら、リリスとまたご飯でも食べに行きたいな。


◇□◇□◇□◇


 うぅ…。今のは…、夢か。
 ここは…さっきの洞窟か?
 あれ? 腕が、それに足も何事も無かったみたいに治ってる。

「あら、目が覚めたのね。」

 聞き覚えのある冷たい声だ。まさか…吸血鬼ッ?! このままじゃ殺される!
 何かないか!? …手元に刃折れの剣が落ちている。これで、何とか戦えるかもしれない。

「吸血鬼めッ!」

「それは…、自己紹介かしら。」

 は? 何を言ってるんだあの吸血鬼。
 いや、油断するな。さっきは負けたが今は勝つぞ。

「喰らえッ!……ぐッ!」

 攻撃されたのか…? 見えなかった…。

「私の眷属が私に勝てる訳ないじゃない。」

「それは、どういう意味だ!」

 眷属…眷属…? まさか、僕は…。

「そのままの意味なのだけれど。貴方は吸血鬼になったのよ。私が貴方の血を吸ってね。」

 僕は…、吸血鬼なんかに…なってしまったのか…?
 いや…そんなの──

「嘘だッ!!」

「嘘じゃないわただの事実よ。」

 吸血鬼に身を落とすくらいなら、いっその事この剣で死んで…ッ!!

「ダメよ。」

 剣が…いつの間に取られた…?

「返せッ!」

「返したら、貴方死のうとするでしょ。死にかけてた所を折角助けてあげたのに。」

 助けてあげただと…?

「お前が僕のことを半殺しにしたんだろッ! それを何が助けてあげただ。恩着せがましい吸血鬼がッ!」

「あら記憶違いかしら。先に襲ってきたのはそっちだった気がするのだけれど。殺す気で来たのだから殺されても文句は言えないのではないかしら。
 そこをわざわざ助けてあげたというのに、やっぱり人間は浅ましくて図々しいのね。」

 …何も言い返せない事に余計腹が立つ。

「まあいいわ。とりあえず、落ち着くまでこの部屋でじっとしてなさい。」

「落ち着くまで…? 目の前にいる相手に殺されかけて、勝手に眷属にされ──」

 最後までは言えなかった。吸血鬼に唇を摘まれてしまったのだ。

「そういう所よ。」

 その時、初めてその吸血鬼の顔を見た。
 …とても美しかった…。
 それに、とてもいい匂いが…。

 いや、いやいや何を考えてるんだ。まだ諦めないぞ、僕は人間なんだ。
 こんな場所からさっさと逃げ出して、そして、リリスとまた……ご飯を食べに行くんだ。
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