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32.蝕み
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「ふん♪ふふーん♪ レミィの毒は世界一♪」
『毒か。簡単に解毒されそうだがな。』
「馬鹿な人間には無理でーす♪ それに、毒ならなんでもかんでも魔術で解毒出来る訳じゃないのです。そもそも、毒と一口に言っても、血液を凝固させる毒とか、炎症を起こさせる毒とか色々あるのですよ。モチのロン、それらそれぞれの毒によって対処も解毒方法も変わるのです。それに、レミィ特性の毒の解毒剤を白紙から作るなんて、天才でも無理なのです。」
『凄い自信だな。で、その後はどうするんだ? 解毒したら反撃されるだろ?』
「レミィは馬鹿じゃないのですよ。カリムさんの症状は一生緩和させ続けて、一生飼うのです。そうすればカリムさんは一生レミィの物です。」
『なるほど。なら、シエルキューテはどうするつもりなんだ?』
「カリムさんの命と引き換えって事で死んでもらうのです。あの女馬鹿だから口車に乗って勝手に死んでくれるのですよ。」
『…まあ、そうかもしれんな。』
◇□◇□◇□◇
「まず、王城内にて1名。首元を裂かれ死亡していました。
次に、塔の崩落。巻き込まれた重軽症者併せて約40名、死亡者9名です。
最後に、ダンジョン出入口で出没した吸血鬼の暴走。軽症者も重症者も居ませんが死亡者は6名、いずれも即死です。それだけでなく、行方不明者も1名居るようです。
その後、吸血鬼は森に逃げ込む様子が目撃されており、現在も総力を挙げ捜索中です。
以上で報告は終了です。それでは、私は失礼致します。アルマ様。」
「…そうか。」
最初に接敵した時点で仕留められた筈だ。隙なら幾度となくあった。…だから油断したのかもな。
考えれば考える程に後悔が頭を過る。
カリム…、奴は俺が絶対に捕まえる。そして、処刑台の上で懺悔させなくては、死んだ者達が報われない。
…またノックか。今度は誰だ?
「アルマ様、夜分遅くに申し訳ございません。少し宜しいでしょうか。奥様がお呼びです。」
「奥様?」
婚約なんてしてたか? というか、俺の部屋だって言われて案内されたが、勝手も知らないから他人の家みたいで落ち着かないんだよな。
「あ、いえ、失礼しました。シルフィア様がお呼びです。」
「名前を聞き返した訳じゃ無いんだが…、まあ案内してくれ。」
シルフィア。俺が目覚めた時、隣に居た女性だったな。脱がした事を怒ってるのかな…。〇対百で俺が悪いから何も言い返せない…。
「到着致しました。では、私は失礼致します。アルマ様。」
この扉の先か。気が思いやられるが、行くしかないか…。
「いらっしゃいましたか。アルマ様、そこへ座ってください。」
座ってって言われたが…椅子なんか無いぞ。…もしや床に座れと…。
俺以外に三人か。どれも女性だが、この人達にもまた俺なんかやらかしたのかな。
「単刀直入に言うわ。アルマ様、貴方は記憶喪失よ。」
「記憶喪失? いやいや、んな訳ねぇぜ。自分の名前だってはっきりしてるんだからな。」
「…失礼ですが、鏡は見ましたか?」
「いや見てないな。見た所でハンサムガイしか写ってないだろうしな。」
シルフィアは指を鳴らして使用人を呼び付け、手鏡を持って来させる。その手鏡は俺に手渡された。
…って…あれ、俺なんか老けてね?
「私の事を微塵も覚えていないと言うことは、少なくとも20年間の記憶は消えている筈です。鏡を見た時、自分が老けたとでも思ったのでしょう。」
超図星だ。丁度そう思ってた。
…というか、まじに記憶喪失なのか…?
「えっと、って事は…シルフィアさんと俺はまじに婚約してるのか。」
「はい。」
「じゃあ、その横の二人は誰なの?」
あれよく見ると、一人は面影があるな…。もしや…
「…セナか?」
「え、えぇ。…そうだけど。」
やっぱりセナか、なんだか嬉しそうだな。
「しっかし、セナも老け……ぐふっ。」
グーパンを腹に入れられた。手加減が無い、優しさと甘さを過去に置き忘れたタイプのグーパンだ。
「せ、セナさん…。いえ、セナ様はどうしてここに。」
「やっぱり忘れてるのね。婚約してる事。」
「え? でも、シルフィアと俺が婚約してるんじゃないの?」
「だから、シルフィア様とも私とも婚約してんのよ。お前。」
「な、なんて不誠実なんだ。もしや、セナ様は婚約してる俺に無理やり婚約をせがんで……ぐふっ。」
「いや、求婚したのお前な。」
痛い…。涙が出そうだ…。なんで誰もこの暴君を止めてくれないんだ? なんでニコニコ行く末を見守っているんだ?
「『俺と結婚してくれるまでここを離れない』って言ってさ、朝から押し掛けて、金で両親買収して、無理やり言い寄ったのお前な。」
「金で買収なんて、さ、最低だ。なんて最低なゴミ屑……ぐふっ。」
おかしい…昔はもっと天使みたいに優しかった筈なのに…、何が彼女をここまで狂わせたんだ。
『毒か。簡単に解毒されそうだがな。』
「馬鹿な人間には無理でーす♪ それに、毒ならなんでもかんでも魔術で解毒出来る訳じゃないのです。そもそも、毒と一口に言っても、血液を凝固させる毒とか、炎症を起こさせる毒とか色々あるのですよ。モチのロン、それらそれぞれの毒によって対処も解毒方法も変わるのです。それに、レミィ特性の毒の解毒剤を白紙から作るなんて、天才でも無理なのです。」
『凄い自信だな。で、その後はどうするんだ? 解毒したら反撃されるだろ?』
「レミィは馬鹿じゃないのですよ。カリムさんの症状は一生緩和させ続けて、一生飼うのです。そうすればカリムさんは一生レミィの物です。」
『なるほど。なら、シエルキューテはどうするつもりなんだ?』
「カリムさんの命と引き換えって事で死んでもらうのです。あの女馬鹿だから口車に乗って勝手に死んでくれるのですよ。」
『…まあ、そうかもしれんな。』
◇□◇□◇□◇
「まず、王城内にて1名。首元を裂かれ死亡していました。
次に、塔の崩落。巻き込まれた重軽症者併せて約40名、死亡者9名です。
最後に、ダンジョン出入口で出没した吸血鬼の暴走。軽症者も重症者も居ませんが死亡者は6名、いずれも即死です。それだけでなく、行方不明者も1名居るようです。
その後、吸血鬼は森に逃げ込む様子が目撃されており、現在も総力を挙げ捜索中です。
以上で報告は終了です。それでは、私は失礼致します。アルマ様。」
「…そうか。」
最初に接敵した時点で仕留められた筈だ。隙なら幾度となくあった。…だから油断したのかもな。
考えれば考える程に後悔が頭を過る。
カリム…、奴は俺が絶対に捕まえる。そして、処刑台の上で懺悔させなくては、死んだ者達が報われない。
…またノックか。今度は誰だ?
「アルマ様、夜分遅くに申し訳ございません。少し宜しいでしょうか。奥様がお呼びです。」
「奥様?」
婚約なんてしてたか? というか、俺の部屋だって言われて案内されたが、勝手も知らないから他人の家みたいで落ち着かないんだよな。
「あ、いえ、失礼しました。シルフィア様がお呼びです。」
「名前を聞き返した訳じゃ無いんだが…、まあ案内してくれ。」
シルフィア。俺が目覚めた時、隣に居た女性だったな。脱がした事を怒ってるのかな…。〇対百で俺が悪いから何も言い返せない…。
「到着致しました。では、私は失礼致します。アルマ様。」
この扉の先か。気が思いやられるが、行くしかないか…。
「いらっしゃいましたか。アルマ様、そこへ座ってください。」
座ってって言われたが…椅子なんか無いぞ。…もしや床に座れと…。
俺以外に三人か。どれも女性だが、この人達にもまた俺なんかやらかしたのかな。
「単刀直入に言うわ。アルマ様、貴方は記憶喪失よ。」
「記憶喪失? いやいや、んな訳ねぇぜ。自分の名前だってはっきりしてるんだからな。」
「…失礼ですが、鏡は見ましたか?」
「いや見てないな。見た所でハンサムガイしか写ってないだろうしな。」
シルフィアは指を鳴らして使用人を呼び付け、手鏡を持って来させる。その手鏡は俺に手渡された。
…って…あれ、俺なんか老けてね?
「私の事を微塵も覚えていないと言うことは、少なくとも20年間の記憶は消えている筈です。鏡を見た時、自分が老けたとでも思ったのでしょう。」
超図星だ。丁度そう思ってた。
…というか、まじに記憶喪失なのか…?
「えっと、って事は…シルフィアさんと俺はまじに婚約してるのか。」
「はい。」
「じゃあ、その横の二人は誰なの?」
あれよく見ると、一人は面影があるな…。もしや…
「…セナか?」
「え、えぇ。…そうだけど。」
やっぱりセナか、なんだか嬉しそうだな。
「しっかし、セナも老け……ぐふっ。」
グーパンを腹に入れられた。手加減が無い、優しさと甘さを過去に置き忘れたタイプのグーパンだ。
「せ、セナさん…。いえ、セナ様はどうしてここに。」
「やっぱり忘れてるのね。婚約してる事。」
「え? でも、シルフィアと俺が婚約してるんじゃないの?」
「だから、シルフィア様とも私とも婚約してんのよ。お前。」
「な、なんて不誠実なんだ。もしや、セナ様は婚約してる俺に無理やり婚約をせがんで……ぐふっ。」
「いや、求婚したのお前な。」
痛い…。涙が出そうだ…。なんで誰もこの暴君を止めてくれないんだ? なんでニコニコ行く末を見守っているんだ?
「『俺と結婚してくれるまでここを離れない』って言ってさ、朝から押し掛けて、金で両親買収して、無理やり言い寄ったのお前な。」
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おかしい…昔はもっと天使みたいに優しかった筈なのに…、何が彼女をここまで狂わせたんだ。
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