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スカーレット様の言葉に、お兄さまとファウストが気分を害したのはすぐにわかりました。
お兄さまは生まれながらの公爵家嫡男、ファウストは通常運転がお人形ですから、見た目はいつもどおりのように見えますけれど、わたくしはさすがに家族だからわかります。
スカーレット様、お兄さまやこちらに注目していないとはいえ他家のご令息がいる前で、堂々とわたくしを非難するその度胸は買って差し上げたいと思います、思いますけれど、
(思った以上にアタ……考えの足りない方ですのね……)
スカーレット様はわたくしと同じ8歳ですから、まだちょっと分別やガマンが足りないのかもしれませんが、この場面でその態度を貫けるというのはちょっとどころではない蛮勇です。
とにかくわたくしを貶したい、傷付けてやりたい、ということなのでしょうけれど、そういうのはもっとこう、人のいない場所でコッソリとするものが悪役令嬢としての最低限のマナーと申しますか、正直ガラッシア家とアリエーテ家では家格が違いすぎるので、露見すれば痛い目をみるのはアリエーテ家です。
それをこんなに真っ向からいらっしゃるなんて、お宅の教育はどうなっていらっしゃるのかしらとアリエーテ家を家庭訪問したい気持ちです。
「スカーレット嬢は、何か見間違いをされたのだろうか?」
彼女を咎めるべく、お兄さまが声を上げました。
もちろん、真っ正直に咎めたのでは、「王妃陛下のお茶会で、アリエーテ家がガラッシア家に失礼を働いた」という事実が確定してしまいますので、搦め手を使って事態を収めるのが常套手段になります。
落ち着いた振る舞いをしているように見せているお兄さまですが、多少の圧が漏れているのは仕方ありませんわね。
絶世の美形の真顔にスカーレット様は一瞬怯んだ様子ですが、ツン、とそっぽを向いて、
「わたくし、見たままのことしか言っておりませんわ」
と、なんとお兄さまに応戦するではありませんか。
お兄さまのお顔に負けないその胆力は賞賛に値しますが、
(スカーレット様……なんておバカさん、いえやんちゃでいらっしゃるの……)
貴族の中で最上位の公爵家の嫡男に、いくら十二貴族とはいえ下位の伯爵家のご令嬢が反論するなんて、「おもしれー女」にしか許されることではありませんのよ。
「こんな方がエンディミオン様の婚約者に推されているなんて、わたくし信じられませんわ!」
(あらっ、そういうことですのね)
キッとまた効果音のつきそうな強い視線で睨んできましたが、わたくし、スカーレット様の今のお言葉でそのお気持ちが読めてしまいました。
シルヴィオ様のご婚約者になる方かと思いましたが、どうやら想いは王子殿下に向いているよう。
そういうことでしたら、わたくしに当たる態度になるのもわかります。
けれどそんなことをしてもご自分の立場が悪くなるだけですから、貴族令嬢として、王子殿下の未来の婚約者を目指す者として、まだまだ教育は行き届いていらっしゃらないよう。
できればわたくしの破滅回避のために、王子殿下の婚約者枠を埋めてくださる方としてご推薦して差し上げたいくらいなのですけれど、どういえば和解できますかしら。
「まぁ、婚約者などとんでもない。わたくし、王子殿下のお友だちにしていただいたのですわ」
ここでスカーレット様やお兄さまの様子に引きずらてしまいますと角しか立ちませんので、あくまでルクレツィアらしく、わたくしはお花を飛ばすようなゆるやかな調子で、まずはスカーレット様の言葉を否定しました。
「そんなの建前に決まってるでしょ!
あなたみたいな何にも考えてなさそうな方に、エンディミオン様の婚約者が務まるわけないのだわ!」
どうも火に油、わたくしの緊張感のない態度に苛立ってしまったようで、小型犬が吠えるが如く、スカーレット様は声を荒げてしまわれました。
わたくしに王子殿下の婚約者が務まらないということには完全に同意できるのですけれど、そんなに大きな声で喚きますと、ほら、なかなか注目を集めはじめていると思いません?
レオナルド様とラガロ様とお話をされていたお父さまが驚いた顔で、ビランチャ宰相とお話をされていたアリエーテ伯爵が青い顔でこちらを見ておりますよ。
アンジェロお兄さまは呆れるようにこの場を取り成すことを止めたようで、ファウストだけがわたくしを守るような立ち位置から一歩も譲らないで、スカーレット様を射るような強い目で見ております。
(困りました……大事にしたいわけではないのですけれど)
スカーレット様が自ら墓穴を掘っているのを、止めようがございませんでした。
どうにかこの墓掘り令嬢のお立場を守るべく、わたくしは王妃様に対するお母さまの振る舞いを参考にすることにいたしました。
「まぁ、スカーレット様、わたくしのことを心配してそんな風に仰ってくださいますのね、ご親切にありがとう存じます」
自分のことを思って叱ってくれたものとして、感激したようにスカーレット様に小走りに歩み寄ると、その両手を掲げ持って包み込みます。
スカーレット様はギョッとしたような顔で反射的に振り払おうとしましたが、有無を言わさぬ渾身の力で、わたくしはそれを押し止めました。
異性ではないもの同士、手を繋ぐのは許されております。
もちろん、かなり親密でなければなかなかしないことではありますけれど、ここはわたくしとスカーレット様が親交を深めているように演出しなければなりません。
「どうしたんだい、ティア。
アリエーテ伯爵令嬢と、お友だちになれたのかな?」
お父さま、レオナルド様、ラガロ様、それからアリエーテ伯爵にビランチャ宰相も様子を見にこちらにやって来られました。
「えぇ、お父さま。スカーレット様はとてもご親切に、わたくしにいろいろ教えてくださりますのよ」
何か言いたそうにしたスカーレット様ですけれど、さすがにいろいろと不味いことに気がついたのか、大人しく手を握られててくださいました。
「確か娘とご令嬢は同じ年でしたね、アリエーテ伯爵。ぜひこれからも、娘の友人としてお付き合いくださりますか?」
「滅相もないことです、公爵閣下」
中肉中背のごく普通の気弱げなおじ様という風情のアリエーテ伯爵は、美の化身のお父さまに親しげに話しかけられて、可哀想なほど額から汗を垂らしております。
「ああ、そうだ、アリエーテ伯爵令嬢にも、殿下のお友だちとしてティアの付き添いをお願いしたらどうだい?」
「まあっ、お父さま、それがようございます。ぜひお願いしたいですわ!」
お父さまは神なのでしょうか。神でしたわね。
これ以上ない奇跡の提案です。
「先程仰っていた件ですかな、ガラッシア公爵」
それには、豊かな口髭をたくわえたビランチャ宰相が反応しました。
シルヴィオ様にダンディーを百パーセント上乗せしたような、貫禄のあるお方です。
「ええ、娘は王城でのマナーがまだ心許ないですし、殿下のご友人に望まれたのはよいのですが、娘一人がおそばに上がり、妙な誤解を生んでもお互いに不幸になりますから、希望するご令嬢が王城のマナーを実践で学べる機会を王妃様に作っていただこうかと、奏上申し上げようと思っております」
なるほど、お父さまの妙案はこれでしたのね。
「不幸も何も、ルクレツィア嬢が殿下の婚約者になれば、そのような回りくどいことをしなくとも済むのではありませんかな」
ビランチャ宰相様、ド正論ですわね!
でもそれは、当人の、主にわたくしの意思を無視したお話なのです。
貴族同士の結婚話ですから、わたくしの意思など本当は無視されても仕方のないことなのですけれど、お父さまは最大限のお力で、それも守ろうとしてくださいますの。
「それなんだが、宰相殿」
レオナルド様が、ビランチャ宰相様を制しました。
「私の事情はご存知だろうが、幼いまま婚約したところで、その後何事もなく長じるとは限らない。事故も病気も当然起こり得ることで、そうなってしまえば、残されたものの不幸はわかるだろう?」
レオナルド様の亡くなられたご婚約者は、十二貴族伯爵六家のうち、トーロ家のご令嬢だったとか。
守りのトーロ家と呼ばれる、防御に徹底した能力を誇る武門の家系です。
酔ったレオナルド様が少しお話されていたのを、聞いたことがございます。
生まれる前から決められた婚約者で、トーロ伯爵令嬢はとても活発なご気性だったよう。
ともに訓練を積み、幼馴染のようで、戦友のようで、病気ひとつしない健康な女性のはずが、婚姻を目前に風邪をこじらせて、そのまま呆気なく儚くなられたとか。
「だから王家の、とくに第一王子殿下の婚約者ともなれば、もう少し慎重に、時間をかけて決めてもいいのではと、私から常々ガラッシア公爵にも相談をしていたんだ」
「それは、ふむ……」
ビランチャ宰相様は、レオナルド様のお話しに感ずるところがあったのか、考え込むように黙してしまいました。
「私も殿下に剣術など指南するお役目をいただいておりますから、どうにも過保護なことかもしれないが、幼いうちに結論を出さなくとも、選択肢は未来に多くとっておいたほうが良いと説いて差し上げようと思っております」
これは、どこまで本当のことなのでしょう。
レオナルド様のご事情は本当でしょうが、実際お父さまとそんなお話をされていたのでしょうか。
娘を嫁にやりたくない、と酔って愚痴っているお父さまを笑って宥めている姿はよくお見かけするのですけれど……。
不思議に思い、レオナルド様の静かな横顔を見やります。
視線に気が付いたように、レオナルド様がこちらに一瞥くださいました。
パチン、と。
それはそれは微かな音だったかもしれません。
イタズラを見つかったようなお顔で、レオナルド様はわたくしにだけウインクをくださるではありませんか。
(ん゛)
わたくしの心臓がゴトリとひっくり返り、心のお友だちのチベスナさんも、撃たれたように倒れ込む幻覚が見えました。
ファザコンの第二形態、意図せぬところで覚醒です。
お兄さまは生まれながらの公爵家嫡男、ファウストは通常運転がお人形ですから、見た目はいつもどおりのように見えますけれど、わたくしはさすがに家族だからわかります。
スカーレット様、お兄さまやこちらに注目していないとはいえ他家のご令息がいる前で、堂々とわたくしを非難するその度胸は買って差し上げたいと思います、思いますけれど、
(思った以上にアタ……考えの足りない方ですのね……)
スカーレット様はわたくしと同じ8歳ですから、まだちょっと分別やガマンが足りないのかもしれませんが、この場面でその態度を貫けるというのはちょっとどころではない蛮勇です。
とにかくわたくしを貶したい、傷付けてやりたい、ということなのでしょうけれど、そういうのはもっとこう、人のいない場所でコッソリとするものが悪役令嬢としての最低限のマナーと申しますか、正直ガラッシア家とアリエーテ家では家格が違いすぎるので、露見すれば痛い目をみるのはアリエーテ家です。
それをこんなに真っ向からいらっしゃるなんて、お宅の教育はどうなっていらっしゃるのかしらとアリエーテ家を家庭訪問したい気持ちです。
「スカーレット嬢は、何か見間違いをされたのだろうか?」
彼女を咎めるべく、お兄さまが声を上げました。
もちろん、真っ正直に咎めたのでは、「王妃陛下のお茶会で、アリエーテ家がガラッシア家に失礼を働いた」という事実が確定してしまいますので、搦め手を使って事態を収めるのが常套手段になります。
落ち着いた振る舞いをしているように見せているお兄さまですが、多少の圧が漏れているのは仕方ありませんわね。
絶世の美形の真顔にスカーレット様は一瞬怯んだ様子ですが、ツン、とそっぽを向いて、
「わたくし、見たままのことしか言っておりませんわ」
と、なんとお兄さまに応戦するではありませんか。
お兄さまのお顔に負けないその胆力は賞賛に値しますが、
(スカーレット様……なんておバカさん、いえやんちゃでいらっしゃるの……)
貴族の中で最上位の公爵家の嫡男に、いくら十二貴族とはいえ下位の伯爵家のご令嬢が反論するなんて、「おもしれー女」にしか許されることではありませんのよ。
「こんな方がエンディミオン様の婚約者に推されているなんて、わたくし信じられませんわ!」
(あらっ、そういうことですのね)
キッとまた効果音のつきそうな強い視線で睨んできましたが、わたくし、スカーレット様の今のお言葉でそのお気持ちが読めてしまいました。
シルヴィオ様のご婚約者になる方かと思いましたが、どうやら想いは王子殿下に向いているよう。
そういうことでしたら、わたくしに当たる態度になるのもわかります。
けれどそんなことをしてもご自分の立場が悪くなるだけですから、貴族令嬢として、王子殿下の未来の婚約者を目指す者として、まだまだ教育は行き届いていらっしゃらないよう。
できればわたくしの破滅回避のために、王子殿下の婚約者枠を埋めてくださる方としてご推薦して差し上げたいくらいなのですけれど、どういえば和解できますかしら。
「まぁ、婚約者などとんでもない。わたくし、王子殿下のお友だちにしていただいたのですわ」
ここでスカーレット様やお兄さまの様子に引きずらてしまいますと角しか立ちませんので、あくまでルクレツィアらしく、わたくしはお花を飛ばすようなゆるやかな調子で、まずはスカーレット様の言葉を否定しました。
「そんなの建前に決まってるでしょ!
あなたみたいな何にも考えてなさそうな方に、エンディミオン様の婚約者が務まるわけないのだわ!」
どうも火に油、わたくしの緊張感のない態度に苛立ってしまったようで、小型犬が吠えるが如く、スカーレット様は声を荒げてしまわれました。
わたくしに王子殿下の婚約者が務まらないということには完全に同意できるのですけれど、そんなに大きな声で喚きますと、ほら、なかなか注目を集めはじめていると思いません?
レオナルド様とラガロ様とお話をされていたお父さまが驚いた顔で、ビランチャ宰相とお話をされていたアリエーテ伯爵が青い顔でこちらを見ておりますよ。
アンジェロお兄さまは呆れるようにこの場を取り成すことを止めたようで、ファウストだけがわたくしを守るような立ち位置から一歩も譲らないで、スカーレット様を射るような強い目で見ております。
(困りました……大事にしたいわけではないのですけれど)
スカーレット様が自ら墓穴を掘っているのを、止めようがございませんでした。
どうにかこの墓掘り令嬢のお立場を守るべく、わたくしは王妃様に対するお母さまの振る舞いを参考にすることにいたしました。
「まぁ、スカーレット様、わたくしのことを心配してそんな風に仰ってくださいますのね、ご親切にありがとう存じます」
自分のことを思って叱ってくれたものとして、感激したようにスカーレット様に小走りに歩み寄ると、その両手を掲げ持って包み込みます。
スカーレット様はギョッとしたような顔で反射的に振り払おうとしましたが、有無を言わさぬ渾身の力で、わたくしはそれを押し止めました。
異性ではないもの同士、手を繋ぐのは許されております。
もちろん、かなり親密でなければなかなかしないことではありますけれど、ここはわたくしとスカーレット様が親交を深めているように演出しなければなりません。
「どうしたんだい、ティア。
アリエーテ伯爵令嬢と、お友だちになれたのかな?」
お父さま、レオナルド様、ラガロ様、それからアリエーテ伯爵にビランチャ宰相も様子を見にこちらにやって来られました。
「えぇ、お父さま。スカーレット様はとてもご親切に、わたくしにいろいろ教えてくださりますのよ」
何か言いたそうにしたスカーレット様ですけれど、さすがにいろいろと不味いことに気がついたのか、大人しく手を握られててくださいました。
「確か娘とご令嬢は同じ年でしたね、アリエーテ伯爵。ぜひこれからも、娘の友人としてお付き合いくださりますか?」
「滅相もないことです、公爵閣下」
中肉中背のごく普通の気弱げなおじ様という風情のアリエーテ伯爵は、美の化身のお父さまに親しげに話しかけられて、可哀想なほど額から汗を垂らしております。
「ああ、そうだ、アリエーテ伯爵令嬢にも、殿下のお友だちとしてティアの付き添いをお願いしたらどうだい?」
「まあっ、お父さま、それがようございます。ぜひお願いしたいですわ!」
お父さまは神なのでしょうか。神でしたわね。
これ以上ない奇跡の提案です。
「先程仰っていた件ですかな、ガラッシア公爵」
それには、豊かな口髭をたくわえたビランチャ宰相が反応しました。
シルヴィオ様にダンディーを百パーセント上乗せしたような、貫禄のあるお方です。
「ええ、娘は王城でのマナーがまだ心許ないですし、殿下のご友人に望まれたのはよいのですが、娘一人がおそばに上がり、妙な誤解を生んでもお互いに不幸になりますから、希望するご令嬢が王城のマナーを実践で学べる機会を王妃様に作っていただこうかと、奏上申し上げようと思っております」
なるほど、お父さまの妙案はこれでしたのね。
「不幸も何も、ルクレツィア嬢が殿下の婚約者になれば、そのような回りくどいことをしなくとも済むのではありませんかな」
ビランチャ宰相様、ド正論ですわね!
でもそれは、当人の、主にわたくしの意思を無視したお話なのです。
貴族同士の結婚話ですから、わたくしの意思など本当は無視されても仕方のないことなのですけれど、お父さまは最大限のお力で、それも守ろうとしてくださいますの。
「それなんだが、宰相殿」
レオナルド様が、ビランチャ宰相様を制しました。
「私の事情はご存知だろうが、幼いまま婚約したところで、その後何事もなく長じるとは限らない。事故も病気も当然起こり得ることで、そうなってしまえば、残されたものの不幸はわかるだろう?」
レオナルド様の亡くなられたご婚約者は、十二貴族伯爵六家のうち、トーロ家のご令嬢だったとか。
守りのトーロ家と呼ばれる、防御に徹底した能力を誇る武門の家系です。
酔ったレオナルド様が少しお話されていたのを、聞いたことがございます。
生まれる前から決められた婚約者で、トーロ伯爵令嬢はとても活発なご気性だったよう。
ともに訓練を積み、幼馴染のようで、戦友のようで、病気ひとつしない健康な女性のはずが、婚姻を目前に風邪をこじらせて、そのまま呆気なく儚くなられたとか。
「だから王家の、とくに第一王子殿下の婚約者ともなれば、もう少し慎重に、時間をかけて決めてもいいのではと、私から常々ガラッシア公爵にも相談をしていたんだ」
「それは、ふむ……」
ビランチャ宰相様は、レオナルド様のお話しに感ずるところがあったのか、考え込むように黙してしまいました。
「私も殿下に剣術など指南するお役目をいただいておりますから、どうにも過保護なことかもしれないが、幼いうちに結論を出さなくとも、選択肢は未来に多くとっておいたほうが良いと説いて差し上げようと思っております」
これは、どこまで本当のことなのでしょう。
レオナルド様のご事情は本当でしょうが、実際お父さまとそんなお話をされていたのでしょうか。
娘を嫁にやりたくない、と酔って愚痴っているお父さまを笑って宥めている姿はよくお見かけするのですけれど……。
不思議に思い、レオナルド様の静かな横顔を見やります。
視線に気が付いたように、レオナルド様がこちらに一瞥くださいました。
パチン、と。
それはそれは微かな音だったかもしれません。
イタズラを見つかったようなお顔で、レオナルド様はわたくしにだけウインクをくださるではありませんか。
(ん゛)
わたくしの心臓がゴトリとひっくり返り、心のお友だちのチベスナさんも、撃たれたように倒れ込む幻覚が見えました。
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