【完結】色欲の悪魔は学園生活に憧れる

なかじ

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第三部

52※ 夏義×有

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「夏? どうして何もしないんだ?」
「……笑うなよ?」
「あぁ」
「緊張してきた」
「ふふっ」
「おい」

 童貞みたいなことを言う夏に思わず噴出してしまう。何人も経験があるくせに、俺を目の前にして急に緊張だなんて、可愛い以外の何物でもない。
 俺が笑ったことにむくれながら、夏は俺の上に覆いかぶさってくる。俺達を隔てるものはとっくに脱ぎ捨てているので、肌を合わせるとただただ気持ちよかった。

 夏は俺の首筋にキスをしながら俺の身体を確かめるように触れた。どこもかしこもなぞられて、体が熱くなる。その肌の上を夏の唇が触れれば、ビリビリと体が痺れてしまいそうになった。気持ちよくて温かくて、まるで恋人同士が行う行為だ。そういえば、この行為はそういう者同士で行うのだったな。悪魔の場合は生活に必要なのでもっと軽いものになってしまっている。

「夏、なんで焦らすっ」
「今まで焦らされたお返しに決まってんだろ?」

 夏は意地悪な顔で笑う。夏の手と唇で暴かれた身体は奥底から夏を欲している。勝手に奥がきゅんきゅん切なくなり、涎をたらすのを止められない。俺がどんなに淫らに動いても夏は性急に事を進めようとしなかった。生娘を抱くように入念に愛撫される。中をほぐす指さえも優しく丁寧で、気持ち良すぎて意識がぼんやりする。胸の先端に甘噛みを受けて意識が覚醒すると、夏の目が優しく細まった。

 その瞳に、まるで自分がどれほど大事にされているか、愛されているかを認識させられるようで、妙に気恥ずかしい気持ちになった。おかしい。羞恥などとうに捨て去ったと思っていたのに……。

「夏、こそばゆい……まだ入れてくれないのか? 指だけでは嫌だ……」
「我慢しろ。俺は堪能してぇんだよ」

 我慢は嫌いだ。でもその言葉を夏の唇が飲み込む。熱い咥内に舌を差し入れればざらざらとした大きな夏の舌と絡み合う。唾液を送って、舌先を吸って、いっそ快感増幅をかけてやろうと思ったが、これはただ精気を奪う行為ではないのだと思い留まった。夏が俺に全てをくれたなら、俺も夏に返したい。我慢は嫌だが一生ではない。そう思えばこの甘い行為を楽しむ気になれた。

「有……どこがいい? どこが好きだ?」
「んぅ、中と……耳がいいっ」
「わかった」

 夏は俺の耳に舌を差し込みながら、俺の中を行き来する指を増やしてぐちゃぐちゃにかき回す。溢れる腸液が夏の手だけではなく俺の下半身までだらだらと汚していた。

「ぁ、あああっ、あ、んぁっ!」

 気持ち良くて大きな声が出てしまう。きっと隣にいるイウディネや春樹にも聞こえているはずだ。あぁ、もっと聞いて欲しい。俺が夏にすごく気持ち良くしてもらっていることを知って、興奮してくれれば嬉しい。

「有、入れるぞ」

 夏は正面から俺の足を両手で開くと性器を俺の尻のすぼみに押し付けた。夏の性器は熱り立ち、脈打っている。今まで隷属した誰よりも夏の性器は太くて大きい。これが中をぐちゃぐちゃに犯してくれるのかと思うと、興奮して生唾を飲んでしまう。俺の身体は夏が欲しくて堪らないのか、奥が熱く疼いていた。そこを穿たれたらどれほどの快感が俺を襲うだろう? 考えるだけで笑みが溢れた。

「愛してる、有……」
「……――ッ!!」

 夏の性器がぐっと俺の肉を掻き分けて押し入ってくる。足先に力が入り、指先がシーツを引っ張った。ものすごい快楽と恐怖と衝撃がぐるぐると俺の身体を渦巻く。俺は数え切れないほどセックスをしてきたはずなのに、こんな快楽久しく味わっていなかった。まるで一番最初に抱かれた時のようだ。相手は誰だったかも思い出せないのに、身体が味わった興奮だけは今も思い出せる。

「あっちぃな……!」
「ひ、んっ、んん、あっ、ああっ!!」

 夏はゆっくりと腰を動かしながら俺の中へ押し入ってくる。その動きがどんどん早くなり、腰を大きく打ち付けられるたび、俺の身体は上下に揺さぶられた。ギシギシとベッドが軋み、その音にすら興奮してしまう。

「有……」
「んっ、ふ、ぁっ、んっ」

 キスをされながら中を犯されているとじわじわと腹に何かが溜まっていく。

「んぐっ!? ぁ、ああああっ!?」

 これは何だ。と意識を腹に集中した瞬間、身体から汗が吹き出た。目の前がチカチカするほど強烈な快楽、そして押し寄せる堪えきれない感情に頭がパンクしそうだ。いつもなら夏を引き寄せようとする手が夏の胸を押し返そうとする。しかしビクともせず、足がバタバタと無様に藻掻いた。

「有? なんだ?」
「あ、だめっ、だめだっ!」

 俺を見下ろす夏は汗をかいており、肌が湿っている。前髪はセットが崩れて下がっていた。大人っぽい夏が年相応の少年に見える。そして俺を心配そうに眺めている様子に胸がドクドク痛い。

「なんか、おか、おかしっ!」
「あ? 犯して欲しい? わかったよ」
「ち、ちがっ! ちがうっ! ひっ、ああっ!?」

 夏は止めて欲しいと訴える俺を煽っていると勘違いして抱き込むと激しく腰を打ち付けてきた。自分の中に渦巻く強烈な感情。逃げたいと思うほどの快楽。何が何だかわからずに藻掻き続ける。

「な、夏っ! ぁ、怖いっ! 夏、ゆっくり! もっと! ゆっくりしてくれっ! ぁんっ!」
「初めて抱かれるみたいな態度取るんじゃねぇよ……っはぁ、自制ききそうにねぇぞ」

 俺には夏がキラキラと輝いて見える。ピンク色のオーラが夏を包んでいた。
 あぁ、そうか、夏は隷属してすぐに人間ではなくなってしまったのだ。既に魔力を身体に帯びている。魔力が減って弱った俺は抵抗もろくにできないまま、夏に魅了されている状態なのだ。そして夏は無自覚に力を行使しているため、制御できていない。そもそも俺は夏に悪魔になったことを一切説明できていなかった。万事休す、という単語が頭を過る。こんなことで勉強会の成果を出している場合ではない。

「ひっんんっ、んぁっ! 夏ッ、イキ、たいっ!」
「はぁ、俺もやべぇ……イッても続けるぞ、中締めろ……っ!」
「ぁ、あああっ、あっ、なつっ! た、のむからっ! なか、やめてっ!」

 こんな状態で、魔力を含んだ精液を中に出されたら頭がおかしくなってしまう気がして怖い。俺は必死に懇願するが、それは盛大なふりに思われたらしい。夏は笑いながら俺を抱きしめると腰を打ち付ける。これじゃ寸でで抜くなんてまず無理だ。必死に夏を押しやろうとするが、夏と自分の胸に手が挟まれて動けない。

「後でかき出してやるからそんな意地悪言うんじゃねぇよっ」
「ひっ!」
「有っ、あるっ! 気持ちいいっ! っはぁ、お前の中にずっといてえっ……!」

 人気声優も目じゃない低音ボイスが鼓膜をなぞり、俺は抵抗する力すら奪われて夏に揺さぶられる。気持ち良すぎて涙がボロボロ溢れる。夏は俺の肩に頭を埋めると俺の最奥に性器を穿った。

「ん、ぁッ! ッッ――――!!!」
「っは、ははっ! イ、くっっ!!!!」

 視界が白く弾け、高められた欲望が性器から溢れる。次いですぐ中に強烈な快楽と熱いものを感じて身悶えた。強い魔力に身体が支配されそうになる。何も考えられず、そのまま身体を震わすことしかできなかった。

「有? おとなしいな?」
「あっ、夏、おねがっ、抜いてくれっ、おか、おかしくなる!」
「……あぁ。最低でもあと二回終わったらな」
「そんなっ……ぁっ、だめっ! なつ、ほんとにっ!」
「愛してる有」
「あ、んっ、んぅ、んんんんっ!」

 俺が止めてくれと願っても夏は俺の唇を塞いで再び腰を動かし始める。夏の身体のまわりのオーラはどんどんピンク色を濃くしていた。とんでもない魔力量だ。上位淫魔、いや、目覚めたてでこれなら上位悪魔にでもなってしまうのではないか……?

 俺はもしかしたらとんでもない悪魔を作り出してしまったのかもしれない。そして夏がこうなら、秋名や春樹も同じようになってしまうんじゃなかろうか。不安に震える足がシーツと一緒に夏を蹴った。



 
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