30 / 134
新たな地へ
隣領バスク地区の修道院に行く当日
隣領のバスク地区は場所で丸4日かかるので食料や寝具を詰め込んでいた。
途中宿に泊まることもあるが万が一もある。
ケントお兄様が事前に護衛を雇っていたが、
お父様が心配し急遽、信頼のおける事業所からエリートの護衛を複数人手配してくれていた。
護衛する馬車は少ない方が安全を確保しやすいのでリリアはデリスと同じ馬車に乗ることになった。
リリアは4日で読みたい本を大量に馬車に積んでいるので同席者が誰であろうと構わなかった。
お父様は涙ながらに別れを惜しみ、
ケントお兄様は早く行ってしまえと言いたいところを我慢しているような複雑な顔で無言だった。
道中お兄様が雇った護衛などに命を狙われる心配が大きかったが、
お父様が手配してくれた護衛のおかげで向こうも妙な動きが取れなかったようだ。
順調にバスク地区に近づいている。
馬車の中でデリスに聞きたいことがあった。
「ねえ、デリス。」
「は?何でしょうか?」
馬車に常に揺られて腰が痛いのか不機嫌丸出しのデリスが応じた。
リリアは皐月の頃海外旅行で辺境の地を長時間バスに揺られたり、
道なきみちを歩き続けて目的地を目指すこともザラにあった。
ましてや今は16歳の肉体なのであまり気にしていない。
涼しい顔をしているリリアがまたデリスは気に食わない。
「ねえ、デリスはどのような男性が好みなの?」
「は?男性の好み?ですか?」
「ええ、色々あるでしょう。細身が好きとか筋肉質が好きとか、
身長がどのくらいがベストとかスポーツが得意そう、勉強ができそうとか色々。」
「ええー?それを聞いてそうするんですか?」
「いいの聞きたいの。教えてほしいわ。」
「うーん。そうですねえ。身長は178センチ顔は綺麗な顔。髭なんかは絶対NGですね。
清潔感があって声がいい人かなあ。」
「なるほど。綺麗で髭はNGね。分かりました。ありがとう。」
「はあ。どういたしまして…。」
変なやつ。ちょっと前は豚だったのに。豚じゃなくなったじゃない。
まあ、まだ贅肉は隠しきれてないけど。クククク。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リリアは修道院に着く最後の休憩所で悪趣味なドレスに着替えていた。
わざと派手に着飾り、妙な化粧も施した。
デリスはノリノリで手伝った。
「これがリリアお嬢様ですー。」といいながら。
馬車が止まる。
「さあ、長旅お疲れ様でした。修道院につきましたぜ。」
馬車から外を見ると寂れた修道院が目の前にあった。
街はなんだか暗い雰囲気で目つきの悪い大人達が馬車をジロジロと見ている。
以前住んでいた地区とは大違いだ。
わざとドレスを見せつけるように馬車を出た。
白々しく大きな声で
「なーんて薄汚い場所なの!これが私の住む場所?信じられない!
こんなところ嫌よ!管理者を呼んで!別の建物を手配するのよ!
荷物もそこに運んで!いやとは言わせないわ!」
出迎えに来ていたシスターが明らかに怪訝な表情で対応している。
「あなたが管理者のシスター?名前は?」
「…ジャスミンです。」
シスタージャスミンは顔全体にうっすらシワががある。
シスターの服で体の露出は少ないが、スカートから見える足は痩せていて足は棒のようだ。
眉間のシワは年季が入っているのか一番深く刻まれている。
リリアの態度でさらに深いシワになっている。
「シスタージャスミン!小さくてもいいわ!
この町で一番安全な建物の部屋を手配して!
分かったわね!今日はそこで寝るわ!」
シスタージャスミンもリリアを受け入れることで、
隣領から多額の金銭援助を受けていることは知っているので無下に断れない。
「分かりました。少々お待ちを…。」
修道院に戻るシスタージャスミンをリリアは追いかけ、
シスタージャスミンの耳元でこっそり注文をした。
「身長178センチで髭ひとつない綺麗な顔立ちのイケメンボイスのいい男も部屋に用意して。」
シスタージャスミンは呆れながら「少々お待ちを。」と言い修道院の建物の中に入って行った。
すぐに部屋は用意された。スラリと長身で綺麗な顔立ちの男も部屋にいる。
「こちらに荷物をどうぞ。」
と男が声を出した時デリスは顔を赤らめ鼻血が出そうになっている。
「お、お、お嬢様!これは一体どう言うことですか?」
「ふふふ。デリス。ここまで一緒について来てありがとう。長旅だったわね。
ここなら安全だしゆっくり休めるわよ。
ああ、彼にデリスの執事役をお願いしているの。あまり彼を困らせないでね。」
「リリアお嬢様、お嬢様も一緒にこの部屋で過ごすのですか?」
「いいえ、私はこれからまた修道院に戻って生意気そうなシスタージャスミンに文句を言ってくるわ。
しばらくここには戻ってこないわ。修道院の人たちを指導しないといけないから!」
まだ贅肉がついて悪趣味なドレスを着ているリリアが言うと本気のように見える。
「じゃあ、私はいつまでこの部屋で過ごさせてもらえるのですか?」
「そうね、私が戻ってくるまでよ。外は危険だから出ちゃダメよ。
必要なものは執事の彼を通して何でも手に入るわ。
お金のことは気にしなくていいから。分かったわね。」
「は、はい!喜んで!お嬢さまお気をつけなさいませー!」
デリスは飛び上がって目を輝かせていた。
「では、よろしく。」
リリアはゆっくりと扉を閉めた。
あなたにおすすめの小説
【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~
四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!
「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」
これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。
おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。
ヒロインはどこいった!?
私、無事、学園を卒業できるの?!
恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。
乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。
裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。
2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。
2024年3月21日番外編アップしました。
***************
この小説はハーレム系です。
ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。
お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)
*****************
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。