前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな?

ミミリン

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ガールズトーク

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私は今屋敷をあとにして役所に向かっている途中だ。

さっきまでクロエやイリス、他男性二名と手話の勉強会が終わったところだ。


はあ~。

私に触るな、触れたところは手を洗えって…。

尻軽女とか毒女とかいろいろ言われたけど、今回は人間ですらない病原菌扱いだったな。


まあ、それだけディランは私に対して耐性がないという事だろう。


最近ちょっとは仲良くなったと思ったけど、身体接触は禁忌事項ってことね。


確かに、ディランに手話の訂正をしたときも私に触られたことがショックすぎて倒れそうになってたし。
大切な友達が菌に侵されると思ったら手を洗わせるのも納得か。

世の中色んな人がいるんだからこんなの悩んでていても仕方がない。

私は役所で諸々手続きを行った。


手続きが終わった後、ある人と会う約束をしていた。

それは、イリスを買ったお店のキャスト、ひめかちゃんだ。


この前偶然ばったり出会って流れでお茶をした。

ひめかちゃんは、色々ぶっ飛んでいるけど本人なりの正義があって、話していて面白い。


そして、何より、彼女は店のナンバーワンを張れる逸材なのだ。


つまり、若くて美しくて、賢い。

そんな女性にあらゆる情報が集まってくる。
その情報をもらうのが楽しいのだ。
多少がガセも混ざっているけど、裏情報としては貴重なものばかりだ。


あと、単純に年頃の女の子と話すのが面白いんだよね。


庶民の女の子では入れないようなお洒落で高級なお店に堂々と入って待ってくれているひめかちゃん。

ああ、美女とこの店絵になるわあ。


「ひめかちゃん、お待たせ。ごめんね、遅くなって。」


「もう~ルキア遅いし。これが同伴の客ならもう帰ってたからね。」


「ごっめーん。お詫びにここ私が出すから。」


「ああ、それはいらない。
私の太客がここのオーナーだから友達と行くって言ったら好きなもの頼んで良いって。
もちろんお代はあっち持ちだからね。」

「流石、ナンバーワンは違うね。」


「まあね、それにしてもルキア相変わらず良い感じのメイクしてるじゃん。
貴族っぽくないけど。」

ヒメカちゃんはあの店で使った名前をそのまま呼んでくる。


テンションもこんな感じだから私としては、素が出しやすい。


「だよね~。私もそう思うもん。
でも、すっぴんが地味だから貴族のおじ様方に舐められたちゃうでしょ。これくらいが丁度いいの。」


「まあ、旦那があれじゃあね。ルキアも苦労してるわけだ。」


「あれって…。最近はちょっと優しいんだけどね。
いや、さっきまで病原菌扱いされてたか。」


「なにそれ?ウケる。人間じゃないじゃん。
ディラン様ね~、元は良いのよ。
顔も整ってるし背も高いし。
けどさ~趣味悪すぎ。
あと体形がぼってりしてるのも何かやだ。」



「ずばっと言われると辛いな。
全くオブラートに包んでないじゃん。」


「ははは。ごめん、ごめん。
いや、性格は優しいし見どころはあるんだけどね。
何と言うか努力の方向性が間違ってるし、世間知らずって感じ。」


流石ナンバーワンだ。人間観察と考察がずばり全部当てはまってる。


「ひめかちゃん、お店辞めたら何かのサロンでコーチング講師しなよ。
ひめかちゃんならお客さん貴族も来ると思うよ。」


「いや、何それ。ルキア顔綺麗なのにときどき変なこと言うよね。
やる気なさそうでマメだし。」


こんな可愛い子に褒められると心がチリチリと落ち着かない。

世の男性たちの気持ちが分かる気がする。褒め方が絶妙に上手すぎるわ。


「あ、あとオーナーが今度ルキアに会いたいってさ。
イリスも元気か気になってるみたい。」



「そうだね、イリスもオーナーに挨拶はちゃんとしたいって言ってた。
最近かなり元気になったから聞いてみる。」


「イリスも天然最高級美人だけど変な子だったよね。異次元って感じ。」


「うん…。本当に。奴隷契約はしたけど、あの屋敷で一番発言権持ってるよ。
何と言うか一般人を超越した何かがあるのかな。」


「あ~何か分かる。イリスってすごい酒癖悪い客についたとき、あの威圧感で黙らせたことあるんだよね。
女王ってか女帝?みたいなオーラあるよね。」


「それそれ。女帝だ。
イリスって普段はカタコトで言いたい放題言ってて何か面白いんだけど、義理の妹に無茶苦茶優しいし男前なんだよね。」


「へえ~、義理の妹か。可愛いの?」

「うん、かなり可愛い。
体が不自由なところがあるけど、すごく頑張り屋さんで、私の癒しなの。」


「そっか…。色々あるんだね。」

ひめかちゃんがしんみりしていた。あ…ひめかちゃんの弟君も体が不自由って言ってたっけ。

そんなしんみりした空気を変えるようにひめかちゃんは話題提供してくれた。


「あ、そうそう。この前ね新しく出来たネイルサロン行ってきたの。
その店長がさ、何と侯爵家の愛人らしいの。
でね、なんとお腹が大きくて妊娠してるみたいだったんだ。
ルキアだけに教えるんだけどね。」


「え?侯爵家って婿養子じゃなかったけ?」


「でしょ?仕事中色々聞いちゃったんだ。
まあ、嘘か本当か分かんないけどね。」


「いや、ありえるかも。
私もこの前パーティで似たような話聞いたもん。」


「まじで?じゃあさ…。」


こんな感じで私たちはガールズトークで盛り上がった。

ここでの話は誰にも言わない。

貴族のゴシップもマックレーン家の状況も。
それが出来る人は限られている。
出して良い情報とダメな情報、聞いてはいけないこと、それが理解できているからひめかちゃんはナンバーワンを張り続けることが出来ている。


それだけ腕があるなら起業すればいいのに、この世界では庶民の女性が起業するのは至難の業だ。
貴族と結婚、もしくは公認の愛人になればそれが可能だ。

ひめかちゃんは見定めているのかもしれない。

自分の将来のパートナーを。




お茶会が終わった後、ひめかちゃんからお土産にワインとハンドクリームを貰った。



「このハンドクリーム、ルキアがすごい良いって言ってたからお客さんにまた買ってもらったよ。
あと、ワインも貰ったんだけど私シャンパンしか飲まないからルキアにあげる。」


「わあ。ありがとう。
このハンドクリームどこにも売ってないんだよね。嬉しい。
ワインも私好きなんだ。本当にありがとう。」


「良いよ。また今度もお茶しようよ。」


「うん、ぜひ。また連絡するね。」


「うん、待ってる。ルキア、あの家が嫌になったらお店に来てよ。
ナンバー5圏内には入るよ。」


「もう、めっちゃリアルな数字もってくるじゃん。
まあ、そうなったらお願いしますってオーナーにも言っといて。」


「出た、ルキアの本音の時に出る変な訛り。
じゃあ、待ってるね。
ディラン様とイリスによろしく伝えといて、じゃあね。」



そう言ってひめかちゃんは颯爽と歩きだした。
何か、かっこいいな。



さて、私も買い物してから帰るか。


いや…このメイクで買い物したら目立つか。

毎日じゃなくていいから、メイドさん雇おうかな。

ディランから許可してもらった帳簿ももっと読み込む時間欲しいし…。



そんなことを考えてぼんやり歩いていると、何だか見たことのある顔があった。


あのおばさん…どこかで見たことあるな。


誰だったかな?


前職も含めて、人の顔と名前を覚えるのは得意なんだけど…。

えっと…なんちゃらシーって言うはずだ。



えっと、


「ナンシーさん?」
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