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出発前の朝
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今日は訓練卒業試験の当日だ。
玄関でディランが試験会場に出発するのを見送る。
まだ夜が明けていない時間帯だからクロエとイリスは寝かしておいた。
試験前から私一人でも、ディランを見送ろうと思っていた。
出来ることは何もないけど大切な勝負時は応援されて向かってほしいから。
「エレノア、こんな時間に見送ってもらってすまないな。」
「ううん。
ディラン、すごく頑張ってたからそれだけでも凄いことだよ。
自信もってね。」
「ああ、ありがとう。」
「結果発表は試験当日の内なんだよね。
発表時は家族や親しい人も同席出来るって聞いたけど、どうする?
クロエとイリスに行ってもらう?
今2人寝てるから伝えておこうか?」
「エレノアは?
エレノアは来ないのか?」
「私が行ったらディランが悪目立ちしちゃうでしょ。
せっかくの大切な場面に私は居ない方が良いわ。」
「そんなことない。
エレノアにも来て欲しい。
エレノアが良いんだ。」
「そうなの?派手なメイクで行っても大丈夫?」
「ああ、エレノアはどんな姿も美しい。
君が発表時に来てくれると思うと、張り合いが出来る。」
「そうなの?分かった。じゃあ、そうする。」
さらっと褒めてくる…。
こんなキャラじゃなかったんだけどな。
「同伴者が先に結果発表を伝えられ、本人が待機している場所で同伴者から合格を伝えられる仕組みになっているんだ。
不合格だとしばらく合格者が喜んでいる場所で待機させられるらしい。」
「す、すごい恐ろしい光景ね。
不合格者への優しさのかけらもないわ。」
「そういう場所なんだ。」
「そっか…。」
合格してほしいな…。
「なあ、エレノア。
あれをやってくれないか?」
「あれ?」
「そう、あの時の『おきばりやす』って言われるあれだ。
いい具合に気合が入りそうだ。」
「あははは。あれで良いならもちろんさせてもらいます。
じゃあ、いくよ。」
「ああ、頼む。」
ディランの横に立ち一呼吸置く。
ディラン、どうか、頑張って…。
「じゃあ、ディラン。おきばりやす!」
そう言ってディランの背中を押すように叩いた。
「うん、これで大丈夫だ。
最強の縁担ぎだよ。
ありがとうエレノア。」
「どういたしまして。
ディランの力出し切ってね。
心の中でずっと応援してるから。」
「ああ、ありがとう。
エレノアの手を貸してもらえるか?」
「あ、はい。どうぞ。」
また触るのかな?
そりゃ今から一世一代のイベントだもんね不安になってるはず。
私は手を差し出した。
「ありがとう、これも願掛けだ。」
ディランは私の手を持ちながら片足を織り込み、ひざまずいて手の甲にキスをした。
ディランが目を伏している顔を上から眺める格好になる。
わ、わ、わ、わ…。
外国映画に出てくる俳優さんみたいだ。
絵になる…。
「じゃあ、行ってくる。」
「い、行ってらっしゃい。」
私はしどろもどろになりながらも何とかお見送りの言葉を伝えた。
ディランはキリっとた表情に戻り、屋敷をあとにした。
び、びっくりした~。
まさか手の甲にキスされるとは持ってなかった。
今までもよく手を握らせていたけど、じゃれてるの延長戦みたいなもんだったから何も思わなかった。
さっきのは男の人の色気が伝わってどう反応して良いか分からなかった…。
私ってディランにとってお母さんポジションじゃなかったっけ?
いや、今日はこんなこと考えず、ひたすらディランの合格を祈っておこう。
そういえば、私がルキアの時に大人げない父親との勝負があったなあ。
手話をするため学校に向かう時、おかーはんがおきばりやすって見送ってくれたんだよね。
あの時のおかーはんも今の私と同じような気持ちだったのかな。
ああ、頑張れディラン!
玄関でディランが試験会場に出発するのを見送る。
まだ夜が明けていない時間帯だからクロエとイリスは寝かしておいた。
試験前から私一人でも、ディランを見送ろうと思っていた。
出来ることは何もないけど大切な勝負時は応援されて向かってほしいから。
「エレノア、こんな時間に見送ってもらってすまないな。」
「ううん。
ディラン、すごく頑張ってたからそれだけでも凄いことだよ。
自信もってね。」
「ああ、ありがとう。」
「結果発表は試験当日の内なんだよね。
発表時は家族や親しい人も同席出来るって聞いたけど、どうする?
クロエとイリスに行ってもらう?
今2人寝てるから伝えておこうか?」
「エレノアは?
エレノアは来ないのか?」
「私が行ったらディランが悪目立ちしちゃうでしょ。
せっかくの大切な場面に私は居ない方が良いわ。」
「そんなことない。
エレノアにも来て欲しい。
エレノアが良いんだ。」
「そうなの?派手なメイクで行っても大丈夫?」
「ああ、エレノアはどんな姿も美しい。
君が発表時に来てくれると思うと、張り合いが出来る。」
「そうなの?分かった。じゃあ、そうする。」
さらっと褒めてくる…。
こんなキャラじゃなかったんだけどな。
「同伴者が先に結果発表を伝えられ、本人が待機している場所で同伴者から合格を伝えられる仕組みになっているんだ。
不合格だとしばらく合格者が喜んでいる場所で待機させられるらしい。」
「す、すごい恐ろしい光景ね。
不合格者への優しさのかけらもないわ。」
「そういう場所なんだ。」
「そっか…。」
合格してほしいな…。
「なあ、エレノア。
あれをやってくれないか?」
「あれ?」
「そう、あの時の『おきばりやす』って言われるあれだ。
いい具合に気合が入りそうだ。」
「あははは。あれで良いならもちろんさせてもらいます。
じゃあ、いくよ。」
「ああ、頼む。」
ディランの横に立ち一呼吸置く。
ディラン、どうか、頑張って…。
「じゃあ、ディラン。おきばりやす!」
そう言ってディランの背中を押すように叩いた。
「うん、これで大丈夫だ。
最強の縁担ぎだよ。
ありがとうエレノア。」
「どういたしまして。
ディランの力出し切ってね。
心の中でずっと応援してるから。」
「ああ、ありがとう。
エレノアの手を貸してもらえるか?」
「あ、はい。どうぞ。」
また触るのかな?
そりゃ今から一世一代のイベントだもんね不安になってるはず。
私は手を差し出した。
「ありがとう、これも願掛けだ。」
ディランは私の手を持ちながら片足を織り込み、ひざまずいて手の甲にキスをした。
ディランが目を伏している顔を上から眺める格好になる。
わ、わ、わ、わ…。
外国映画に出てくる俳優さんみたいだ。
絵になる…。
「じゃあ、行ってくる。」
「い、行ってらっしゃい。」
私はしどろもどろになりながらも何とかお見送りの言葉を伝えた。
ディランはキリっとた表情に戻り、屋敷をあとにした。
び、びっくりした~。
まさか手の甲にキスされるとは持ってなかった。
今までもよく手を握らせていたけど、じゃれてるの延長戦みたいなもんだったから何も思わなかった。
さっきのは男の人の色気が伝わってどう反応して良いか分からなかった…。
私ってディランにとってお母さんポジションじゃなかったっけ?
いや、今日はこんなこと考えず、ひたすらディランの合格を祈っておこう。
そういえば、私がルキアの時に大人げない父親との勝負があったなあ。
手話をするため学校に向かう時、おかーはんがおきばりやすって見送ってくれたんだよね。
あの時のおかーはんも今の私と同じような気持ちだったのかな。
ああ、頑張れディラン!
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