俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

文字の大きさ
6 / 48

アリスの魔法

話は戻り、マリーナ嬢の母上は確かに一刻を争う事態だ。

アリスはてきぱきと薬を用意する。

奥方に薬を差し出すが、全く反応できない。こちらに反応する体力もないんだ。


薬を飲ませることができないとなると、もう手がないのか?と考えていたら。


アリスが呪文を唱え始める。リズムは治療魔法に似ているけど聞いたことがない言葉だった。


用意した薬が優しく光りさらさらと奥方の口元に注がれる。薬はのどを通り食の管まで届いているようだ。
しばらくすると奥方の血色がよくなり目に力が戻っている。何か言いたそうに口を動かしているが声になっていない。


「一度に大量に薬を投与すると体に負担がかかります。二時間おきに先ほどと同じ工程を行いますのでとりあえず一晩こちらに泊めていただいてよろしいですか?」


「もちろんよ。アリス本当にありがとう。」マリーナ嬢が安堵している。


「マリー、あなたも体力が削られているの。お母様が落ち着いたらあなたもこの薬を投与しましょうね。それまでしっかり休むこと。分かった?」


「はーい。じつは今体が限界なの。少し休ませてもらうわね。この部屋にはお母様が生まれた時から使えている待女だけ侯爵家の人間としていてもらうわ。あとは頼んだわよアリスの婚約者さん。」


「承知しました。」しょうもない婚約者とは言われなかった。



奥方のベッドサイドには待女がずっと手を握って回復を念じるように祈っている。


何かあればすぐ対処できるよう同じフロアにアリスと俺の休憩、待機場所を作ってもらった。

待女がいるので俺とアリスが二人きりではないという体だ。

何度かアリスが魔法を使って薬を投与している場面を見るが、全く無駄がなく患者への負担もない完璧な所作だった。



待機中アリスに聞いてみた。


「どこであんな魔法を習得したんだ?」

「隣国にいたとき、医術に長けているお医者様がいたの。突然息ができなくなった人に息を通す管を口から差したときに思いついたのよ。ああ、薬が届くまでのルートを人為的に確保すればいいんだって。」

「何かすごい現場だな。」

「あまり学校に行けてなかったら母方の叔父の職場に連れて行ってもらったの。そこが病院だったから。」

「アリスはずっと薬に固執しているから魔法が嫌いなのかと思っていた。」

「魔法は好きよ。でも私の治療魔法は治療師を名乗るほど強いものじゃないの。人を助けるプロフェッショナルになるなら魔法の治療師じゃなくて薬学の方が私には合っていると思ったのよ。」

「治療魔法が出来るだけでも貴重だと思うけどな。」

「だめだめ。おだてても無駄よ。かすり傷直そうとするだけで全身脱力位疲れちゃうんだから。だから自分で必要な魔法をアレンジしたらあの形になった訳なの。アレックス様の方が成績も優秀で高位の攻撃魔法や防御魔法も難なくこなせるでしょう?羨ましいわ。」


あ、俺の事に興味を持ってくれてるんだ。と少し安心した。


ん?何で安心してるんだ?


ああ、アリスがこんなに話しやすくて、楽しいからだ。
何で今までアリスとちゃんと話してこなかったんだろう。



感想 74

あなたにおすすめの小説

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う

miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。 それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。 アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。 今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。 だが、彼女はある日聞いてしまう。 「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。 ───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。 それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。 そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。 ※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。 ※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

良綏
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【完結】白い結婚をした悪役令嬢は田舎暮らしと陰謀を満喫する

ツカノ
恋愛
「こんな形での君との婚姻は望んでなかった」と、私は初夜の夜に旦那様になる方に告げられた。 卒業パーティーで婚約者の最愛を虐げた悪役令嬢として予定通り断罪された挙げ句に、その罰としてなぜか元婚約者と目と髪の色以外はそっくりな男と『白い結婚』をさせられてしまった私は思う。 それにしても、旦那様。あなたはいったいどこの誰ですか? 陰謀と事件混みのご都合主義なふんわり設定です。

婚約者が突然「悪役令嬢の私は身を引きますので、どうかヒロインと幸せになって下さい」なんて言い出したけれど、絶対に逃がさない

水谷繭
恋愛
王国の第三王子の僕には、フェリシア・レーンバリという世界一可愛い婚約者がいる。 しかし、フェリシアは突然「私との婚約を破棄していただけませんか」「悪役令嬢の私は身を引きますので、どうかヒロインと幸せになって下さい」なんて言い出した。 彼女の話によると、ここは乙女ゲームの世界で、僕はこれから転校してくるクリスティーナという少女に恋をして、最後にはフェリシアに婚約破棄をつきつけるらしい。 全くわけがわからない。というか僕が好きなのも結婚したいのもフェリシアだけだ。 彼女がこんなことを言いだしたのは、僕が愛情をちゃんと伝えていなかったせいに違いない。反省した僕は彼女の心を取り戻すべく動き出した。 ◇表紙画像はノーコピーライトガール様のフリーイラストからお借りしました ◆2021/3/23完結 ◆小説家になろうにも掲載しております

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

【完結】平凡な令嬢、マリールイスの婚約の行方【短編】

青波鳩子
恋愛
平凡を自認する伯爵令嬢マリールイスは、格上の公爵家嫡男レイフ・オークランスから『一目惚れをした』と婚約を申し込まれる。 困惑するマリールイスと伯爵家の家族たちは、家族会議を経て『公爵家からの婚約の申し込みは断れない』と受けることを決めた。 そんな中、レイフの友人の婚約パーティに招かれたマリールイスは、レイフから贈られたドレスを身に着けレイフと共に参加する。 挨拶後、マリールイスをしばらく放置していたレイフに「マリールイスはご一緒ではありませんか?」と声を掛けたのは、マリールイスの兄だった。 *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他のサイトでも公開しています。