俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

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アリスの魔法

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話は戻り、マリーナ嬢の母上は確かに一刻を争う事態だ。

アリスはてきぱきと薬を用意する。

奥方に薬を差し出すが、全く反応できない。こちらに反応する体力もないんだ。


薬を飲ませることができないとなると、もう手がないのか?と考えていたら。


アリスが呪文を唱え始める。リズムは治療魔法に似ているけど聞いたことがない言葉だった。


用意した薬が優しく光りさらさらと奥方の口元に注がれる。薬はのどを通り食の管まで届いているようだ。
しばらくすると奥方の血色がよくなり目に力が戻っている。何か言いたそうに口を動かしているが声になっていない。


「一度に大量に薬を投与すると体に負担がかかります。二時間おきに先ほどと同じ工程を行いますのでとりあえず一晩こちらに泊めていただいてよろしいですか?」


「もちろんよ。アリス本当にありがとう。」マリーナ嬢が安堵している。


「マリー、あなたも体力が削られているの。お母様が落ち着いたらあなたもこの薬を投与しましょうね。それまでしっかり休むこと。分かった?」


「はーい。じつは今体が限界なの。少し休ませてもらうわね。この部屋にはお母様が生まれた時から使えている待女だけ侯爵家の人間としていてもらうわ。あとは頼んだわよアリスの婚約者さん。」


「承知しました。」しょうもない婚約者とは言われなかった。



奥方のベッドサイドには待女がずっと手を握って回復を念じるように祈っている。


何かあればすぐ対処できるよう同じフロアにアリスと俺の休憩、待機場所を作ってもらった。

待女がいるので俺とアリスが二人きりではないという体だ。

何度かアリスが魔法を使って薬を投与している場面を見るが、全く無駄がなく患者への負担もない完璧な所作だった。



待機中アリスに聞いてみた。


「どこであんな魔法を習得したんだ?」

「隣国にいたとき、医術に長けているお医者様がいたの。突然息ができなくなった人に息を通す管を口から差したときに思いついたのよ。ああ、薬が届くまでのルートを人為的に確保すればいいんだって。」

「何かすごい現場だな。」

「あまり学校に行けてなかったら母方の叔父の職場に連れて行ってもらったの。そこが病院だったから。」

「アリスはずっと薬に固執しているから魔法が嫌いなのかと思っていた。」

「魔法は好きよ。でも私の治療魔法は治療師を名乗るほど強いものじゃないの。人を助けるプロフェッショナルになるなら魔法の治療師じゃなくて薬学の方が私には合っていると思ったのよ。」

「治療魔法が出来るだけでも貴重だと思うけどな。」

「だめだめ。おだてても無駄よ。かすり傷直そうとするだけで全身脱力位疲れちゃうんだから。だから自分で必要な魔法をアレンジしたらあの形になった訳なの。アレックス様の方が成績も優秀で高位の攻撃魔法や防御魔法も難なくこなせるでしょう?羨ましいわ。」


あ、俺の事に興味を持ってくれてるんだ。と少し安心した。


ん?何で安心してるんだ?


ああ、アリスがこんなに話しやすくて、楽しいからだ。
何で今までアリスとちゃんと話してこなかったんだろう。



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