夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第20話 やっちまった?

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はい、優子マメに注意していたくせに、自爆かました愚か者は私です。

「さて、それじゃあ、色々聞かせて貰おうか?」

雑貨屋の店主であるノノーキルは、商品の乗っていない陳列棚に座ると、青筋を立てた状態で笑いかけてくる。
目が笑っていない…

「とりあえず名前は分かった。お前がボンで、お前がマメ、そんで、ちっこいのがシロマで、少しでかいのがデッカ、そうだな?」

「はい…」

もうね、口答えできる感じじゃない…
ぬいぐるみ達もびびってるのか、完全に動かなくなっている…

「でだ、どこから来たって?」

「…チサ村で「はぁ?」…日本です…」

「どこだそこ!…はぁ…ったく…まず言っておくが、俺には嘘は通じねえんだよ。だから無駄なことはするんじゃねえ。」

そう言うと、ノノーキルは立ち上がり、入り口に木戸を取り付け始める。

「何を…」

「そんな妙ななりをしてこんな田舎にふらっと現れる。そして、聞いたこともない地名にそこのゴーレム…
おそらくだが、人に聞かれたくない事情があるんじゃねぇのか?」

このおっさん…何処まで分かって…

「こうすりゃ、外から見られる事は無くなるから、気を張らないで済むだろ?」

ノノーキルは、店の入り口に木戸をはめ込み、外から見えないようにしてくれた。

更に暗くなってしまうが、壁に付けられて居たランプに自動的に火が灯り、すぐに店内は明るくなる。

「さ、ボン、っと…あのなあ?別にお前らをどうこうするつもりは無いっての。レクレットに言われてきたんだろ?もう少し肩の力を抜け。」

初めてあった素性の分からない人間に対して、即座に心を許せるような精神は持ち合わせて居ない…

(ナビさん、彼は信頼できるのか?)

『情報提示。彼の過去に、詐欺等の犯罪を犯した記録はありません。また、敵対する意思も見られません。』

少なくとも、人を騙すような人間じゃないってことだな。

入り口を閉じられたため、既に逃げ道はないし、ここは様子を見ながら話をするしかないかな…

「どうして…」

「おっと、肩の力を抜けとは言ったが、お互い詮索はなしでいこう。
だからここへ来た目的だけ聞かせてくれ。それだけでいい。
話したくないことを、無理に話そうとすると、どうしても嘘が混じる。そうだろ?」

ノノーキルはそう言って笑う。
結構いい人なのかもしれない。

「それでは…そうさせてもらいます…
ここへ来たのは先ほども言った通り、ここに来れば村の事を教えてもらえると、門番のレクレットさんに聞いたからです。
路銀が心もとないので、途中で手に入れた魔物モンスターの素材を買い取ってくれるところと、今日泊まれる宿の場所を教えて欲しくて寄りました。」

「ふむ…嘘はないな…ま、買取ならここでやってるから話は早いんだが。肝心の売るものは何処にあるんだ?」

…そうだよね、丸腰に見えるから不思議だろうね…

「あまり詳しく言えないのですが…」

「いい、いい、面倒ごとはゴメンだから言わなくていい。とりあえず奥から金を持ってくるから、その間に適当に準備しておいてくれ。」

そう言って、ノノーキルは何も聞かずに店の奥へと戻っていく。
詮索されないのは、正直助かった。

ストレージリングの事を話すと、厄介ごとが起きる気がするんだよね…

ストレージリングから、追跡狼チェルフ快速蜘蛛スピーダーを2体づつ取り出して、店の床に並べておく。
棚に乗るサイズじゃないからね。
魔物モンスターを出すと、狭い店内がさらに狭くなってしまったが、これは仕方ないだろう。

合計がいくらになるかは分からないが、宿泊費くらいにはなるはずだ。

少しすると、ノノーキルが戻ってきて言葉を失う。

「用意で…まじかよ…」

数秒固まって居たノノーキルだったが、なんとか元に戻ってくれたようだ。

「なんかあるとは思って居たが、ちょっとばかし予想の範囲外だ…
これだけの獲物をどうやって…と、詮索はなしだったな。」

微妙な顔をしたノノーキルだったが、それ以上聞くことはせず、言葉を続けてくれた。

そして、積み上がった魔物モンスターの死骸を確かめていく。

追跡狼チェルフは、とても状態が良い…ってかほとんど傷がないが、未解体なので1体あたり大銀貨8枚。快速蜘蛛スピーダーは、このサイズなら1体銀貨7枚ってところでどうだ?」

高いのか安いのか判断がつかないが、今はとりあえずの路銀が必要なので、言い値で売ることにする。

「分かりました、その値段で構いません…」

「よし、決まりだな。合計は…金貨1、大銀貨7、銀貨4っと…ほれ、確かめてくれ。」

ノノーキルは、胸元に入れて居た巾着に手を入れ、そこから硬貨を取り出して、こちらに手渡してくれた。

硬貨は、どれも見たことのない模様が描かれて居たが、色や大きさで見分けがついたので間違える事はなさそうだ。
後でナビさんに貨幣価値を詳しく聞いておこう…

「一応言っておくが、買取価格は適正だからな?討伐報酬分は上乗せしてあるが、ここはギルドじゃないから満額は出せないし、未解体の物は解体する必要があるから、その値段が引かれてその値段なんだよ。むしろ高いくらいだ。」

そう言われても、元の価格が分からないので、これが高いか安いか適正なのかの判断は付かない。
ノノーキルが言うなら、今はそれが基準になるだけだ。

「問題ありません。ありがとうございます。」

「おう…うん、良いってことよ。こっちも、見ての通り商品がなくて困ってたんだ。魔物モンスターの素材なら、使い道も多いし大歓迎さ。」

そう言って、ノノーキルはまた笑った。
お互いにとって良い結果になったなら取引としては上出来だろう…

「…っと、後は宿を探してたんだったな。ついでだからこのまま案内してやるよ。」

「いえ、場所だけ教えてもらえれば…」

「遠慮すんな。どうせ暇なんだからな。」

ノノーキルは、店の木戸を一箇所開けると、そのまま出て行ってしまう。

戸締まりとかしないのだろうか?

「早く来い、置いてくぞ。」

通りに出たノノーキルが呼んでいる。
店の中にいるわけにもいかないので、優子マメの手を取り外へ出る。
もう外は、夜になっていた。

「戸締まりとか…」

「あ?取られるようなものはないし、この村でそんなことする奴はいねぇよ。
ほら、こっちだ。」

ノノーキルは、どんどん歩いて行ってしまう。

「仕方ない…まだ村の中に何があるのか知らないし、ついて行くか…」

「そうだね。とりあえず、そろそろご飯食べたいかな…」

「宿に着いたら、何か食べられるものを貰えないかお願いしてみよう。無ければ今日もカップ麺だ。」

「ん。あるといいね。」

村の中に街灯はないが、各家から漏れ出てくる明かりで、足元はギリギリ見える。
俺たちは、前を行くノノーキルの背中を、置いていかれないように追って行く…

なんだか、色々疲れたよ…



ーーーー
作者です。
構想段階では、もっと泥沼化していく感じでしたが、ノノーキルさんのおかげでなんとかなりました。

貨幣は下から鉄、銅、大銅、銀、大銀、金、大金、白金、魔銀となります。
10単位で繰り上がると思って下さい。

感想その他、お時間あれば是非。
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