夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第21話 宿屋のご飯は?

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雑貨屋を出て、ノノーキルについて村の中を歩いて行くと、入り口が開け放たれた大きめの建物に案内された。

「ここが、村で唯一外からの人間が泊まれるヤドリギ亭だ。普段は酒場だから、食事がしたければ言えば食えるぞ。」

そう言って、ノノーキルは建物へ先に入って行つまてしまう。

「いらっしゃ…なんだ、ノノーキルか。」

「なんだとは失礼だな。ほれ、客を連れてきてやったんだ、少しは愛想良くしやがれ。」

「おっと、それは失礼。ようこそヤドリギ亭へ。」

「まったくコロコロコロコロと、いい加減胡散くせーな。こいつらは泊まり客だ、腹も減ってるみたいだから飯付きでな。」

宿屋の主人は、面白いほどに表情がコロコロ変わる。
宿屋に入った時は営業スマイル
相手がノノーキルだとわかると、一気にガッカリしたようにふて腐れ
その後ろにいた俺たちが客だとわかると、また営業スマイルに戻った

「宿泊ね。1人一泊銀貨2枚。食事付きなら1食追加で大銅貨5枚だよ。」

「相変わらず無駄に高いな。朝と夜の飯、それにエールを付けて、2人で銀貨4枚にしてやれ。」

「はぁ?無茶言うのも大概にしろっての。いくらあん…ん?ほうほう…ふーん…なるほどね…そう言うことか。なら、それでいいぞ。」

「よし。って訳で、銀貨4枚だ。ほれ。」

何が何だか分からないうちに話がまとまってしまう。
ノノーキルと宿屋の主人は何を話していたんだ?
きっとロクでもないことだろうから後でナビさんに聞こう…

「まぁ、久しぶりの外からの客だからな。ノノーキルの紹介だし、少しくらい安くしといてやるよ。」

宿屋の主人は、そう言って笑う。
まぁ、さっきのやり取りの後だと、胡散くささが凄いだけなんだけど…

俺はポケットに入れていた硬貨を出し、小さい方の銀貨を4枚渡す。
多分これが銀貨だろう。

「確かに。これ鍵な。部屋はそこ階段の上、突き当たりの部屋だ。
飯はこれから準備するから、出来上がったら呼んでやるよ。
それまでは部屋で休んでいるといい。」

宿屋の主人に鍵を受け取り、優子マメと一緒に2階へと上がる。
部屋の中は思ったよりは綺麗だったが、少しだけ耐えられそうにないところがある。

まず、部屋の隅に置いてあった恐らくはベッドであろう藁の山…
木枠の中に、こんもりと藁が山盛りになっていたのだが、他にベッドらしきものはないし、これで寝るのは俺には無理だ。
申し訳ないが、地球から持ち込んだマットレスを取り出し、部屋の真ん中に置いて寝ることにしよう…

そして一番の問題…臭い…
部屋の隅に置いてある、木の桶の様なものから臭ってくる、明らかに糞尿の臭い…
村の中ではそんな臭いはしなかったので、処理施設みたいなものがどこかにあるんだろうが…部屋の中にこんなものがむき出しで置かれていたら、耐えられる気がしない…
実際、部屋に入った瞬間吐きそうになった…

直接触るのは絶対無理だったので、ビニール袋を何枚か取り出し、早急に封印してしまう。
それでも触るのは気持ちが悪かった…

残った臭気については、窓を開けて換気しながら、芳香剤で無理矢理誤魔化す…
多分寝る頃までには…なんとかなってくれるだろ…

「お客さーん!飯が出来たぞー!」

部屋の中の換気がひと段落し、何とか部屋の中で落ち着ける状態になってまもなく、宿屋の主人が呼ぶ声が聞こえた。

「ご飯なのか?」

「そうだけど…しろま達はどうするか…」

しろまに聞かれたが、ぬいぐるみが同じ様に食べてると、また何を言われるか…

「一緒に行く。」

「いや、しかしだな…」

「ダメ、一緒に行くの。」

優子マメは、行くと言って聞かない。
長い付き合いだから分かるが、こうなると説得は無理だ…

「…分かった、でも、さっきみたいに勝手に動くのだけはやめてくれよ?」

「ん。」

優子マメに抱かれたしろま達も頷くが、さっきのことを反省してくれているのか、随分大人しくなっている…
これなら大丈夫かな?

部屋から出て階段を降りると、カウンターにノノーキルが座っているのが見えた。

「お?なんでまだいるんだ?って顔だな。」

その通りだが?

「まぁ、そう邪険にするな。ほら、早く座って食え。飯が冷めちまうぞ?」

どこか釈然としない気はするが、用意された席に着き、器に盛られた料理に手をつける。

食事のメニューは、白濁した見た目のシチューっぽいスープと、ポテトサラダのような見た目の何かの山だった。
食べてみると、全体的に薄味で素材の味そのまま…だけど、意外と嫌いな味ではない…かな?
欲を言うなら、スープにもう少し塩と何か出汁の出るものを入れて欲しいし、ポテサラにはマヨネーズかマスタードを入れて欲しい…

その気持ちは優子マメたちも同じだったのか、彼女達も首を傾げながら食べていた。

「ボンのゴーレムは凄いな、飯を食うゴーレムなんて俺は初めて見たぞ?」

皿に盛られた料理が一通り無くなり、薄くて温いエールに口をつけていると、ノノーキルがこちらに寄ってきた。

「ゴーレムじゃないですけどね?」

「ん?今何か言ったか?」

「いえ、何も…」

「愛想のねぇ奴だな。なぁマメ?」

優子マメに絡むな、酔っ払いのおっさんが…

「ん?ぼんは優しいよ?」

「お?そうなのかい?」

「そうだよ。ちょっと偏屈で理屈っぽいけ…」

「やめろ!本人を目の前にしてする話じゃないだろ。いや、俺がいなくても他人にする話じゃないからやめろ。」

恥ずかしげもなく…惚気てると思われでもしたらどうするんだ?

「ふはは、仲が良くて羨ましいぞ。ほれ、もっと飲め。キャナタ、エールのお代わりだ!」

「はいよ。お客さん、どうだい?料理の味は?口にあったかい?」

宿屋の主人はキャナタと言うらしい。
彼は、おかわりのエールを持って来たついでに、感想を聞いてきた…
聞かれても答えに困る…

「全体的に味が薄かったです。」

優子マメは素直に感想を言ってのけた。
確かに薄味だった、素材の味を最大限に楽しめるくらい薄味だったけども…

…そうだよね、固まるよね…

まさかの発言だったのか、キャナタさんはその場で固まってしまう。
俺も飲んでいたエールを吹き出しそうになったからな…

「おい、ロール!ちょっと来てくれ!」

「ご主人?あの…」

「はいはいはい…どうしたのあなた?」

カウンターの奥から、ロールと呼ばれた女性が出てくる。
ちょっとだけふくよかなロールさんは、水仕事をしていたのだろう、手を布巾で拭いながら出てきたのだが、何の用で呼ばれたのか分からないのか、キョトンとしているように見える。

「こちらのお客さんが、料理の味が薄かったとよ。」

「いや、そん…」

「あらあら、やっぱりー?」

…あれ?怒られるかと思ったけど、やっぱり?

「やっぱりってお前なー…久しぶりのまともなお客さんなんだぞ?なにしてんだよ?」

「そうは言ってもねー。もう塩も香辛料も殆どないのよー。」

「…そういやそうだったな…ノノーキルの所にも何も無いんだよな?」

「ん?あー…そうだ、俺ん所にもないぞ。ただ、他のものを少しだけ仕入れられたから、次の定期便が来るまでは、何とか休業せずに済みそうだぞ。」

「は?どこから仕入れた…まさか、森に入ったのかい?」

「違う違う、このボンが売ってくれたのさ。な?」

おい…

「え?お客さん、もしかして商人さんなのかい?」

「いえ…そういうわけでは…」

おっさん共…もう少しちゃんと演技しろよ…

「旅してるなら、何か調味料は持ってたりしないかね?もし可能なら、少しだけでも分けてもらえると凄く助かるんだが…」

ノノーキル…これがさっきコソコソ話してた奴だな…

ニヤニヤしてこちらを見ているノノーキルに、軽くイラっとする。
言っておくけど、あんたの演技は落第点だからな!


とはいえ…宿代は安くしてもらっているし、塩だけじゃなくて、香辛料もあるにはあるんだよね…




ーーーー
作者です。
ポテサラは、粗く潰して、粒マスタードとマヨネーズで味付けしたものが好きです。
ちょっと醤油を垂らしても美味しいですね…

感想その他、お時間あれば是非。
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