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第1章
第26話 うまく喋れなくても、意外と伝わる。
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今、俺の目の前、手を伸ばせば届く場所には無防備な美女が転がっている。
明るい茶色の髪は短く揃えられ、顔立ちは西欧風で彫りが深く、洋画の女優さんみたいだ。
そんな美女が、裸にシーツを掛けただけの状態で地面に転がっている…
いや、見るでしょ?見ない方が無理でしょ?
なんなら、ちょっとぐらいシーツをめくって…
「おぉーい!」
PUGIー!
「ひぁうぃ!おえんああい!」
『情報提示。まもなくノノーキル達が到着します。』
欲が理を上回りそうになっていると、誰かの声とそれに反応する豚男の声に驚かされ、反射的に謝ってしまった…
大丈夫、まだ…まだ触ってないから未遂です。
ナビさんも、もう少し早く言ってよ…
(ナ、ナビさん、後どのくらいで到着するの?)
『回答提示。到着まで、2分です。』
近いな、そろそろ豚男の檻を解呪しておいた方がいいかな。
麻痺は…痛くなりそうだから戻るまでこのままにしておこう。
固定するのも怖く、そのままにしているため、右腕は内出血で腫れ上がり、赤黒く変色してしまっている。
時折視界に入るから、めちゃくちゃ怖い。
こんな怪我するつもりなかったのに…ちゃんと治るのか心配になってくる…
毒液の檻を解呪すると、中にいた豚男が力尽きたように倒れ込んだ。
PIGIー…
まぁ、動くと皮膚を溶かされ、痛みで跳ねれば、他の場所に当たって、と、倒れないように必死に痛みに耐えながら、弱々しい鳴き声をあげるくらいしか出来なくなっていたんだから、元凶の檻が消えて、緊張の糸が切れたのかもね。
もう少し鳴き声をあげて欲しかったが、もういいか…
「ボーン!シーホー!」
今度は、俺たちを呼ぶ声がはっきりと聞こえた。
こちらが発見されるのも、時間の問題だろう。
「おい!豚男がいたぞー!」
「なに!?気をつけろ!まだ生きてるぞ!」
檻から出した豚男が、彼らに見つかったらしい。
もう殆ど動かない豚男は、捜索隊の村人の手で串刺しにされてしまう。
ズチャ…グシャ…と不快になる音が聞こえ、豚男の弱々しい断末魔が聞こえてきた…
自業自得だが、やはり気持ちのいいものじゃない…
「あ!おい!いたぞ!こっちだ!」
「無事…あれ?」
「どうした!無事なの…か?え?」
なんだ?ありえないものを見るようにシーホを見て…
おっさん共、残念ながらどんなに凝視しても彼女の裸は見えないぞ?
豚に襲われて、その上おっさん連中に裸を見られたってなったら、トラウマ間違いなしだし、村で生活できなくなるからな。
それより…
「いうあえおういえう。はあううあえうええいえ!」
「え?あ、ボンか…一体これは…」
「いいああはあう!」
「あ、お?あぁ…そうだな、みんな!村へ戻るぞ!」
まったく、ノノーキルの株が急降下中だよ。
人は脅す、気は効かない、ダメダメじゃないか。
こいつとは出来るだけ距離を置こう…
「ボーン、お前は大丈夫か?右腕がヤバい見た目になってるが…肩貸すぞ?」
それに引き換え、レクレットさんはとてもいい人だ。
やってきた3人のうち、ただ1人俺を気遣ってくれた。
「あいおううあ、おえおいういうっえいおあ?」
「ん?…あぁグリムか…残念だが俺たちが見つけた時にはもう…」
「おうあ…おえああんえんあ。」
「そうでもないさ。娘が助かったんだ。ボーンのおかげでな。」
俺は、彼を見捨てただけだ…
あぁ…上手くいかないものだな…
レクレットさんに適当な枝で添え木を作ってもらい、折れた腕の応急処置をしてもらう。
麻痺させていても、骨の位置を治す時は身構えてしまった。
その後は、ノノーキル達を追うように俺たちも森を後にする。
思った以上に消耗していたようで、村までが凄く遠く感じた…
レクレットさんに肩を借りて、息を切らせながらだが、なんとか自分の足で戻ることができた。
「「「おぉーー!!」」」
「な…なんあ?」
村の入り口が見えてくると、何故か村人の歓声が聞こえてきた。
豚男程度で大袈裟じゃないか?
そんなことを思っていると、村を出る時に演説をしていた髭面のおっさんがこちらに向かってきた。
「ボンと言ったな!此度は良くやってくれた!グリムの事は残念だが、彼の娘の命を助け、亜人の脅威から村を守ってくれた!」
「はぁ…」
「村の為に働いた事、誇りとするが良い!
…ほれ、何をしとる?さっさと跪け。褒美を取らせてやる。」
ん?なんだこのおっさん…偉いのか?
「おいボーン、この方は領主のテンセリット様だ、跪いて礼をした方がいい。」
レクレットさんにそう言われるが…ここの領民でもないのに、いきなり傅けとは何様なんだ?
麻痺毒が切れ始めているようで、痒いような痛いような不快な感覚が腕から伝わってきていて、少しだけイライラしていた俺は、つい言ってしまった。
「おおとあいあ、えついほおいなんえいああい。つあえああらあすあええうえ。」
肩書きだけで偉ぶってる奴は嫌いだ。
こんなの、頭下げたら「喜べ、そなたを雇ってやろう。」とかって言い出すテンプレに繋がるに決まってる。
ノノーキルに半分脅されたから行っただけで、正義感から行動したわけじゃない。
こんな無駄な事は2度とゴメンだ。
「お、おい、ボーン。」
レクレットさんが何か言っているが、朝から気分が悪いんだ。
これ以上、俺に何かやらせないでくれ。
「ん?どうした?何と言ったんだ?」
「領主様、彼は疲れているから休みたいと…怪我もしていますし、今日はその…」
「そうか…まぁ、亜人を殺して気が立っているのだろう。怪我が治ったら館に来るように伝えておいてくれ。亜人退治の褒美を出すでな。」
「ははっ。」
まだ昼にもなっていないのに、疲れた…
とりあえず優子に腕を治してもらおう…
「良くやってくれたなー!」
「助かったぞー!」
「あんた凄えよー!」
「きゃー!」
村に入ると、外以上の歓声が巻き起こる。
口々に俺をねぎらう言葉だったり、讃える言葉を口にしてくれているが、正直五月蝿いだけだ…
「ボン!やっと帰ってきやがったな!お前凄えな!」
「いぎっ!!!!」
「お…あ、すまねぇ…怪我してたんだったな…」
ノノーキルが村人たちの中から出て来ると、俺の背中を叩いて来る。
その衝撃で変な声が出て、全身から汗が噴き出した…
「そうだ、回復薬で治し…」
「いあん!!おえいさあうあ!!!」
「お、あ、すまん…」
本当に頭にきたので、殺意を込めてノノーキルを睨んだ。
こいつはもう知らん。
関わりたくもない。
ノノーキルを振り払い、俺は宿へと戻った。
入り口でキャナタさんが出迎えてくれた。
「ボン!良かったぶ…じでは無さそうだね…
部屋はそのままにしてあるし、マメさんも部屋にいるから。
ほらほら、お前らも帰れ!見せもんじゃないんだからな!今日は店仕舞いだ!さっさと帰った帰った!」
キャナタさんはそう言うと、俺について来ていた村人たちを締め出してくれた。
そして、階段を登っていた俺の横に着くと、黙って肩を貸してくれる。
「あいあおう、あうあっあ。」
「ん?あぁ、こちらこそだ。詳しい話を聞きたいとは思うが、それは今じゃなくてもいいからな。
宿代は後でいいから、今はゆっくり休んでくれ。」
そう言って、部屋の前まで着くと、ノックして扉を開ける。
「キャナタだ、ボンが帰った…って、なんじゃこりゃ!」
部屋の中を見たキャナタさんは、驚いて目を見開いてしまう。
…だが、今は説明してる余裕はない。
「そええあ、おええいうえいいあう。」
「あ、おぉ…分かった…」
キャナタさんは、目を白黒させながら下へと戻って行った。
詮索しないでくれるのは助かる。
何か埋め合わせはしないといけないな。
「おかえり。え?どうしたのその腕…?」
「おいあえう、うえをあおいえ。」
ーーーー
作者です。
読みづらいものになってしまいすみません…
周りの人間は、良く理解できたなと…
多分、ニュアンスだけで会話していたんでしょうね。
感想その他、お時間あれば是非。
明るい茶色の髪は短く揃えられ、顔立ちは西欧風で彫りが深く、洋画の女優さんみたいだ。
そんな美女が、裸にシーツを掛けただけの状態で地面に転がっている…
いや、見るでしょ?見ない方が無理でしょ?
なんなら、ちょっとぐらいシーツをめくって…
「おぉーい!」
PUGIー!
「ひぁうぃ!おえんああい!」
『情報提示。まもなくノノーキル達が到着します。』
欲が理を上回りそうになっていると、誰かの声とそれに反応する豚男の声に驚かされ、反射的に謝ってしまった…
大丈夫、まだ…まだ触ってないから未遂です。
ナビさんも、もう少し早く言ってよ…
(ナ、ナビさん、後どのくらいで到着するの?)
『回答提示。到着まで、2分です。』
近いな、そろそろ豚男の檻を解呪しておいた方がいいかな。
麻痺は…痛くなりそうだから戻るまでこのままにしておこう。
固定するのも怖く、そのままにしているため、右腕は内出血で腫れ上がり、赤黒く変色してしまっている。
時折視界に入るから、めちゃくちゃ怖い。
こんな怪我するつもりなかったのに…ちゃんと治るのか心配になってくる…
毒液の檻を解呪すると、中にいた豚男が力尽きたように倒れ込んだ。
PIGIー…
まぁ、動くと皮膚を溶かされ、痛みで跳ねれば、他の場所に当たって、と、倒れないように必死に痛みに耐えながら、弱々しい鳴き声をあげるくらいしか出来なくなっていたんだから、元凶の檻が消えて、緊張の糸が切れたのかもね。
もう少し鳴き声をあげて欲しかったが、もういいか…
「ボーン!シーホー!」
今度は、俺たちを呼ぶ声がはっきりと聞こえた。
こちらが発見されるのも、時間の問題だろう。
「おい!豚男がいたぞー!」
「なに!?気をつけろ!まだ生きてるぞ!」
檻から出した豚男が、彼らに見つかったらしい。
もう殆ど動かない豚男は、捜索隊の村人の手で串刺しにされてしまう。
ズチャ…グシャ…と不快になる音が聞こえ、豚男の弱々しい断末魔が聞こえてきた…
自業自得だが、やはり気持ちのいいものじゃない…
「あ!おい!いたぞ!こっちだ!」
「無事…あれ?」
「どうした!無事なの…か?え?」
なんだ?ありえないものを見るようにシーホを見て…
おっさん共、残念ながらどんなに凝視しても彼女の裸は見えないぞ?
豚に襲われて、その上おっさん連中に裸を見られたってなったら、トラウマ間違いなしだし、村で生活できなくなるからな。
それより…
「いうあえおういえう。はあううあえうええいえ!」
「え?あ、ボンか…一体これは…」
「いいああはあう!」
「あ、お?あぁ…そうだな、みんな!村へ戻るぞ!」
まったく、ノノーキルの株が急降下中だよ。
人は脅す、気は効かない、ダメダメじゃないか。
こいつとは出来るだけ距離を置こう…
「ボーン、お前は大丈夫か?右腕がヤバい見た目になってるが…肩貸すぞ?」
それに引き換え、レクレットさんはとてもいい人だ。
やってきた3人のうち、ただ1人俺を気遣ってくれた。
「あいおううあ、おえおいういうっえいおあ?」
「ん?…あぁグリムか…残念だが俺たちが見つけた時にはもう…」
「おうあ…おえああんえんあ。」
「そうでもないさ。娘が助かったんだ。ボーンのおかげでな。」
俺は、彼を見捨てただけだ…
あぁ…上手くいかないものだな…
レクレットさんに適当な枝で添え木を作ってもらい、折れた腕の応急処置をしてもらう。
麻痺させていても、骨の位置を治す時は身構えてしまった。
その後は、ノノーキル達を追うように俺たちも森を後にする。
思った以上に消耗していたようで、村までが凄く遠く感じた…
レクレットさんに肩を借りて、息を切らせながらだが、なんとか自分の足で戻ることができた。
「「「おぉーー!!」」」
「な…なんあ?」
村の入り口が見えてくると、何故か村人の歓声が聞こえてきた。
豚男程度で大袈裟じゃないか?
そんなことを思っていると、村を出る時に演説をしていた髭面のおっさんがこちらに向かってきた。
「ボンと言ったな!此度は良くやってくれた!グリムの事は残念だが、彼の娘の命を助け、亜人の脅威から村を守ってくれた!」
「はぁ…」
「村の為に働いた事、誇りとするが良い!
…ほれ、何をしとる?さっさと跪け。褒美を取らせてやる。」
ん?なんだこのおっさん…偉いのか?
「おいボーン、この方は領主のテンセリット様だ、跪いて礼をした方がいい。」
レクレットさんにそう言われるが…ここの領民でもないのに、いきなり傅けとは何様なんだ?
麻痺毒が切れ始めているようで、痒いような痛いような不快な感覚が腕から伝わってきていて、少しだけイライラしていた俺は、つい言ってしまった。
「おおとあいあ、えついほおいなんえいああい。つあえああらあすあええうえ。」
肩書きだけで偉ぶってる奴は嫌いだ。
こんなの、頭下げたら「喜べ、そなたを雇ってやろう。」とかって言い出すテンプレに繋がるに決まってる。
ノノーキルに半分脅されたから行っただけで、正義感から行動したわけじゃない。
こんな無駄な事は2度とゴメンだ。
「お、おい、ボーン。」
レクレットさんが何か言っているが、朝から気分が悪いんだ。
これ以上、俺に何かやらせないでくれ。
「ん?どうした?何と言ったんだ?」
「領主様、彼は疲れているから休みたいと…怪我もしていますし、今日はその…」
「そうか…まぁ、亜人を殺して気が立っているのだろう。怪我が治ったら館に来るように伝えておいてくれ。亜人退治の褒美を出すでな。」
「ははっ。」
まだ昼にもなっていないのに、疲れた…
とりあえず優子に腕を治してもらおう…
「良くやってくれたなー!」
「助かったぞー!」
「あんた凄えよー!」
「きゃー!」
村に入ると、外以上の歓声が巻き起こる。
口々に俺をねぎらう言葉だったり、讃える言葉を口にしてくれているが、正直五月蝿いだけだ…
「ボン!やっと帰ってきやがったな!お前凄えな!」
「いぎっ!!!!」
「お…あ、すまねぇ…怪我してたんだったな…」
ノノーキルが村人たちの中から出て来ると、俺の背中を叩いて来る。
その衝撃で変な声が出て、全身から汗が噴き出した…
「そうだ、回復薬で治し…」
「いあん!!おえいさあうあ!!!」
「お、あ、すまん…」
本当に頭にきたので、殺意を込めてノノーキルを睨んだ。
こいつはもう知らん。
関わりたくもない。
ノノーキルを振り払い、俺は宿へと戻った。
入り口でキャナタさんが出迎えてくれた。
「ボン!良かったぶ…じでは無さそうだね…
部屋はそのままにしてあるし、マメさんも部屋にいるから。
ほらほら、お前らも帰れ!見せもんじゃないんだからな!今日は店仕舞いだ!さっさと帰った帰った!」
キャナタさんはそう言うと、俺について来ていた村人たちを締め出してくれた。
そして、階段を登っていた俺の横に着くと、黙って肩を貸してくれる。
「あいあおう、あうあっあ。」
「ん?あぁ、こちらこそだ。詳しい話を聞きたいとは思うが、それは今じゃなくてもいいからな。
宿代は後でいいから、今はゆっくり休んでくれ。」
そう言って、部屋の前まで着くと、ノックして扉を開ける。
「キャナタだ、ボンが帰った…って、なんじゃこりゃ!」
部屋の中を見たキャナタさんは、驚いて目を見開いてしまう。
…だが、今は説明してる余裕はない。
「そええあ、おええいうえいいあう。」
「あ、おぉ…分かった…」
キャナタさんは、目を白黒させながら下へと戻って行った。
詮索しないでくれるのは助かる。
何か埋め合わせはしないといけないな。
「おかえり。え?どうしたのその腕…?」
「おいあえう、うえをあおいえ。」
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作者です。
読みづらいものになってしまいすみません…
周りの人間は、良く理解できたなと…
多分、ニュアンスだけで会話していたんでしょうね。
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応援ありがとうございます!
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