夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第34話 訪問者は厄介ごとを持ってくる

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「それで?昨日の今日で、何の用ですか?」

ヤドリギ亭の朝の営業時間が終わり、お客の居なくなり静かになった店内で、俺はノノーキルに問いかける。

「いや、確かに俺が悪かったとは思うけどよ…そう邪険にするなよ…
悪いと思っているから、こうして話を持って来たんだからよ…この話は、聞いといて損はないと思うぞ?」

テーブルを挟んで向かい側に座っているノノーキルは、そう言って小さな布切れを取り出した。

「このメールバードの知らせが、今朝起きたら届いて居たんだ。中には、今日の日暮れ前後に、遅れていた定期便が村にやってくるって書いてあった。」

「何?それは本当か?」

そう言って机の上に布切れを置くノノーキルに、キャナタさんがいち早く反応する。
俺にはピンと来て居ない。

「本当だ。だから、こうして教えにきたん…だ…が…
ボン、もしかしてなんで来たのか分かってないのか?」

定期便とかいう商品の配達が、俺たちに何か関係があるのか?
よく分からずに優子マメと見合って首を傾げていると、ノノーキルがため息を吐いて続ける。
ため息を吐かれるような事なのか?

「今のボンは、豚男ピッグマンの脅威からこの村を救ってくれた有名人だ。
これは、俺が広めてしまったこともあって、ボンの事を村の中で知らない奴は居ないと言っていい。この認識はあるか?」

ノノーキルに言われ、不本意ではあるが肯定の意を込めて首を縦に降る。
別に有名になりたかったわけではないし、むしろ静かに暮らしていきたい…

「それなら次だ、ダンバル運送の定期便は?…いや、当然これも有名だから知ってるよな?」

そんな、なんで知らないの?みたいに言われても…

「なんで知ってる前提なのかは分からんが、名前からすると移動販売みたいなものじゃないのか?」

ノノーキルは、キャナタさんと顔を見合わせて、呆れたように盛大なため息を吐いた。
分からないのが、そんなに変な事なのだろうか?

「いいか?いどうはんばい?ってのはよく分からんが、定期便てのはだな、テルテット商会がダンバル運送の配送網を利用して、生活に必要な色々な物資を、王国内の各地に一定周期で無料配送してくれる仕組みだ。
それまでは、ここみたいな小さな村は、薬品や鉄製品、土地柄栽培できないものや、塩なんかの調味料がいつも足りない状態でな、どうしても必要なものは、街まで何日もかけて自分達で買いに行っていたんだ。
魔物モンスターや、獣人、盗賊なんかに怯えながらな…
だから、この定期便が始まったことで、相当暮らしやすくなったんだぞ?」

「いや、暮らしやすくなったのは分かるが、その定期便が来るってことと、俺になんの関係があるんだって話し…」

「おいおい、本気か?」

ノノーキルは、何故だか驚いている。
そして、何度目かのため息を吐き、俺に問いかけて来た。

「はぁ…ボンよ…定期便に限った話じゃ無いが、他の街に移動するのに必要なものはなんだ?」

「必要なもの?」

正直、馬車とか馬とか、移動手段くらいしか浮かばないが、それ以外ってことだろう?
いっそのこと、ナビさんに聞こうかと思っていると、ノノーキルが話し始めた。

「おい、マジか…魔物モンスターや獣人、盗賊なんかがいる土地を、大量の荷物を持って越えて行く必要があるんだぞ?道中の護衛が必要になるだろ?」

あー…確かに護衛はいた方がいいだろうね…信頼できる相手なら、ゆっくり休みながら移動できる。

「…護衛が必要なのは分かるよ。でも、それと俺に何の関係が?そろそろはっきり言ってくれないか?」

「おいおい…どんなところで生活してたんだよ…」

何故か不審がられた。
キャナタさんも頭を抑えている。
そんなに変な事を言った覚えはないぞ?

「あのな、ダンバル運送が雇っている護衛っては、経験豊富で腕の立つ冒険者達ばかりだ。
いいか?冒険者ってのは、基本的に戦うことが好きな変わった連中が多い。
それもランクが高いほど、どんどんその傾向が強くなる。
そして、ダンバル運送が雇うのは、最低でもCランクの冒険者だ…そんな奴らがだぞ?
単身豚男ピッグマンを倒したボンの事を知ったら…どうすると思う?」

…どう…え?
あれ?これはもしか…

「…ど…どうすると思うじゃねぇよ。ノノーキル、絡まれテンプレ待った無しになるだろーが!どうしてくれるんだよ!?」

得意げに話すノノーキルにイラっときていたのもあり、机を叩いて怒鳴ってしまう。
いや、仕方なくないか?
また、ノノーキルのせいでトラブルに巻き込まれるんだぞ?
手が出なかったことを褒めて欲しいぐらいだ…

「村中に広まったのは、半分以上俺のせいだ。だから、定期便が到着するまで、出来るだけ口止めに動いてみようとは思う…だが、すまん。先に謝っておくが多分バレる…」

「だろうね!そうなるだろうね!」

定期便って名前からして、この村にも何度も来てるはずだ。
顔見知りや仲のいい奴もいるだろう。
そんな奴が、「何か変わったことはなかったか?」なんて聞かれたら、「それがな…」ってポロっと話すに決まってる。

「クソ…この村に来てから厄介なことばかりだ…」

ドンドンドン!

突然外に続く扉が叩かれた。
キャナタさんが見に行くと、何やら話し始めてしまった。
キャナタさんで見えないが、相手は誰だ?
これ以上の厄介ごとはゴメンだぞ…?

「ボン…お前に客だ…」

キャナタさんが扉を開けると、キャナタさんを押し退けて、見覚えのない老人が店の中に入ってくる。

「お前がボンか?なるほど、妙な格好をしていると聞いていたが、確かにその通りであるな。」

こっちは、夕方に到着する定期便の事をどうするか、早急に話し合う必要があるんだが?
いきなり現れた老人は、開口一番ディスってきやがった…

なんだこいつ…


ーーーー
作者です。
申し訳ありませんが、今回少し短いです。
厄介ごとは重なるものです。
感想その他、お時間あれば是非。
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