夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
43 / 100
第1章

第39話 なんか変な反応

しおりを挟む
「あの…すみません…」

「へ?」

「話の途中だったので、追いかけて来てしまいました。ごめんなさい。」

そう言ってシーホさんは、頭を下げる。
逃げたのは俺なんだが…
いや、村人集めちゃったのはシーホさんか?
…うん、どっちにしても、わざわざ追いかけて来るくらいだ…なにか大事な話でもあるのか?

「いえ、私も騒ぎになってしまったので逃げてしまいました。頭をあげてください。」

ただ、タイミングが悪い…
シーホさんが来たことで、優子マメを怒るタイミングがなくなってしまった気がする…

「すみません…父にもよく考えて行動しろとは言われていたんですが…
考えるより先に体が動いちゃって…ご迷惑でしたか?」

「いえ…まぁ、大丈夫ですが…」

「良かった。あ、もしかしてお取り込み中でしたか?」

「あっと…いえ、大丈夫です…よ?」

なんだろう…シーホさんの表情は普通な感じなんだけど、何か引っかかるものがある気がする…
何かを決意したと言うか…

「でしたら、少しお時間をいただけませんか!?」

「は…はい…?」

なんだ?いきなり圧が…慰謝料でも請求されるのだろうか…?
引っかかるものを感じながら、適当なテーブルに着いてシーホさんの話を聞くことにした。
優子マメは、後できっちり怒る事にして、とりあえず今は横に座っておいて貰う。

「それで、話ってなんでしょう?」

自宅ではないので、お茶も出せないが、とりあえず切り出して見る。

「えっとですね…あの…ちょっとだけ言いにくいといいますか…その…」

優子マメがいると言いづらい事なのか?
さっきから、チラチラと優子マメのことを見ながらモゴモゴと言い淀んでいる。
なんだろう…面倒な話じゃなきゃなんでもいいんだが…

「シーホさんって、ぼんのタイプだよね?」

「な!は!?な、何を言い出しやがりますか!?」

優子マメがとんでもないことを言い出しやがった。
本人目の前にして、なに言いよる?
は?本当になに言いよる?

「洋ドラでも、こんな子出てるのよく見て…」

「やーめーろ!言うにしてもせめて俺だけに言えよ!なんで普通の声量で言う?なんのつもり?ねぇ、なんなん?」

なんで自分の旦那の趣味を人に言う?
それもこのタイミングで?え?意味わかんないんですけど?

「シーホさん、ごめんなさい、気にし…え?」

…なんでこの人赤くなってんの?
なにこれ、え?照れて…いや、流石にそんな訳は…
ちょっと…え?思考が追いつかない…

「話は終わったか?お?シーホも来ていたのか。…って何でボンは変な顔してんだ?」

変な顔は余計だが、助かった!キャナタさんが来たここは、話題変更の好機!
優子マメにこれ以上いらんことを喋らせる前に、なんとかしないと!

「キャナタさん!さっきの料理をシーホさんに出してあげて下さい!」

「は?いきなり何を…」

「いいから早く!優子マメが教えた調味料のレシピ、好きに使っていいですから!」

「な…本…「マジで早く!」…分かった。待ってろ。」

仕方ない…料理のことは諦める。
明らかにシーホさんの方が面倒な気がするからな…
食べたことのない食事なら、話題変えるには絶好のものだ。
食べて、驚いて、そのまま忘れてしまってくれれば最高だ。

「と言う訳で、ご飯食べましょう。もうお昼ですし!ね?そうしましょう。」

「お昼?」

…おっと…?

(ナビさん…そう言えばここで昼飯って食ったことないんだけど…もしかして習慣ないの?)

『回答提示。食事は朝夕の2回のみです。』

まじか…いや、これくらいは問題ない。
いや、問題ないはずだ。

「えっと…気にしないでください。ちょっとした言葉の綾ってやつです。」

「言葉の?え?」

ダメだ、キャナタさん早く!
喋れば喋る程なんかダメな気がする!
とりあえず笑って誤魔化そう!

「あは、あははは…」

「ボン、適当に持ってきたぞ。」

「サンキューキャナタさん!」

「さん?おいあぶねーぞ!?」

ありがとう、マジで間が持たないところだった…
キャナタさんから料理の盛られた木皿を奪い取り、テーブルの上に置く。
木製のスプーンも皿に乗ってるから、食うのに困ることもないし、流石キャナタさんだ。

「さ、シーホさん。食べてみてください。」

「え?あ、はい…あの…これ、不思議な匂いですけど食べられるんですか?」

「大丈夫、食べられます。ほら。」

そう、先にこっちが食べないと、いきなり出てきたものじゃ警戒するわな。
一口食べて見ると、めちゃくちゃ美味い豚肉のマヨネーズ炒め…

「…ちょっと、シーホさん待ってもらえますか…?」

「え?あ、はい。」

「すみません、キャナタさん、いいですか?」

「ん?どうした?」

キャナタさんに近づき、テーブルから十分に離れたところに連れて行き小声で聞く…

「もしかして…この肉って…」

「あ?豚男ピッグマンの…おぅ…そう言うことか…」

キャナタさんも察してくれたようだが、シーホさんに豚男ピッグマンの肉を出すとか…
この間襲われた相手だぞ?嫌がらせじゃないか?

「いや、豚男ピッグマンの肉は、普段出回ることはほとんどないからな、シーホが味を知る可能性は低い…」

「…いやいや、なんの肉か聞かれたらどうすんですか!?」

「そりゃ…なんとかするしかないだろ!出しちまってるし、今更引っ込められないだろうが!」

その通りなんだが…どうしよう…

「ぼん、冷めちゃうよ?」

「ちょっと待って!…キャナタさん、聞かれたらお願いしますね!うまく誤魔化してください!」

「は?俺がか?無理だって…」

優子マメに急かされ、テーブルに戻る。

キャナタさんがうまくご…いや、ナビさんに聞けばいいのでは?

(ナビさん、豚男ピッグマンの肉に近い味で、この辺りで獲れてもおかしくない獲物を教えて!)

『回答提示。大鎧猪アーマーボア突撃豚アサルトピッグが生息しています。』

…よし、いるな…少し大仰な名前な気もするけど、追跡狼チェルフに比べたら多分弱いだろ。
狼と猪や豚じゃ、どう考えても狼の方が強い。
これなら、聞かれても誤魔化せる。

「お待たせしました。さ、食べましょうか。」

「え?でも…」

「美味しいですよ、ね、キャナタさん?…あれ?キャナタさん?」

「あ?おう、うま、美味いぞ。」

キャナタさんは、見るからに挙動不振になっていた…うん、ダメだな。
この人、良くも悪くも演技出来ないんだった…
俺がなんとかしないと…

「キャナタさん…どうかしたんですか?」

「多分美味しすぎて、言葉が出ないんですよ!気にしたらダメです!」

「それにしては…」

「いいから食べましょう。優子マメも食べていいよ。」

「ん。そうだ、クマ達にも持っていかないとだね。食べたがってたし。」

そうだった、なんでぬいぐるみが物を食えるのか未だに分からんが、俺らだけが食べてたのが分かったら、後で絶対拗ねてしまう。

「そうだな、少し持って行ってくれるか?連れてくると騒ぐだろうから。」

「ん。皿出してー。」

適当な皿と、取り分けようの箸をストレージリングから出して優子マメに渡す。
それに、何枚か肉を取り分けると、優子マメは階段を上がって行った。

「…ボン?」

「はい?」

「さっき、皿をどこから出した…?」

……

「キャナタさん?最初からテーブルにありまし…」

「無えよ…あんな柄の入った高価そうな皿…」

あー…うん。
そうだと思っていたよ…
どうしよう…



ーーーー
作者です。
皿やボウル、食器は、基本木製です。
金属製のものもありますが、一般には普及していないです。
陶器自体、まだ先の技術ですしね。
感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...