夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第1章

第38話 バタバタと落ち着きのない人

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領主の邸を無事に後にし、村の中を歩いてヤドリギ亭に戻っているのだが…
何かに見られているような気がして気持ちが悪い…

(ナビさん…誰か着いてきてる?)

『回答提示。後方15m、テンセリット邸の門から、村人ロンがマスターを見ています。移動する様子はありません。』

屋敷に着いた時に、消えたみたいに動いた人だな…
一応警戒しておいた方がいいのか?

(ナビさん、念の為あの家に居た人達が、俺と優子マメ達に何かしてきそうなら、早めに警告してくれ。)

『回答提示。行動監視を行います。』

これで、何かしてきても早めに分かる。
ハーグさんの身のこなし、素人の俺でも何かやっていることは分かったし、多分、ロンって人もそうだろう…

こっちは一般人だぞ…なんでそんな戦闘のプロっぽい奴の相手を…
考えたら、今更になって怖くなってきた…

「ボンさん…ですよね?」

「ふゃ!へ?」

もしかして、ものすごく危なかったんじゃないかと思い始めて居たところに、後ろから声をかけられたから、めちゃくちゃ驚いた。

声のした方に振り返ると、そこにはシーホさんが立っていた。

「あの…この間は…すみませんでした。」

「え?あ、いえ…こちらこそ…」

多分彼女には、俺は避けられると思っていたのに、わざわざ声をかけられ、その上謝られてしまった。
会うことを想定していなかったから、どうしよう…何を話せばいいんだ…?

「あの…ボンさん…?どうかしましたか?」

「あ、いや…シーホさんには避けられると思っていたんですが…」

あんな事を言ってしまったからな…
村の中で見かけたとき、こっちから声をかけても、逃げられるか殴られるか無視されるかくらいに考えていたんだが…

「避けるなんて…私は、助けていただいたのにあんなことをして…本当にごめんなさい!」

「ちょ…あの…」

あんまり騒がれると…これ、周りに…

「おや?シーホと…あんたは…おぉ!ボンさんか!」
「なに?ボンさんだと!?」
「ボンさん?え?どこどこ!?」

やっぱり…

「あんたのおかげで助かったよ!なぁ!これ食ってくれ!」
「いやあの…」
「おいおい!抜け駆けはダメだろう!なぁ、これ、うちで作ったサッテンだ。」
「あ、なら俺も持ってくるからまっててくれ!」
「な、俺もだったら持ってくるぞ!」

うん聞いちゃくれない。
なんだこの人たちは…

こんなもん一々対応出来ない…
何かを貰うのもちょっと遠慮したい。
よし、全力でヤドリギ亭に逃げ込もう。

(ナビさん!ヤドリギ亭までの安全なルート指示緊急でよろしく!)

『情報提示。目的地までの移動ルートを確定。視覚情報にルート線を表示します。リアルタイムで追加情報を反映させていきます。』

よし!逃げよう!そうしよう!そうと決まったら即逃げだ!

「あ、ボンさ…え?はや!」

村人の間をすり抜け、ヤドリギ亭までの道を駆け抜けていく。

シーホさんには悪いが、あんなに注目されながら何かを話せるとも思えないし、話があるならヤドリギ亭に来るだろう…



「はひ…は…つか…ぜ…」

だめだ…全力で走ったら…やばい…息が…これ…死ぬ…

「ボン、思ったより早かったな?どうしたんだ、そんなに息を切らして…」

「途中…シー…あっ…バレ…走っ…」

「そうか、シーホに会ったか。それで村の奴らにバレて逃げて来たと…
とりあえず、飲み物持ってきてやるから、座って休んでな。」

キャナタさんは、息切れしながら喋ったのに内容が分かったらしく、飲み物を取りにカウンターの奥に…

ん?なんかいい匂いが…

「そうだ、ボン。マメが凄いんだ。」

キャナタさんが持ってきてくれた果実水を飲んでいると、いきなりそう言われ、飲んでた果実水を吹き出しかける。

「げほ…ぐ…はい?」

嫌な予感しかしないんだが…
なんだ?何をした…

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫です…それで、優子マメが何ですって?」

「あぁ、マメがロールに料理を教えてくれていてな。俺も少し食べさせてもらったんだが、あれは流行る気がするな。うん。」

…ぬぁーー……
やっぱりなんかしやがったー……

「キャナタさん、優子マメは調理場ですか?カウンターの奥ですよね?ちょっとお邪魔しますね?優子マメーーー!!」

「おい、ボン、ちょっとどうしたんだ?おい、待てって。」

カウンターの奥に初めて入ったが、調理器具も少なく、随分と殺風景な感じだった。

「あ、ぼん。お帰り。」

「ボンさんお帰りなさい。マメさんに料理を教わってたんですけど…」

そうだろうね。
ここに入ってすぐ分かったよ…
この匂いはアレの匂いだもんね?

「ロールさん、すみませんがちょっと待ってもらえますか?優子マメ、今すぐこっちに来なさい。」

「え?どうかしたの?」

優子マメの手を引き、調理場を出る。
入れ違いでキャナタさんとすれ違う。

「勝手に入ってごめんなさい。少し優子マメと話があるので、待っていて下さい。後で説明します。」

「お?あ、分かった。」

これ以上厄介なことにならないように、少しでもキャナタさんたちから離れないと…

「ね、どうしたの?」

階段の下あたりで、優子マメに問われる。
…聞きたいのはこっちですが?

「俺が聞きたい。優子マメ、何してんの?」

「え?料理をロールさんに…」

「ダメだって言わなかったっけ?ややこしいことになるからダメだって言ったよね?なんで教えるのよ!?」

もう、なんで人の言うこと聞いてくれないかな?

「えっと…流れで?かな?」

「なが…ダメだ、頭痛くなって来た…」

どんな流れだよ…
あぁ…もう無理、キャナタさん達にも口止めしないと…

「大丈夫?」

「大丈夫じゃない!誰のせいだと…」

「あの…すみません…」

「何だ!…へ?」

いつのまにか背後に誰かが立って居たらしく、声をかけられる。
なんかデジャヴな気がする…



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作者です。
バタバタしてますね。
何を作って居たかは、次回?その次かもしれませんが…
感想その他、お時間あれば是非。
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