夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
46 / 100
第1章

第42話 おじさんって言われたから

しおりを挟む
「うーん…一回私が話を聞くよ。ぼん達は、少し席を外して待ってて。」

シーホが、ヒステリーを起こしたように叫び出してしまい、どうしていいか分からなくてなっていると、優子マメがそう言う。

「な!無茶言うな、危ないぞ!」

「大丈夫。任せて。」

優子マメは、俺の制止を聞かずシーホの側まで行くと、頭を抱える彼女の前でしゃがみ込んだ。
下から見上げるような形になっているが、それに気が付いたシーホは、驚いて声を上げてしまう。

「ひっ!」

「ん、こっち見たね。何があったか話してみ?ちゃんと話さないと分からない事もあるよ?」

後ろから見ているので、俺から優子マメの表情は分からない。
でも、強張っていたシーホの表情が、少しづつ柔らかくなっているのは見て取れるから、多分大丈夫なんだろう。

何かを話しているようだが、声が小さくて聞き取れない。
聞こえるまで近寄ろうかと考えていると、優子マメがこちらを振り返り、声を上げる。

「ぼん、ロールさんを呼んで来て。あ、ぼんとキャナタさんはそのまま調理場に居てね。」

「は?え?なんで?」

俺は当事者なのに、追い出されるとか…なんだろう、なんとなく釈然としない…
と言うより、あんなことする子だぞ?何かあったらどうするんだ?

「いいから、ぼん達がいると話しづらいこともあるんだよ。ね?ここは任せて。」

「ボン…こういう時は、男は何も言わずに従うもんだ…」

キャナタさんに肩を叩かれたが、さっきまでおっさんと言われてショック受けてた…いや、まだ少し涙目な人に言われてもと思ってしまう…
ただ、優子マメの言う事も一理あるとも思う。女同士とか、男同士でしか話せない事も確かにあるからだ。

「分かったよ…でも、なんかあったらすぐ呼べよ。絶対だからな?」

「ん。分かったよ。」

俺とキャナタさんは、カウンター裏の調理場に向かい、ロールさんに声をかけ、そのまま適当な椅子に腰かけた。

その後、少し落ち着いたシーホは、優子マメ達にゆっくり話し始めたらしいが、俺とキャナタさんは邪魔だと追い出されてしまったので内容は聞いて居ない…

「なぁ…ボンから見ても俺はおっさんなのか?」

余程ショックだったのか、椅子に座ってすぐにキャナタさんが聞いてくる。
地球では60歳を超えている俺に言わせれば、40手前、若く見るなら32か3にしか見えないキャナタさんは、全然若いんじゃないかと思う。
それでも、個人的には30過ぎたらおっさんでいいと思っているけどね。
人間、認めた方が楽になることも多いものだよ…

「14歳の子からしたら、20歳を超えた人はみんなおじさんやおばさんに見えるものですよ。30歳を超えたらジジイとババア呼ばわりされることもあるんですから。おじさんで良かったじゃないですか。」

フォローのつもりだったが、キャナタさんは、大きな溜息を吐いてガックリと項垂れてしまう。

「…俺、まだ28なんだぞ…?」

おっと…フォローのつもりがミスったらしい。
どう若く見ても、20代には見えなかったんだが…微妙な年頃だったようだ。

「なんか…ごめんなさい。」

「はぁ……辛い……はぁ……」

俺が謝ると、キャナタさんは更に落ち込んでしまい、それからは溜息しか出なくなってしまう。
ストレージリングの事を詮索されずに済んでるから、そこは少し良かったのかもしれないが、それ以上に会話が無い重苦しい沈黙が地味に辛い…

とりあえず何か飲み物でも飲んで、少しでも気を紛らわそうと思い、できるだけ軽い感じで声をかける。

「なんか喉乾きましたね。しばらくかかりそうですし、何か飲み物をもらえませんか?」

「…好きに飲め…」

キャナタさんは、そう言って木のコップをこちらに投げて来た。
そんなに喉も渇いていないが、自分で言いだしたことなので、仕方なくチビチビと果実水を飲んでいく。

一杯飲み切っても、一向に彼は顔を上げる様子はなかった…
ものすごく空気が重い…



どのくらいの時間が経ったのか、シーホとの話が終わったロールさんが、調理場の扉を開けてくれて、やっとキャナタさんとの2人沈黙会に終わりが来た。

「おまた…せ?どうしたの?」

「…はぁ…」

「えっと…俺は優子マメのところに行きますね。」

うん、もう耐えられないから、キャナタさんのことはロールさんに任せてしまおう。
ロールさんが開けた扉から、素早く店内の方に抜け出ると、さっきまでの空気が嘘のように、雰囲気が柔らかく感じた。

「あ、ぼん。」

「あ、ぼん。じゃない。随分落ち着いたみたいだけど…大丈夫なのか?」

俺が心配してそう言うと、優子マメとシーホは顔を見合わせて笑う。
俺が居ない間に何があったんだ…?



ーーーー
作者です。
初めておじさんと言われた時は、私もへこみました…
感想その他、お時間あれば是非。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...