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第1章
第43話 空気が違う?
しおりを挟む店内に戻った俺は、優子の横の席に座ってシーホを見る。
先程のような怖さはなくなっていて、どこか晴れ晴れとした印象を受ける。
優子と話すことで、何かスッキリしたのだろうか?
「さっきはごめんなさい!どうか、許して下さい!」
シーホは、テーブルにぶつけるギリギリまで頭を下げて謝ってくる。
先程までの嫌な感じはもうしない…が、俺としては、謝罪よりも理由が知りたいところだ。
そう思っているのが伝わったのか、横の優子が俺の服を引っ張り、小声で話しかけてくる。
「今は聞かないであげて、あとで私が話すから。ね?」
「…はぁ…分かったよ。」
結婚云々の話は、優子が断ってくれた筈だし、後で教えてくれると言うなら、あえて今聞く必要はないか…
そうなると、シーホと話すことはもうない筈なんだが…彼女は、頭を上げた後、どう言うわけか俺をじっと見つめてきていた…
目の奥の闇は感じなくなったが、ソワソワするからやめてほしい…
「なぁ…説明は後と言われても…流石にこれは居心地が悪いんだが…?」
「あ、ごめんなさい。あの…迷惑でしたか?」
俺の言葉に、シーホは再度謝り、上目遣いにこちらをちらっと見てきた。
普通に可愛いと思ってしまったが、優子が横に居るのに鼻の下を伸ばすわけにもいかないので、勘弁してもらいたい。
「迷惑というか…」
「ぼん照れてる?」
「…優子…やめ…」
その時、バタン!と勢いよく扉をあけて、店内に人が入ってくる。その人は、入ってくるなり大声を上げてこちらに近づいてきた。
「おい!ボン!!いる…おお、よかった!いたな!?大変だぞ!!」
入って来たのは、俺の話を口止めしてくれるように、村の中を動いているはずのノノーキルだった。
何を慌てているのか分からないが、バタバタと俺の近くにやってくると、無駄に大きな声で話してくる。
「いいか、よく聞けよ!?さっき門の所でレクレットと話していたら、遠くに土煙が見えたんだ!!あれは多分定期便の奴等だ!!」
俺の肩に手をかけ、揺すりながら言ってきたが、夕方には到着する予定だったんだから、早まったところで慌てるようなことなのだろうか?
「近いし痛いしうるさい!元々夕方には到着する予定だったんだろうが、少し早くなったところで、そんなに慌てるような…」
「その少しが問題なんだよ!普段なら土煙を上げて走ることなんてないんだよ!
それに、予定なんてのは遅れることはあっても早くなることは絶対に無い!
それが早まったってことは、何か急がないといけなくなった事情が…
とにかく、ボンも来てくれと言いたい所だが、何が起きるか分からん!
何かあったら知らせにくるから、キャナタ達と一緒にここに居てくれ!
いいか、それまで外に出るんじゃないぞ!!」
ノノーキルは早口に言い切ると、きた時と同じようにバタバタと走りながら外へ出て言ってしまう。
何をそんなに焦っているのか分からないが、もう少し静かに動けないものか…
「おい、誰かきたの…ん?誰もきてないな…?」
ノノーキルが出て行った直後、キャナタさんが調理場から出て来る。
もう復活したのかな?
「ノノーキルが来てました。もう走って出て行ってしまいましたが…」
「ノノーキル?何か言っていたか?」
怪訝な顔をしているので、さっきノノーキルが言っていたことを、掻い摘んで説明する。
「さぁ?定期便が到着するのが早まりそうってのと、なんか外に出るなって行ってましたが、よく分かりません。」
「…到着が早まる?それだけか?」
「それだけですよ?土煙が見えたのどうのって言ってましたけど、どうしたんですか?」
キャナタさんは、少し怖い顔をして考え込んでしまう。
本当になんなんだ?
「ロール!貴重品だけすぐに纏めてくれ!
おい、ボン達もすぐに荷物をまとめた方がいい、シーホは…どうする?一度帰るか?」
「ちょっと、いきなり何を言って…」
いきなり大声を出したキャナタさんに驚かされるが、理由が分からないから何を慌てているのか説明して欲しい。
「後で説明してやる。シーホ、早く決めろ。」
訳がわからない…
シーホはというと、自分の肩を抱いて震えてしまっていて、受け答えできる状況ではなくなっている…
「…こりゃ無理か…ボン、お前らも早く荷物を纏めろ。俺がシーホを見とくから。」
「ぼん、なんか怖い…」
「…しろま達を連れて来よう。大丈夫心配するな。…キャナタさん、後で説明して下さいね!」
俺の手を握る優子を連れて、2階の部屋へと上がる。
「あ、ぼん。おかえりー」
「ぼんさんおかえりー。肉食べたよー。」
部屋の中では、呑気にぬいぐるみ達がゴロゴロしていたが、俺が扉を開けると、2体とも顔を上げて迎えてくれた。
もっとのんびりしたいんだが…なんかそうも行かないな…
「しろま、でっかちゃん、下に降りるよ。」
「ん?どこか行くのか?」
「…行くかは分からないけど…優子と一緒にいてやって。」
「よく分かんないなー。でも、いいよー。」
ベッドから降りたしろまは、優子の足元まで走って来て、抱き上げろという感じで足を叩いている。
中身が棉なので、殴っても痛くもなんともないだろうけどね。
「ぼんさん?何かあったの?」
「ん?…んー…何もない…かな?」
「そう?ならいい。抱っこしてー。」
でっかちゃんはこっちに来るでもなく、抱き上げろとせがんで来る。
自分で歩いたりするのは嫌いらしい。
でっかちゃんを抱き上げ、ベッドなんかをさっさと片付けてしまう。
ほとんど元の部屋に戻し終え、優子達と一緒に部屋を出た。
1階に降りると、既に他の人の支度は済んでいたようで、ロールさんはシーホの隣で彼女の肩を抱いていて、キャナタさんは入り口で誰かと話している。
「…か…た…の…て…だ…」
何を話しているのかは聞こえないが、あまりいい話じゃないのは、雰囲気でわかる。
「あ、ボンさん。用意は大丈夫ですか?」
座っていたロールさんが、降りて来た俺達に気がつき、声をかけて来る。
その表情は、いつもの笑顔ではなく、無理をしているのが分かってしまう。
「ボン、俺は門のところに行くことになった。ロールとシーホを領主様の屋敷に連れて行ってもらえないか?」
戻ってきたキャナタさんが、俺の肩を叩いてそう言う。
「…もしかして、危ないのか?」
「分からん…まだ村に着くまでは時間があるみたいだが、念の為だ。」
「そうか…」
どうするかな…
(ナビさん。何が起きているか教えてもらえたり出来る?)
『情報提示。およそ40分後、総数176体の魔物の群れが到達します。』
…は?
ーーーー
作者です。
次回、久しぶりに…戦闘回になるかも?
感想その他、お時間あれば是非。
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