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第2章
第1話 快適な旅
しおりを挟む「トゥットゥットゥー♫フフフフフーン♫」
ご機嫌で鼻歌を歌うしろまに起こされ、俺はゆっくり目を覚ます…
「…おはようしろま…お前は元気だね…」
「おはよー。これ食べたいから剥いてー。」
体を起こすと、しろまは俺の方に歩いて来て、魔樹の実を渡して来た。
ぬいぐるみの手は、物を持つことはできても、皮を剥いたりする細かい作業は出来ないのも、この数日で分かったことだ。
膝の上に乗っかるしろまに、桃のような魔樹の実を剥いて渡してやる。
魔樹の実は、口に入れると果汁がたっぷり出てくるのに、皮を剥いただけだと、手がベタついたりしない不思議な実なので、ぬいぐるみに渡しても汚れないから安心だ。
俺たちは、村を出てから今日で3日目になるが、旅する魔樹大老に乗り、夕闇の迫るだだっ広い草原を当てもなく進んでいた。
巨大な旅する魔樹大老に乗っているおかげなのか、この数日魔物に襲われることも無く、こっちに連れてこられた時とは段違いに快適な移動が出来ている。
ただ、歩かなくても勝手に進んでくれるのは楽なんだけど、枝の上から降りることもできないため、昼間は枝の上でノンビリするくらいしか出来ない。
だから、活動は夜に限定されてしまっていて、この数日ですっかり夜型になってしまった。
「…お、今日はここで止まるみたいだな。」
この数日で、この木の特性も少し分かって来た。
止まる直前に、ほんの少しだけ振動が強くなるみたいで、その後ゆっくりと減速して止まるのだが…
「おい、そろそろ起きろ。もうすぐ夜になるぞ。」
「…にゅ…?ふぁ~…おはよう?」
「…うぅ~…」
なんだろうね。
夜だから起きろってのは、まだ違和感が抜けないが、暗くなって魔樹が完全に止まる前に準備しないと…酷いことになっちゃうからね。
「ほら、もうすぐ止まるから準備しておかないと怪我するよ?」
まだ寝ぼけているみたいで、優子もシーホもポヤポヤしているが、俺は靴を履きぬいぐるみ達を抱き抱えて準備していく。
ゴゴ…ズズン…ザワザワ…
陽が沈むのとほぼ同時、魔樹が止まり、ワサワサと下から根っこが伸びてきて、体の周りに纏わりついてくる。
最初は拘束されてしまうのかと体を硬くしたり、抵抗しようとしていたのだが、単純に地上に降ろされるだけだったから、今は準備だけしておくだけだ。
ただ、その降ろされ方が少し怖いんだ…
「ひう!……っと!」
体に纏わりついていた根っこは、体を包み込むように筒状に固まると、腰の辺りを支えられる感触がしたと思ったら、いきなり立っていた枝が消えて、垂直落下式の脱出用のシューターのように、地上まで真っ逆さまに落とされる。
起きてちゃんと覚悟していれば、怖いことは怖いが、遊園地のアトラクションみたいに、地面の手前で減速してくれるし、怪我をすることはない。
だけど、これが寝ている状態や、準備不足で変な体勢で落とされると…
「みゃーーーーへぶ!!ぺっぺっ!!」
「ふあーーーーきゃ!!いたーい!!」
優子は顔から地面に落とされ、シーホは変な体勢で落とされたためうまく着地できず、無様に尻餅をついている。
こうならないように、前もって起こしたし、準備しろって言ったんだけどね…
初日は、俺もうまく着地できずに尻餅をついてしまったけど、あれ、減速してても結構痛いんだよね…
「ぺっぺっ…もー!口の中で草入ったー!」
「ほら、口流し。」
優子にペットボトルの水を渡し、口をゆすいでもらう。
まだまだ食料も飲み物もストレージリングの中には残っているから、なくなる心配はしなくてもいいんだけど、いつまでも地球の物を食べ続けることもできないから、そろそろこっちのものを補充したいとは思っているんだけど…
街も村も全然ないんだよね…
「これ楽しいねー。もっかいやりたい!」
「やらないよ。明日まで待ってね。」
「えー。じゃおかし食べる。出してー」
適当にお菓子を出してやると、しろまは優子の横に行って食べ始めた。
しろまは、早々にこの状況に慣れたようで、昼も夜も結構楽しんでいるみたいだ。
…逆にでっかちゃんは、ほとんど起きることなくゴロゴロしているため、地面に降ろされても起きることはない。
肝が座っているというか何というか…
(ナビさん、いつも通り範囲指定よろしくね。)
『要請受諾。毒液の檻の範囲指定、完了しました。』
「よし…おーい、いつものやるから移動するよ。」
「ん?はーい。行こうしろま。」
「あ、私も行きます。」
起きないでっかちゃんを抱き抱え、全員で少し歩いて魔樹から離れる。
十分な距離を置いて、夜を過ごすための毒液の檻を展開すると、薄黄色の毒液は月の光を反射して淡く輝き、内側にいると普通に本が読める程度の明るさになる。
「さ、今日も始めようか。」
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