夫婦で異世界放浪記

片桐 零

文字の大きさ
87 / 100
第2章

第25話 ちょっとした提案

しおりを挟む
最初に目を覚ましたエルフが手を上げて、恐る恐ると言った感じではあるが、質問してくれた。

「あの…本当に解放出来るんですか?」

こういう時、最初に口を開くのって結構嫌なものだから、もう少し時間がかかると思っていたんだけど、エルフの人が声を上げてくれて助かった。

「そうだね、特に奴隷が欲しいと思っているわけじゃないし、俺たちに害にならないのなら解放しようと思っているよ。」

「でも…先程、買主ではないと…」

知らない奴が、いきなり美味しい話を持ってきた。
普通は嘘だと思って警戒するわな。

そう思って、俺はストレージリングから鍵束を取り出して、エルフ達に見えるように持ち上げる。

「これが見えるか?これ、あんたらの首につけられた隷属の首輪スレイリングの鍵でしょ?
これで、俺があんたらを開放することが出来る立場なのが分かってもらえたかな?」

俺の言葉に、またザワザワとし始めるが、これでも信じられないって言うなら、このまま放置するだけさ。

現状、こんな数の奴隷を養うのは…出来るかもしれないが、面倒だからやりたくない…
奴隷じゃないが、シーホが増えただけでも扱いに困ってる状況だからね…なのに、それがもっと増えるんだろ?

…俺だって男だ、エルフの奴隷を持つことに惹かれないと言ったら嘘になるが、絶対に起こさなくてもいい問題が起きる気しかしない。
テンプレ展開なんて、全力で回避させてもらうよ。

それに…優子マメが一緒にいるからそもそも無理なんだしね。

「でだ、さっき俺が言った条件を守ってくれるなら、自由になれるんだが…どうするんだ?」

「…はい。私は先ほどの条件を守ります。誰にも言いませんし、あなたに危害を加えることもしないと、精霊に誓って約束します。」

最初のエルフが、こちらを真っ直ぐ見つめながら約束すると言ってくれた。
少し迷っていたようにも見えたが、嘘をつこうとしたわけじゃなさそうだから別にいい。

「わ、私も!言いません!大人しくします!」
「ぬ!儂もだ!」
「ぐ!儂だってじゃ!」
「の!儂もなんだな!」

我も我もと、エルフの女性に続いてドワーフ達も約束すると言ってくれたのは良かったのだが、狼獣人ウルフェンの2人と兎獣人ラビディアの2人はそれに続かず、こちらをじっと見つめたまま口を開く事がなかった。

獣人といっても、獣化率には種族によるのか個体差なのかは分からないが、結構違いがあるようで、狼獣人ウルフェンの2人はほぼ狼の顔をしていて、見える範囲は全身が獣毛に覆われているように見えるし、手や足も人よりも獣に近い形状をしている
それに比べて兎獣人ラビディアの2人は、エルフよりも長くて、薄く毛に覆われた耳は兎の特徴だろうけど、それ以外は人間と変わらない見た目をしている。

とりあえず、何か思うところでもあるのかもしれないが、敵意や悪意ならナビさんが機敏に感じ取ってくれるけど、それ以外の思考はどうしても分からないからね。
少し待っても口を開く事はなさそうなので、こちらから聞いてみることにした。

「エルフとドワーフは後で解放するけど、少し待っててもらえるか?そこの狼と兎の人、あんたらはどうするんだ?」

俺が声をかけると、まず狼の人が口を開いた。

「我は…帰れぬ…」
「我も…そうである…」

普通は奴隷から解放されるなら、エルフ達みたいに喜びそうなものなのに、帰れないってことは、なにか事情があるのだろうか?

「我が戻ると…郷の者が…困る…」
「我も…郷には…帰れぬ…」

借金奴隷らしいが、それが村に戻れない理由か?
戻ると困るって事は、もしかしたら口減らしとかで売られた口だろうか…?

だとしたら、いきなり戻って食い扶持が増えるのもそうだが、何かの拍子に金を出したブローカーに見つかるのも、村に迷惑をかけてしまうと思っているのかも知れないな…

そうだとしたら律儀な事だが…自分を売った村に、そこまで肩入れする気持ちは、俺には理解出来ない…

「…そっちの兎の人は?」

「ウチらは…もう帰る場所が…ないんや…」
「ウチらの郷は…焼かれてしもてん…」

奴隷にするために村を襲ったんだろうか…
兎獣人ラビディアの2人は、その時のことを思い出したのか、抱き合ってシクシクと泣き始めてしまった。

違法奴隷みたいだし、何かあるとは思っていたけど…そのことを知ってるのかは分からないが、売り物にしていた商会…
やっぱりアイツらはクズだな…

とは言っても、泣き止むまで待つつもりはないので、話を進めることにした。

「…それで?自由になりたくないってんなら、俺としてはここに放置するしかないんだが…」

俺の言葉を理解しているのか分からないが、彼等はじっと見つめてくるだけで、それ以上何かを言ってくる事は無かった…

「…そうか…いっそのこと冒険者にでもなれば、奴隷でいるより、何倍もマシだと思ったんだが…」

「我が…?」
「…冒険者…?」
「「ウチらが?」」

獣人達は、冒険者って言葉に予想以上の反応を示した。
この線でいけばいいみたいだな…

「獣人がなれるものなのか、俺は知らないけど、試してみて無理だったら、他の道を探せばいいだけだと思わないか?」

「しかし…」
「我らに…なれるのだろうか…」

狼の人ウルフェン達はもう少し…あれ?

…この人達がこの先どうなろうと、俺には関係ないし興味もないはずなのに、俺は何をムキになっているのだろう…

自分でも、「らしくない」ことを言ってるなと思いながら、俺は言葉を続けていくのだった…
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...