夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第26話 決断が遅いのは嫌い

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「言っておくけど、俺は君達になんの責任もないし、これからも責任を負うつもりはない。
君達がどう生きたいかを決めるのであって、俺が決めるものじゃないからね。
これからも、何も出来ない奴隷のままでいたいって言うなら…生きるのを諦めたままでいいのなら、それを俺は止めないし好きにすればいい。
いいかい?最後に決めるのは、君達がどうしたいかだよ?」

最初は、名前も知らない相手だと言っても、目の前で死なれるのは夢見が悪いって思ったのと、獣人なら人間よりも単純に強いんじゃないかって思って、無責任に言ってみただけなんだけどね…

いつのまにか、相当「俺らしくない」事を言ってしまっている気がする…

自分でも不思議なんだけど…
なんで俺は、こんな見ず知らずの相手にムキになっているんだろうね?

狼の人ウルフェン達は、俺に聞こえないくらいの小声で相談していたようだが、そう時間もかからずにどうするか決まったようだ。

「我は…解放を望む…一族の誇りと、我が牙にかけて…約定は守る…」
「我も…兄者に従う…」

狼の人ウルフェン達は、そう言うと檻の中で跪いて頭を下げた。
さっきまでの彼らと違い、その言葉に迷いは感じられない。

ナビさんからも警告は来ないし、少なくとも俺に対する敵意、嘘をつくようなつもりはなさそうだ。

狼がベースの獣人なら、戦闘能力も高いだろうし、冒険者になっても十分に戦えると思うんだよね。

狼の人ウルフェン達が答えた後も、兎の人ラビディア達はまだ迷っているのか、2人でヒソヒソと話し続けていた。

エルフやドワーフ達も黙って待ってくれているし、そろそろ彼女達のためだけに時間を取られるのはダメだろう。

「それで?そっちの兎の人達はどうするんだ?

「ウチらには…冒険者なんてやっぱり無理や…他の獣人と違ごうて、力もほとんど人種と変わらへんからな…」
「せやな…少し耳がええ事くらいしか、人種と変わらへんもんな…」

さっきも思ったが、なんでこの子達の言葉は関西弁風なんだろうか?…こっちでも方言みたいなものがあるのかも知れないが、なんか気になってしまった…

いや、今気にする事じゃないな…

自分に自信がないから、いつまでもグダグダ言っているみたいだが…

どれだけ甘えた考えでいるんだ?

力が弱くても、耳がいいのなら…それを生かして立ち回れるようにすればいいだけじゃないか。

「それなら、耳がいい事を生かして、斥候スカウトとして冒険者のサポートをすればいいんじゃないか?」

「スカ…ウト…?」
「スカウトって…なんや?」

もしかして斥候スカウトを知らないの…いや、こっちだと名前が違うのかもしれないな。

シーフ?レンジャー?スポッター?もしかすると、他の呼び方をしているのかも知れないが、役割や動き方が似たものはあるだろうし、無かったとしてもそう立ち回ればいいだけだ。

呼び方なんて、ただの記号に過ぎないしね。

軽く説明して、分かってくれれば…まぁいいし。
それでも分からないって言うなら、俺にはどうしようもないから放置だな。

斥候スカウトってのは、目的の相手や物を先行して探したり、近づいてくる敵に真っ先に気がつくように立ち回る役目、かな?
流石に立ち回りに関しては、ある程度の練習が必要になるだろうけど、それでも耳の良さはアドバンテージになるだろう?」

「アドバ…なんや言うてることはよう分からんけど…やっぱり戦うんは、ウチ自信ないわ…」
「せやな…ウチらだけやと、戦えへんから、こっから動くんも無理やしな…」

こいつらは…今まで何があったのか知らないが、諦め癖なのかなんなのか、一々面倒くさい…
てか、俺はなんでいつまでも説得しようとしているんだろうな?

「そんなに戦うのが不安なら、そっちの狼の人と一緒に行動すればいい。あんたらには益がないかも知れないが、それでもいいか?」

狼の人ウルフェン達には負担なだけかもしれないが、元奴隷で獣人同士、仲良くやってもらいたいと直感的に思ったから言ってしまった。

しかし、よく考えたら狼と兎って凄い組み合わせだよな…

地球なら、捕食者と被捕食者だもんな…

「我は…構わぬ…」
「我も…構わぬ…」

狼の人ウルフェン達は、今回は迷うことなく答えてくれる。
少しだけ、彼らに対する好感度が高くなった気がする。
他は知らないが、こいつらには向こうの荷物から何か使えそうなものを渡してやろう。

「…だそうだが?これでもまだ決められないか?」

兎の人ラビディア達に、最後通告のつもりで聞いてみる。
まだグダグダ言うようなら、後遺症が残らない程度に麻痺させて、向こうで動けなくなってるテッテリードゴミクズと一緒にここに置いて行ってやる…

これ以上面倒見切れんし、少しイラついてきた…

「わ、分かったやんか…分かったから、そんな怖い顔せんといてぇな…」
「せ、せや…やる、やるからやめてぇな…」

兎の人ラビディア達は、何か恐ろしいものを見たかのように、2人で抱き合って震えながらだが、やると言ってくれた。
怯えている意味は分からないが、これで全員なんとかなったからいいかな。

…さて、少し時間はかかってしまったが、こいつらを解放していくとしよう。
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